見出し画像

宮崎県もJA宮崎も地元メディアも完全にモラルハザードに陥っているようにしか見えないんだよな、という話。

先日 宮崎県が和牛繁殖農家に独自の補助策 9月県議会に補正予算を提案。いくらなんでも優遇され過ぎではないか、と思う件 という記事を書いたのですが、基本的に意味内容は同じです。

9月8日に、宮崎県から146億円余の補正予算が提出されました。

内容的には9月1日に発表されていますから、ちゃんと中身を見たければ県のホームページに掲載されています。

その中の、宮崎県和牛繁殖経営維持緊急対策事業(畜産振興課)というのが特に原油高や原材料高に苦しんでいるのは牛肉の畜産農家だけではないわけで、元々優遇されている牛肉の畜産業者への過度な優遇がすぎる、と思うわけです。それが冒頭にリンクした記事です。

これに関連してでしょうか、UMKで以下のようなニュースをやっていました。

個人的な感想から先に言えば、
「何だこれ?完全にモラルハザードじゃねぇか」
としか思えなかったです。

地元メディアの大スポンサー様のJA宮崎経済連に依頼されてなのかはわかりませんが、ニュース形式を取っています。牛の値段が下がったことだけが強調され、どれほどの補助金が出ているかなどは隠したままで、酷い世論誘導のようにさえ思えます。

今回紹介された児湯地域家畜市場で900頭以上の子牛のせりが行われ、平均価格は51万2000円だったそうです。

UMKのニュースから引用

先日のニュースによると、平均が60万円を下回った分の差額の4分の3は国の補助がでるということですから、6万6千円は国から補助が出ます。

宮崎県はこれに更に差額の8分の1を補助するための補正予算を提出して9月分から適用される事になっています。額としては1頭あたり1万1千円ということでしょう。

JA宮崎独自の支援策で買った側には5万円が補助されています。

そして、忘れてはならないのが「肉用牛売却所得の課税特例措置」というのがあり、何故か牛肉の売却益については所得税・住民税が免除されます

所得税・住民税が大体20%として計算しても、国と県の補助も含めて牛の売却による所得が
51万2000円(平均売却価格) +
6万6千円(国の補助)+
1万1千円(県の補助)
の 58万9千円 の20% だと仮定して

 11万7800円

が免除されれるわけです。たくさん売っている農家であれば当然本来の所得税・住民税はそれ以上になりますから、最低でこの程度免除されるという形です。

JAの独自の買った側への補助がなければ、市場原理で46万2千円程度で売れるはずの子牛に対して、

国 6万6千円
県 1万1千円
JA 5万円
住民税・所得税の免除が最低でも 11万7800円 以上。

の合計  24万4800円 が補助金や免税で賄われるわけです。

ざっと計算しても今回の取引だけで補助率50%以上です。こんな補助率の産業は他にありますかね。農業の場合、他にもいろんな形で補助金は入っているはずです。

IT導入補助金などに関しては、経営の改善などの努力のための計画が必要だったりするわけですが、この補助に関してはそういったものも一切ありません。

これでは、「とっくに産業として破綻している」と思う人も多いでしょうし、これは私も完全にモラルハザードに陥っていると思います。それをメディアも指摘しないというのはどういうことなのだ、と思います。

国内の経済状況的に金融緩和の出口も見えてきて、畜産に限らずいろんなものが引き締めが入ることは容易に予測はできますから、こんなことをあと何年も続けるわけにも行かなくなってくると思います。

ニュースの途中で繁殖農家を続けていく意欲を聞かれて
「疲れるだけやな」
と答えていらっしゃる農家さんもいらっしゃいました。

闇雲に補助金をばらまくより、合理化や縮小均衡をすぐに考える必要があるのではないかと思いますけどね。そうでなければ、このべらぼうな補助率では、ハードランディングしかなくなると思うのですが。

JAの方は、中山間地域の維持がどうこうおっしゃっていますが、中山間地域の維持も補助金ジャブジャブの農業ではなく、別の産業をベースに考えていくべきだと個人的には思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?