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カステラ / 世界の娯楽 (1989)

中2の終わりから通うようになった塾で出会った子たちは何故か皆やたらと個性的で、同じ中学の友人たちとは別のカルチャー領域を一気に広げてくれた。

中でも、第三舞台をはじめとした小劇場演劇好きで、でもなぜか蟹江敬三や田中邦衛、大滝秀治といった渋い俳優のモノマネばかりするM子、プリントの裏をついつい大好きなジュンスカの呼人のヘンなイラストで埋めてしまう英語が得意なOLIVE少女Yちゃん、ユニコーン、レピッシュ、ゴーバンズ、ピーズ…といったバンドの伝道者と化して将来「ROCKIN'ON JAPAN」のライターになるのが夢だと言っていたKさん、この3人の影響は大きかった。

おかげで、暇さえあれば塾に行き、空き教室や近所のマックに集まっていたのだが、勉強はたぶんその時間の半分もしていない。

カステラビデオ買ってよをKさんにウォークマンで聴かされ、オオキトモユキのとんでもないハイトーンボイスととんでもない歌詞に衝撃をうけた。こんなこと歌にして良いんだ・・。ていうか、なんて奇妙な声なんだ。

世界の娯楽、夜明けを順番に貸してもらい、ダビングしたテープを塾の行き帰りずっと聞いた。

どうでもいいことをあっけらかんと並べた歌詞に「アイマイ家族」「歯が抜ける」「やすくなる」「頭の輪あるいいヤツ」みたいな、ヒヤリとするものもあったりして、それをスチャスチャした音に乗せ、いかにも軽薄そうに歌う。

彼らは早稲田の音楽サークル出身だときいて(他にもこの頃そういうバンドいっぱいいたけど)、早く大学生になりたいなあ〜バンドやりたいな〜とまずは高校受験をなんとかするべく勉学に励むわけです。

彼女たちとは一緒にあちこちの高校の文化祭に赴いた。私はそこで某義塾大学附属の女子校の軽音部に魅了され、ここ受験するわと無謀にも挑んだものの敢え無く撃沈。さよなら記憶力。

全員進学先が違ってたから、もはや誰とも連絡はとれないけれど、カステラの曲のタイトルをきいただけで、今でもオオキトモユキの歌声と彼女たちの笑い声が蘇ってくる。


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