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#4 帯留め[彫金-真鯛]SILVER925

真鯛は邪気を払うとされる赤い色を持つ、縁起の良い高級魚です。
「おめでたい魚」で、慶祝事や神道において欠かせません。
20~40年も生きる長寿で、体長は1メートルを超え「百魚の王」と呼ばれます。春は桜鯛、秋は紅葉鯛と呼び、日本には鯛と名のつく魚が200種以上もあります。
恵比寿様の持物も「釣竿と真鯛」で、地道な商売を好む象徴となっています。

真鯛の骨(鯛の鯛)

鯛は骨も縁起物とされ、「鯛の九つ道具」と呼ばれます。
今回はその一つ、胸ビレの付け根にある「鯛のタイ(真鯛の中にあるマダイの形をした骨)を意識し、 胸ビレを大きく外に張り出させ、力強く旋回しながら泳ぐ形にしました。
お金に困らない縁起物、「めでたい鯛の中でさらにめでたい」と言われ、 「縁起物と長寿である力強さ」を表現しています。

真鯛の眼(瞋心悪性の眼)

この真鯛は全長3.8センチ。小さな帯留めですが、その眼に特徴があります。

不動明王の脇侍である制多迦童子の瞋心悪性の眼を、 金剛峯寺の運慶作、制多迦童子から取り入れました。
これは「憤怒であるのに理知や哀れみの眼」と言われるもので、魚であっても「しっかりとした心(意思)」を持つ真鯛として仕上げています。

片身で泳ぐ真鯛

片身で泳ぐ真鯛とは少々グロテスクかもしれませんが、これはウルトラバロックを表現しています。

生命力や力強さの象徴でもある真鯛。それを片身で表すことで、その力強さの源はその意思にあるとしました。
いくら長寿の真鯛であっても、生き物は必ず老います。しかし、意思は老いることはありません。

大人の遊び心

帯留めですので、着用時にはグロテスクな部分は人目に触れることはありませんが、作り手としても色々想像が膨らみます。
どのような方が、どのような着こなしで、どのようなシーンで身につけるのだろうか。

「和装の最終仕上げの美、画竜点睛」と言われる帯留。持ち主の大切な帯の一番上を飾る、大人の遊び心として製作しました。

先入観にとらわれず、五感や心で感じることで、今まで見えていなかった価値観が見える。そんな帯留めをこれからも作りたいと思っています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


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