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#37居心地のいい図書館。

みなさんは、一週間に、あるいは一ヶ月に何回くらい図書館に出かけますか。わたしは、週に3回から4回、足を運んでいます。まるで、自分の仕事が図書館に通うことであるかのように、図書館に出現していることになります。

それほど通うのには、理由はあるのか。まずは家から徒歩10分足らずという、近場にあること。それから蔵書数が多くて、さまざまなジャンルの本がそろっていること。最後に、居心地がいい場所であること。

今わたしの住んでいる村には、公立の図書館がひとつしかなく、あとはコミュニティセンターが、地域のあちこちに点在しています。センターは、もともとは別の建物だったものを村が買い取り、改装した建物がほとんどで、その近辺に住んでいる高齢者の方々が集まる集会所として利用されているようです。センターにも小さな本棚が設置してあり、本が多少は並べられてはいますが、村のほとんどの本は、図書館に保管されているのです。

図書館は入口に大きなカシの木が立っていて、夏の暑い日は心地よい日影を作ってくれます。入ってすぐのところに、いくつかの長いテーブルと手元を照らすためのランプが置かれています。新聞の立ち読みコーナーもあります。平日の昼間は、おじいさんたちが、その辺りに何人も座っていて、本を読んだり新聞をながめたり、のんびりと過ごしています。そのエリアの反対側には、かなり広い部屋があり、中には喫茶コーナーと、おもに学生さんたちが勉強できるように、小ぶりのテーブルがほどよく配置されています。

いよいよ図書館の入り口を入ると、中にもところどころにソファや椅子があって、子どもたちが漫画を読んでいたり、おばさんがくつろいでいたり。図書館ではCDやDVDの貸し出しも行われていて、CDは一度視聴してから借りられるように、MDの機械が窓ぎわに置かれています。その機械の前には、ときどきジャージ姿で頭がもじゃもじゃの若者(たぶん30代後半くらい)が立っていて、ヘッドホンをつけて音楽に聴き入っています。ノリノリで腰をふっていることもあります。背の少し高い男性で、ジャージからお腹と背中が少しはみだし、肌が露出していることもあります。わたしは、そんな男性の静かで幸せなひとときを邪魔しないように、その前をすっと通りすぎます。

そんな村の図書館を、わたしはとても居心地がいいなと感じています。だれもがその人のままで、だれかのそばにいられる場所。本を読むという個人的な営みに没頭していても、ふと顔をあげると、あるいは周りを見渡すと、同じように一人の時間をすごしている人たちがいる。そんな安心感を当たり前のこととして感じられる場所が、村の図書館なのです。なにかの肩書きがなくても、自分の社会的な役割がなくても、ただ村人の一人として、おだやかな気持ちでいられる場所。ちょっと風変わりな人も、わたしのように仕事をしておらず、個人的に行き場所がなくて、しょっちゅうやってくるおばさんも、分け隔てなく、嫌な顔をせず、受け入れてくれ、ていねいに対応をしてくれる司書さんたちが働いている図書館。そこは図書館という名の、小さな世界なのかもしれません。人がただ人であることを確認しにいくための、心地よい空間なのです。

あとは…そうだな、これも重要なポイント。一冊ずつカバーをかけられた本には、ギザギザだったり、花びらの形にきりとられた本の帯がつけられていて、手にとった本が「大事にされてます」と嬉しそうな顔をしていることです。だからついつい、「あっちの本も」「こっちの本も」「せっかくだから」と最大10冊まで借りてしまい、トートバッグをパンパンにして図書館を後にすることになってしまうのです。

図書館の方へ一言。わたし、家でも借りた本は大事に扱っていますから、どうかこれからも、たくさんの本を読ませてください。




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