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為替レートを善悪で語るな

このところ、「悪い円安」というフレーズを目にする機会が増えています。

大幅な円安が世界的なインフレと相まって輸入物価を押し上げ、消費者心理を圧迫する「悪い円安」の登場は、円安・株高による経済の好循環を見込みづらくなった時代の到来を市場に強く印象づける。

為替レート自体に良いも悪いもなかろう、というのが私の受け止めなんですが、一般的には違うようですね。ひと昔前には「良い円高、悪い円高」というフレーズが流行りました。

良いとか悪いとかを判断するのであれば、何らかの判断基準が存在するのでしょう。過去には購買力平価だったり、生産性格差だったり、国際収支だったり、ただ安定していれば良かったりと、いろんな基準が持ち出されてきました。

でも今は一応、基準があります。「2%インフレを実現する為替レートが、望ましい為替レート」です。政府と日銀のアコードによれば、ですが。

黒田総裁は欧州中央銀行(ECB)のトリシェ元総裁の言葉を引く形で、日米欧の中銀がともに2%目標を掲げることで為替に安定をもたらしていると意義を説くが、日本が年間を通して2%以上の物価上昇を記録したのは消費税増税の影響を除けば1992年が最後だ。

為替レートは現在、一時1ドル=125円台まで円安が進みました。それでも、2%インフレは実現していません。携帯電話値下げの影響が無くなれば2%弱にはなりそうですが、2%台を安定的に維持するには、まずは2%超の期間がある程度、続かないといけません。125円では物足りない、というのが黒田日銀の本音なのかもしれません。

しかし日本銀行には大人の事情があります。

世間では「インフレは怖い→円安のせいだ→日銀のせいだ」という批判が高まる寸前です。日銀が政治圧力に屈して金融緩和を辞めた、そんな風に思われるくらいなら、先に引締めに転じてしまえ!などと日銀が考えているような気がしてなりません。

日銀が、現在の金融緩和スタンスを転換すれば、為替レートは円高に振れると思います。株価は再び調整局面に戻るのではないでしょうか。

#日経COMEMO #NIKKEI

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