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遠い記憶 二十五話

私達と違って、母はどんどん明るくなる。
まるで、今まで、抑えられていた分、取り戻すかの様。

又、兄の社長さんが、ある宗教団体の、支部長をしており、
母は、日に日に、その宗教に力が入る様になった。

ある日の事、弟は学校を休む様になった。
どうも、学校でいじめられていると言う。
直ぐに、気付いたが、弟の寂しそうな顔を見ると、
お母さんには、言わないから、明日は行くんだよと促す。
弟は、うんと返事をしたが、
一日休むと、二日目行きにくい物だ。
明日は、行けよと、促すが、二日行かないと、三日目が行きにくい。

等々、学校から、連絡があった。
母は、その時弟が、学校に行って無い事を知る。

しっかり、怒られたが、何時もの様に、弟には甘い。
廣子、お前が、明日お母さんの代わりに、学校行って来いと言う。
正直呆れる。
てめえの子だろう!と呟く。

次の日、私は、弟を連れて学校へ。
担任の先生に、挨拶し、事情を話す。
母が、仕事の為私が代わりに上がりました。
弟も、宮崎から出て来て、まだ学校に慣れない様子で、
どうも、その様子を、からかうお子さんがいる見たいで、
どうか、ご理解頂け無いかと、丁重に話す。

先生は、あまりに大人びた、話し方する私を見て。
お姉さんお幾つですか?と言う。
私は、背筋を伸ばして、はい、15ですと。
その時の先生のあんぐりの顔、15歳?
しっかりしてますね~と、
私は、かなり無理をして、背伸びしていたと今だから思う。

それから、何日も経って無いと思う。
私が、学校から帰ると、何かへん?
買い物済ませ、家に戻るが、弟の姿が無い。
弟の持ち物見たら、あっ、カバンが無い。
引き出し開けたら、服も無い。
教科書も無い。
あッと思い。外に飛び出した。
辺りを探すが、いない。

その内、兄が仕事から帰って来た。
あんちゃん、弟がいない!
何!
兄は、直ぐに、名古屋駅に走った。
その内、母も帰り事情を話すと、みんなで探すも
見つからない。

その、夜は食事も喉に通らない。
母は、社長さんのお宅で、お祈り。
家に帰っても、お祈り、その声は夜中、益々力が入る。
次の夜だった。
宮崎の補導員と言う方から、電話が入る。
宮崎の駅で補導されたとの事。
母は、急いで宮崎へ走った。

その間、私は、弟に馬鹿がーと、言いながら涙を流す。
この離婚の話を進めたのは、私だ。
私が、判断早まったか?
弟の気持ちを、もう少し聞いてやるべきだったか?
かと言って、弟には、まだ全部を理解するには、幼かったか?
責任を考える。
色々考えるが、正しい答えなんか出ない。
それよりか、私も、今精一杯。
帰りたいのは、私も同じ。
次の日、空を見上げると、鳥が飛んでいる。
宮崎の、自然の中を飛び回る鳥達を、天敵もいて大変だろうと、
捕まえて、鳥かごに入れたら、どうなるだろうか?
鳥は、喜ぶだろうか?

今の、私達は、この宮崎の鳥の様な物。
いきなり、籠に入れられ、喋って見ろと言われても。
鳥は、話す事など、出来ないであろう。

次の日、弟は、母と一緒に帰って来た。
顔を見たら、何も言えなかった。
補導員の方から、言われたと母が話し出す。
私も、補導員初めて何十年となりますが、
家出、する子が教科書持って家出とは、始めてですと、
弟は、ただ、お友達と学校行きたかったと、それだけ
話したらしい。
この子は、悪い子じゃありません
お母さん、寂しかっただけですと、
それを、聞いたら、私も涙が、

次の日、弟が姉ちゃん、後少しだったんだと、
後、二駅手前で、お金尽きたと、話す。
私は、何も言わずに聞いた。
そうかと。
田舎者には、都会の水は、合わない。
だからと言って、今更、帰る事は出来ない。
ここで、踏ん張るしか無い。
弟よ、踏ん張ってくれ。
姉ちゃんも、頑張るからと、心の中で呟く。

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