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日本は「人手不足」の幻想に騙され続ける

株価が割高・割安と言うことはあっても、景気が割高・割安と言うことはありません。ただ、似たような文脈で「需給ギャップ(GDPギャップ)がプラス・マイナス」と表現することはあります。

株価の場合、割高でも割安でもない、ファンダメンタルズに見合った水準が望ましいという共通認識が少なからずありますが、需給ギャップの場合、ゼロの状態が望ましいわけではありません。需給ギャップを割高=プラスの状態、つまり設備と雇用が不足している状態を長く続けることによって、日本経済を賃金や物価の上がりやすい環境に変えてゆくことが望ましいとされています。つまり、株価の割高は望ましくないけれども、割高な景気は望ましいということです。

最近、日本では「人手不足」が当たり前のようになっています。「人手不足」は需給ギャップがプラスであることの一側面です。しかし「働き方改革」によって残業が強く制約される中、もし企業の売り上げが減少すれば、「人手不足」が解消するよりも先に「設備不足」が解消に向かい、かつ賃金や物価が鈍化します。現在はまさに、需給ギャップがプラスでなくなりつつあります。

前掲の記事にある通り、19年10-12月期は、消費増税に伴う一時的な要因が設備投資を抑制したという面はあると思います。しかし、賃金や物価が伸び悩み、設備不足が解消しつつあるのも事実です。人手不足は深刻だから、消費増税の影響は一時的だから、などと楽観視せずに、まずは賃金と物価が上がらないという価格面のシグナルを素直に受け止める必要があるように思います。


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