【ドラマ】食う気ライブ!~後編~
飲食店支援の話しから離れますが、仕事における恋愛ドラマは、なぜか惹かれるものがあります。人は、仕事に懸命な時こそ魅力的になるのかもしれません。そんな、ひたむきな姿勢に目を奪われることは、よくあることでしょう。その人だけが持つ「光」を見るからだと思います。私利私欲でなく純真に仕事に向き合う時、人は美しくなるのでしょうね。
「食う気ライブ!」(後編)
○岩本オフィス・中(夕方)
岩本佐和子(35)「優子ちゃん、久しぶり~~」
佐和子が優雅な所作で、優子を軽く抱きしめる。
桐島は、驚いた様子で立ったまま、オフィス内にある、空気
清浄機や、アロマ機器を眺めている。
佐和子「こちらが優子ちゃんの上司の方?」
桐島「あっ、はい。初めまして。桐島と申します。岩本先生のことは、
こちらに来る前に仲森から聞きました。空気カウンセラーを
されていらっしゃるそうで」
佐和子は軽く頷く。
佐和子「姪っ子の優子ちゃんから急にメールが来て、空気のことで
相談したいって。いったいどんな相談なのかしら?」
優子「佐和子おばさんって、建設会社を辞めた後、独立して、室内
空気環境のスペシャリストでお仕事されていますよね。是非、
飲食店の空調設備について、アドバイスをお願いしたいと
思ったんです」
深くお辞儀をする優子。
佐和子「おばさん?」
佐和子が、優雅に笑顔で首を傾ける。
優子が、はっとして手で口を塞ぐ。
桐島「是非、お願いします」
桐島も深くお辞儀をする。
佐和子「まず、空気を入れ替える換気扇とエアコンが必要ね。そして
肝心なのが空気清浄機。これ私の持論だけど、いまの日本で
最強なのはこれよ」
佐和子は、A社の空気清浄機に手を置く。
○アプリ開発会社オフィス・中(朝)
桐島が、スマホで長沼と話している。
桐島「はい、どうもありがとうございます。
では、早速今日からお伺いいたします」
電話を終えた桐島が、デスクから見つめる優子と目をあわせ、
頷き合う。
桐島と優子が二人同時に、青木のデスクへ目を向ける。
青木は、二人に小さなガッツポーズで頷きながらエールを送る。
桐島と優子が、二人同時に立ちあがりカバンを持って出かけて
ゆく。
○同・オフィス・外観(朝)
ビルエントランスを出る桐島と優子。
桐島「さすが、岩本先生だな。飲食業界でも有名らしいよ。長沼組合長
が、先生のアドバイスなら問題ないって」
優子「よかった~」
○繁華街の通り・外
桐島が、歩きながらスマホでアポを取っている。優子は、スマホ
で地図を見ながら、行く方向を指先で指し示す。
○高級中華料理店・中
優子が、熱心に企画書を手に中華店主(50)へ説明している。
中華店主は、首を傾げて難しい表情をする。
○高級和食料理店・中
桐島が、スマホでアプリの説明をする。
和食店主(45)は、企画書を手に桐島のスマホを覗き込んで
いる。
和食店主が、首を横に振る。
○高級洋食料理店・中
洋食店主(40)が首を振る。
桐島と優子は、店主に一礼した後、店の出口へ進む。
○高級洋食料理店・外観(夕)
優子「どこのお店も、新しいことには悲観的ですね」
桐島「無理もないな。負のスパイラルにはいってしまうと、そんなもん
だよ」
優子が、がっくり肩を落とす。
優子「な~んか、疲れちゃった」
桐島「よし、今日はこれから残念会といくか!」
優子「はい!」
○焼き鳥・鳥よし・中(夜)
桐島が引き戸を開けて入る、優子が後に続いて入る。
前田(60)「へい、いらっしゃい。カウンターでも、テーブルでも、
好きなところに座っていいよ」
軽くお辞儀をして、テーブルへ向かう桐島。
優子がカウンターを見ながら、桐島の肩をたたく。
桐島が、カウンターに目を向ける。
漫才師AとBが並んでカウンターに座り、前田と談笑している。
※ ※ ※
(フラッシュ)
ストリート漫才をする漫才師AとB
※ ※ ※
○焼き鳥・鳥よし・中(夜)
カウンター内で前田が企画書を手に、漫才師AとBを見る。
前田「ちょうどいい、お前たち、うちの店でライブやれよ」
漫才師AとBが、そろって口に含んだビールを吐き出しそうに
なる。
桐島と、優子がそろって小さくガッツポーズをする。
○焼き鳥・鳥よし・中(昼)
桐島が書類を片手に、前田と店内を見まわしてレイアウトの話し
をする。
その背後で、A社の空調作業員が、空気清浄機を設置している。
○焼き鳥・鳥よし・外観
優子が、ライブ情報掲示板を入口前に設置している。
掲示板にはアプリ用のQRコードが表示されている。
桐島が、店内から外に出てくる。
桐島「これで、準備オーケーだな」
優子「いよいよ、明日…… 本番ですね」
通行人AとBが、掲示板に目を留めて、スマホでQRコードを
読み込ませている。
桐島と優子は、その姿を見て微笑む。
○焼き鳥・鳥よし・中(夜)
観客の拍手で、漫才師AとBが登場する。
漫才師AとB「は~い、エアモンで~す」
店内に響く笑い声。
○焼き鳥・鳥よし・外観(夜)
桐島と優子が店から外に出てくる。
桐島がスマホで電話をかける。
桐島「部長、まずは第一歩、成功です」
○アプリ開発会社オフィス・中(夜)
青木は、携帯電話を耳にあてながら、窓際で夜景を見つめて
いる。
青木「そうか。おめでとう。よくやった!あとは、横展開だな」
○焼き鳥・鳥よし・外観(夜)
中華店主、和食店主、洋食店主が外から鳥よし店内を覗き込んで
いる。
桐島と優子が、それを見て笑い合う。
桐島「それなら、大丈夫だと思います」
電話を切った桐島は、優子と夜空を見上げた。
終
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