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遠い記憶 二十四話

次の日から、忙しかった。
弟の学校に行き、学用品を揃えた。
又、私の学校も、行った。
洋裁学校にした。
6年かかるが、短大卒と同じ扱いになるとの事。
その間、洋裁の技術資格と、教員資格が取れるとの事。
私も、学用品を揃えた。
次に、タンスを揃え、家電製品を揃え、台所用品も揃えた。
スーパーにも、行った。
まあー、品揃えの多い事。
目が点とは、こう言う事か
野菜コーナーでは、何と、ネギがお利口さんに、ビニールに包まれ
並んでいる。
思わず、えええーー!
ネギ買うのー!

宮崎では、野菜など、殆ど買った事は無い。
だって、何処でも、生えてるんじゃん。
花屋さんには、数本まとめられ、これまたビニールの衣装に
包まれていた。
私には、お花が窮屈そうに、見えた。
花って買うの!
暫く、あちらこちらと、回っているうち、
味噌の、売り場に来た。
ずらりと、並べられている味噌。
あった!
何だ、白みそあるでは無いか!
こっちは、赤味噌しか無いと思っていたが、白みそも売ってあったのには
ホッとした。
多分、
この時点で、父が落とした、お金は殆ど使い果たしたと思う。

神様なのか、判らないが、あんばい良くやってくれるものだ。
さあ
このくらいで良かろう。
後は、自分達でやってごらんと、言ってる様に思えた。

何時までも、甘えている場合じゃ無い。
私は、自分の月謝分ぐらいは、自分で稼ごうと、
学校の直ぐ傍にあった、息子さんの経営する、ブティックに、
下仕事を貰う事にした。
又、日曜日は、アパートの直ぐ傍に、クッキーを作ってる
工場があった。
そこへ、バイトに出た。

母も、今で言う所のジャスコに努める事になった。

さあ
新しい、生活だ
私は、頑張るぞーと、意気揚々だった。
多少の、苦労は承知だ。
今までの事を、思うと、大した事は無いと思っていた。
しかし、現実の厳しさは、意外に早く私達に襲い掛かって来た。

学校に行ったが、
言葉が、判らない。
私が、話すと、直ぐ傍で、クスクスと笑う。
私の、少しの所作にも、クスクスと笑われる。
聞くに、聞けない。
誰も、相手にしてくれ無い。
数日経ったが一向に慣れない。
毎日、一日誰とも話さない日が続いた。
お昼、休憩の時間も誰とも話さない。
同じ空間にいるのが、苦痛になって来た。
私は、学校の屋上に行き、時間を潰す事を覚えた。
空を見ながら、思った。
私って、そんなに、話し方変かな?
外国に行く人って、凄いな~
そこへ、空の上に飛行機が飛んでいる。
何処行くんだろう?
アメリカかな?
北海道かな?
宮崎かな?
かえりたい・・・・

家の、ベランダで、洗濯もの干しながら、
空を、見上げる。
この空は、何処まで繋がっているんだろう?
この空の向こうは、宮崎かな?
かえりたい・・・・

布団の中に入っても、
クスクスと、笑われてる様で、ハッとする。
下手な、聞き方すると、常識よ。と
ツンとして言う。
私は、お腹の中で、叫んだ。
あんたら、宮崎に行ったら、みんな非常識たい!
外国に行ったら、もっと、非常識たい!

そんなある日、学校から帰ると、
弟が、私の買い物に着いて来る。
何にも言わないが、きっと、弟も学校には慣れないだろうと
察する。
宮崎でも、成績は1か2しか貰った事の無い子である。
名古屋の学校に、着いて行くのは、余程で無いと無理だろう。
そんな、弟に何が欲しい?と聞く。
うん、姉ちゃん、これが食べたいと、おやつをねだる。
そうかと、言って買ってやる。
言葉が通じるのは、家族だけである。
だからと言って、兄や、母に辛いとは、二人とも
言えなかった。
買い物終わり、二人歩いていると。
我が家のアパートの直ぐ西側に、神社があった。
名古屋に来てから、慌ただしく、足を運ぶ事は
無かったが、
私は、弟に言った。


あそこの、神社行って見ようか?
弟は、うんと言う。
じゃあ、あんた、あっちから、走れ。
姉ちゃんは、こっちから行くから、競争!
弟は、うんと言い走り出した。
私は、近い方から、回って、入り口へ。
二人揃って、神社の入り口に立つ。
中入って見ようか?と、私が言う。
弟は、うんと言う。
中に、入った。
神社と言うのは、何処も大きな木々に囲まれている物。
中に入ると、木のエネルギーを感じる。
本殿まで来た。
挨拶しようか?
と、弟に言う。
弟は、うんと言う。
賽銭箱の前に立ったが、お金に余裕が無い。
手を合わせて、
神様、宮崎から来たばかりです、宮島廣子と言います。
名古屋に来て、言葉も慣れません。
お金も余裕がありません。
余裕が出来ましたら、必ずお返し致します。
どうぞ、お力お貸し下さい。

ご縁とは、本当に不思議な物である。
私が、結婚して名古屋を去り、
子供が出来
その下の息子が、結婚をし、そのお嫁さんのご実家が
その神社の近くで、
孫が出来た時に、安産祈願と初参りは、そちらの
神社に参ったと、後に聞く事になるとは、本当に、
私は、神様に守られているなあと感じられずにはいられ無い。
こう言う、様に繋がってるとは、人間の常識や、その時だけの
計算では、計り知れない物である。



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