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胸にしこりが。

あれは、上の子を、幼稚園に出した朝。
弟夫婦から、姉ちゃんモーニングでもしないか?と
誘われた。

まだ、洗濯も掃除機も、終わって無いけど、
せっかくなんで、いいよと、返事。

結婚した、弟と弟の嫁ちゃんと、
私は、数か月の、下の子を抱いて、喫茶店へ。

私は、子供がヨタヨタと、歩くんで、危ないからとソファに座った。
弟達は、椅子に、

しばらく、食べながら、楽しく話していたが、
私の背中で、ヨタヨタと、歩き出す、下の子。

その瞬間、危ないと、右手を出したが、
その手の間から、見事に、落下。

一瞬、子供の目が、点、泣かない。
慌てて、抱き上げ、子供の名前を呼び、揺すると、

暫くしてから、泣き出した。
はあっー と思った瞬間、今度は、子供が嘔吐。

これは、いかんと、食事所では、無い。
弟に頼み、近くの救急病院へ、駆け込む。

取り敢えず、点滴をしながら、様子をみる事となる。
顔は、青く生気が無い。

時間ばかりが過ぎる。
夕方になっても、変化なし。

弟が心配してくれ、何回か家に電話したとの事。
私は、当然出れる訳も無く。時間だけが過ぎた。

点滴の針を刺されたまま、生気も無い子供を、抱きながら、
私は、神様、仏様!
お願い致します。
どうぞ、この子を助けて下さい!
もし、必要なら、私の命と引き換えでも、いい!
どうぞ、助けて下さい!

アーメン、ソーメン、南無阿弥陀仏、何妙法蓮華経、
まあ、あの時は、口から、何でも出て来た。

すると、頬に、ポーッと、赤みがさして来た。
あああ、助かったと・・・

あれから、月日が流れ、
上の子が、6年生、下の子が2年生ぐらいの、夏の事。

風呂に入り、気付いた。
何やら、胸にしこりが、まさか?

主人に、相談すると、
病院行って来いと言う。

そりゃあ、そうだわね~
ついでに、子宮がんの検査も兼ねて、婦人科へ。

先生、多分大丈夫だと思いますが、紹介状書きますのでと、
市民病院へ、行く様薦められた。

それ聞いて、そりゃあ、そうだわね~
私も、行く所間違ってるわと、笑う。

あれは、忘れもしない、8月13日の、お盆の日
紹介状持って、乳腺外科に。

先生、う~ん。
気持ち悪いでしょう?

腫瘍だけ、取りましょうと。
その日の内に、腫瘍摘出手術。

後で、思うと、ゆっくり考える時間も無かった。
あれよ、あれよで、その日の内に、腫瘍摘出手術。

腫瘍は、この後病理検査へ。
1週間後に、結果出ますので、1週間後に、来て下さいとの事。

その、1週間が、ドラマで・・
私の、頭は、色々な事を考える。

まあ、これは、完全に癌ね。
私大丈夫。

もし、そうなると、抗がん剤治療か?
でも、あんまり辛い治療は、嫌だな。

まあ、結果そうなったとしても、時間の問題ね。
葬式は、どうする?

この前さあ、1班の、○○さん、お葬式の時、集会場、
使ったら、苦情言う人いたじゃ無い?

やっぱりさぁ、何処か葬儀屋さんにした方がいいよね~
そこへ、上の子、お母さん、悪いけど、今、食事中だから、
そんな、話止めてくれる?

私、ああ、そうだったわねと、ケラケラ。
ちょっと、待って、

もし、そうなったら、親戚来るわね~
あら~っ これじゃね~ 掃除しとかなきゃね~。

一人、ケラケラ。
我が家は、シー―ン。

次の日から、私は忙しい。
その時の為に、家中、掃除。

掃除しながら、頭は、もう次の事を考え出す。
葬式になったら、遺影がいるわね~

そう、そう、 写真、写真、
写真が、納められてる棚を、開ける。

まあ、出て来る、出て来る。
子供達の、写真が、

ああ、そう、そう、これは、生まれた時のやつ、
ああ、これは、誕生日の写真。

ああ、これは、運動会。
可愛いわね~

暫く、自分の遺影に良さそうな写真探していたんだけど。
そんなのに、いい写真は、無い。

私、どれも、楽しそう。
子供と、Vサインしてるのばかり。

その内、涙が、ポロポロと、流れ出す。
私、何やってるんだろう?

この子達残して行け無い。
もしかして、あの時、下の子が落ちた時、

私の、命と引き換えでも、いいって、確かに言った。
それで、こうきたのか?

冗談じゃ無い。
それだったら、すいません。

まだ、早い。
私、約束は、守ります。

でも、まだ、早い。私は、どうでもいい。
ただ、子供達が、せめて、20歳いや、社会に出るまで、いや、
すいません、結婚するまでに、して貰えませんか?

孫の、顔は、見れ無くて・・・
すいません、やっぱり、孫の顔見てからに、して頂けませんか?

私、腹を括る。
冗談じゃ無い。

私、子供の頃から、親から離れ、その内、離婚で、
父からも、別れ、

この子達だけは、そんな事させられ無い。
乳の、一つや、二つ、持って行きたきゃ、持ってけ!

ただし、今は、死ねない。
絶対、生きるんだ!

そう、決めたら、掃除なんか、必要無い。
そう、腹に決め、診断を聞きに、病院へ。

先生、カルテ見ながら、大丈夫ですね。
良性です。

私、はあっー?
私、どうしたらいいんですか?

大丈夫ですよ。
大丈夫って、手術しないんですか?

はい、良性ですから。
私、手術する覚悟で来ている。

えええーーっ。
先生、もしかして、カルテ間違ってません?

宮島 廣子ですが?
先生、確認しながら、はい、大丈夫ですと。

私、納得いかん、暫く、先生と問答。
最後に、先生力尽きたか、すまん、帰ってくれ。

他の、患者が待って、いるんで。
えええーーー

手術しないの?
って、事で、私今だに、生きています。





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