椅子に座らなくていい。それはあなたの世界だから。

会社でずーっと立ってると怒られますか?
学校でずーっと立ってると怒られますか?

そうしなきゃいけない場所だから、それは真っ当ですよね。

でも、本当にそうなのかな?

会社って、椅子に座らなきゃいけないところなのかな?

学校って、じっとしてなきゃいけないところなのかな?

今まで・・・多分僕が子供の時ぐらいまでなので、10年くらい前までは、そんなことを先生も生徒も保護者も会社員も社長も、みんな信じていたと思うんです。

でも、最近は少し変わってきましたよね?

会社だと、
・スタンティングデスク
・アドレスフリー
など、社内で自由に仕事ができる会社も増えてきているし、
・リモートワーク
という、会社以外の場所で仕事をする取り組みも増えてきています。

学校だと、
・アクティブラーニング
・教室の壁がない

当たり前だと思っていたことが、実はそうではなくなっているし、多様になって来ています。
「制度の奴隷状態」から抜け出している感じですかね。

それは、日常生活にもあるし、「介護現場」にもあります。

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非認知症のための区別

先日デイサービスで起きたことを書きます。

ある女性の利用者さんがいます。
Aさんとしましょう。
Aさんは中度の認知症です。

この指標でいうと、Ⅲa〜Ⅳの間くらいです。

そのAさんが先日ご利用のとき、たまたま僕がフロアにいました。
Aさん、いつもは穏やかでニコニコなのですが、時折スイッチが入ると不穏になります。
なんども立ち上がってはウロウロ、あてもなく彷徨っては転びそうになったり。

その日もそんな感じでした。

他の利用者さんからも、「あー!危ないよ!」「まーた歩いてるよ・・」「三宅さーん、ほらほら、見てないと〜」(ちゃんと見てますよw)などと声も上がり、声が上がったことで、Aさんのテンションもさらに爆上げ。

それはもうアクティブでアクティブでw

ここで、冒頭に書いた内容を思いました。

「歩いてちゃダメなんだっけ?」

もちろん、ご本人や周囲の方々の「安全」は最低限守らなければなりません。
そして、介護保険制度の枠組みの中での「サービス内容」を担保しなければなりません。

逆に言えば、それらが出来ていればいいのです。

立ち上がる、歩き回る、あるいはそれらを”排除する”ということは本来本質的に必要のないことなのです。


街中で認知症の人を見かけたり、自分のおばあちゃんが認知症だったり、テレビで認知症の人を観たり、皆さんも一度は触れたことはあるでしょう。

その度に僕たちは、認知症・認知症的言動を「自分とは違うもの」として捉えてはいないでしょうか。

”何で言うこと聞かないの?”
”何でわからないの?”
”頭がおかしくなったの?”
”動かないでよ!”

僕たちが持っているその「区別」は、認知症の人のためではなく、非認知症の人のための、極端に言えば、分断するための言葉なのです。

認知症世界線

認知症の方は、「おかしくなっている」のではないのです。

本人から見ている景色が「世界の全て」なのです。

「おかしい」と思うのは、僕たちが見ている僕たちの世界を「当然のもの」だと思っているにほかなりません。
その世界を自分以外の人間と何となく共有できていると錯覚していることも、そう思わせてくれる助けになっているのでしょう。

立ち上がることが「おかしい」のではなく、むしろ、Aさんからすれば、立ち上がることこそが「当然」の行動なのです。

日本には妖怪文化や地方に散らばるお伽話のおかげで、あたかも認知症の人が説明のつかないおかしな思考をしていると「今だに」勘違いしているのです。

おかしいのは、どちらでしょうかね?・・・w

”しなきゃいけない”ってあるんだっけ?

僕はAさんと一緒に歩き回りながら他の利用者さんとお話をし、Aさんは”椅子には座りたくない”とのことだったので、一緒にベットに腰掛けました。
ベットの座り心地が気に入っているようでした。

すると、Aさんはその日一番の笑顔を見せてくれました。

滔々とご自分の話を始められ、ご家族の話もされていました。

随分と家族に迷惑をかけている、ともおっしゃっていました。

「認知症だからしょーがねーな。座っといてもらって、動かないように目の前にテーブルでも置いとこう。」

もし、そんなことをしていたら、(しないですよw)
Aさんのその笑顔に出会えなかったかもしれない、
Aさんの家族に対する気持ちをしれなかったかもしれない、

さらに言えば、Aさんにとって、やっと話せる環境が整ったのかもしれません。


当然真っ当な世界にいると思うのは自分だけで、周囲からみれば「おかしい」と思われているようだ・・・。


もし、明日からあなたがその状況になれば。


どうしますか?

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