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東京芸術大学|先端芸術表現科、デザイン科むけ複合表現演習原稿| #展示技術講座

2020年9月東京藝術大学の先端芸術表現科とデザイン科むけの複合表現演習という授業でリモートで講義しました。この記事は講義の職業紹介で使用した文章です。職業紹介は以前も別記事であげていますが、人生観とtipsを盛り込んで欲しいという要望があったため新規で書いてみたらだいぶ面白くなりました。

講座終了後、後日加筆修正を行い、さらに2021年1月1日に加筆修正しました。(トップの写真はNYにて、意味は無いです)

他にも、リモート授業内で「ミニマルパスタタワー」「ミニマルパスタブリッジ」という力学を感じるためのワークショップも行いました。以下、実験中の画像。

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はじめに

こんにちは展示技術者、またはインストーラーと呼ばれる職業をしている宮路雅行です。 今日は八谷先生より人生観やちょっと使える Tips などを混ぜながら展示技術者(インストーラー)という仕事について説明して欲しいと依頼されました。今回は、少し特殊な展示例と。今の仕事?にいたる流れや、何を考えて生きてきたかをお話します。最後に、今後やっていきたい計画について少し話したいと思います。

基本的なインストーラーの仕事に関しては、以下のリストのような業務内容があります。(講座当日のみ簡単に説明します)

・アートハンドリング(絵画彫刻の取り扱い)
・輸送梱包
・木工(展示台や壁の設営)
・映像音響機器
・照明
・電工
・重量物
・吊りもの
・英語

また、以下のリンクから多摩美術大学で行った職業説明を読んでもらえると、より理解が深まると思います。今日は、記事にない「ビスなし展示」などの少し特殊な事例を織り交ぜながら話していきます。

学生時代の話

僕はもともとアーティスト志望として多摩美術大学に入学しました。学生時代は、とにかく技術のつくアルバイトを多くしていました。また趣味でバイクをいじっていたのは今となっては良い経験だったと思います。 機械をいじることで覚えた力学や構造なども多く、趣味も技術向上に役立ちました。

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もともとはアーティストよりも発明家とかになりたいと思っていました。ロボコンにあこがれて工専を受験するも失敗。落ち込みましたが、しばらくするとケーブルTVの影響で映像にはまっていました。その後、一番なんでもできるようになりそうという理由で気づいたら彫刻科に入学しています。そのころからジャンル的な概念に無頓着だったのだと思います。現在も肩書きを名乗ることには抵抗がありますし、創作活動をやめたわけではありません。

人生観:既存のジャンルや概念にとらわれたくない

話を技術とバイトにもどします。造形屋というアルバイトではFRP でマネキンやイベント用の大型フィギュア、ディズニーランドのパレード車などを製造していました。美術運送のアルバイトもしました。木部補修(リペア業)と言われる建築業界での仕事もしていました。その流れで内装職人さんの手伝いも時々していました。

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全てに共通していることは、手仕事の技術がつく仕事だということです。どうせアルバイトをするならお金+技術の両方をもらったほうが効率的だと考えたからです。 結果的には技術だけでなく、他の美大芸大や職人のネットワークが沢山できたことがすごく良かったです。

tips:どうせバイトするならお金以外のメリットがあるバイト

特殊な技術をたくさん持っていると助手や講師の人から仕事を頼まれることが増えました。大学院を卒業した後は東京芸大時代の助手の方からかなり大きな仕事をもらって予算組みから材料発注、人手を集めるところまで全て自分でおこなっていました。これは今の仕事にもとても生きています。

技術的な話とは違いますが、自分の人生観が決まっていく上で美術運送の仕事は重要な経験でした。特に、公募展の審査の裏側を見れたのが面白かったです。公募展は数十年前まで美術業界で大きな力をもっていました。しかし、審査の基準は団体ごとにバラバラで美術作品の評価とは?という部分について深く考えさせられました。

確信を持って言えますが、あなたの作品がコンペで賞をとれなかったからといって、あなたの作品が受賞作品より劣っているという理由にはなりません。(審査員や審査方法が変われば受賞作品は大抵は変わる)

人生観:世の中の評価の仕組みは意外とテキトーなので気にしない

評価されることに興味がなくなったのですが、評価や価値のメカニズムには今でも大変興味があります。評価を気にしなくなってからは思考方法が旅人的になりました。世の中いろんな評価の仕組みがあるのだから、いろんなものを見に行こうと思いました。行動理念に新しい場所に行くというのが増えました。

人生観:行動理念は「技術がつきネットワークが広がる新しい場所へ」

これこそが英語の勉強に執着している理由でもあります。世界中に友達がいた方が楽しいし、英語が話せれば多くの情報が手に入ります。読める本やネットの記事も100倍以上になります。ますます「評価」より「知ること」や「体験すること」が自分の中で重要になっていきました。

tips:語学を勉強すると世界が広がる

韓国に行った話

卒業後はアーティストとして活動していくために色々行動していました。とりあえずニューヨークに行ってみたり、アジアの主要都市へリサーチ旅行に行ってみたりもしました。「新しい場所へ」という行動原理をもとに海外のコンペティションのみに応募をくりかえしていました。

(画像は北京のアートスペース『Home Shop / 家作坊』。10年近くアートスペースのリサーチはしているけど、個人的に世界で一番尖ってたと思う。家賃高騰のため解散済み。タイミングも大事かも)

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色んな場所に長く住みたかったため、基本的にはアーティスト・イン・レジデンスという滞在制作のコンペにのみ応募を繰り返していました。なぜか、韓国と相性が良く、韓国のアーティスト・イン・レジデンスに2回ほど参加しました。展示技術の話とはずれますが、そこでの経験やつながりがその後に大きく影響しているためお話することにします。(下は韓国料理の画像)

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最初に行ったレジデンスは韓国人作家が半分以上でした。海外招集の作家が3名、イタリアとメキシコと日本でした。この頃は英語もほとんど喋れずとりあえず勢いで行きました。韓国人作家は英語が苦手な作家も多かったため、つたない英語で一緒にコミュニケーションをとることでお互いに英語力を向上させました。実際英語より韓国語を覚える方が桁外れに簡単でしたが……

始めての海外での経験は色々な殻をやぶってくれたと思います。違う学校の生徒と作品の講評について話す感じのインターナショナル版といえるかもしれません。自分の属しているものとは違う評価を取り入れる重要性を身にしみて感じました。

人生観:自分の持ってない評価基準に積極的に触れる(共感は必要なし)

2回目のレジデンスは、韓国人が別プログラムで3名のみでした。他は海外招集の作家で、6ヶ月のレジデンス作家が3名。3ヶ月前期3名。3ヶ月後期3名。常に9人の作家が滞在している状態で6人がそれぞれバラバラの国から来ている感じでした。 僕は6ヶ月のプログラムに参加しました。

(下の画像は現地で仲良くなった韓国人とイギリス人の大学生。映像作品に字幕をつけてもらいました)

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こうなってくると違う学校の人の話を聞くとか違う国の話を聞くとかいう次元ではありませんでした。初めてのリアルインターナショナルです。しかも、全員が一時的にこの場所にいることから土地に対しても思い入れや記憶が全くありません。知っている作家も全然違うしどういった作品が今面白いと思うかという話も違い大変刺激的でした。

人生観:世界各地に繋がっている場所へいく

本当によかったことは、一回のレジデンスで世界中に人脈が広がったことです。数ヶ月で世界が1/100くらいになった気がしました。次に話す香港での体験もそうなのですが、世界各地に繋がっている場所へ行くことはとても重要だと思います。

また、滞在制作で外国の材料の違いや道具の違いマーケットの違いなどを身にしみて体感しました。少し実際とちがうのですが、マスキングテープの幅が上の映像のように量り売りだったことが一番衝撃的でした。ホームセンターや大型店舗は少なくて、工具専門店街や繊維専門店街などジャンルによって区画が別れている感じでした。その後は、海外で活動していくために道具や材料の知識を柔軟に身に着けることもよく考えるようになりました。

tips:海外で活動するなら柔軟に道具や材料に対応する

やはり、持っていける工具材料機材には限界があります。また送れる工具材料機材にも限界があります。どこを死守してどこを諦めるかが重要かもしれません。例えば、僕はマキタの電動工具を使いますが、世界中にサポートショップがあるのとバッテリや充電器を借りられたりする場合もあるからです。本当は他のメーカーのが良いなという点は沢山あります。

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海外に行ったことのない学生も多いと思うので、コンセントから取れる電源が各国で違うことを説明します。海外に行くと日本の電化製品は基本的には使えません。パソコンはアダプターが100~240V対応のものが多いので問題ないですが、工具の充電器や電源の必要な電動工具は使えないのが基本です。(上の画像は電圧と周波数マップです)

tips:コンセントから取れる電圧は国によって違う(周波数は2種類

半田ゴテもTS100やTS80なら世界中で使えますが普通の製品は電圧が決められています。TS100はセンタープラスのDCジャックで使用可能で、TS80はtype-Cの電源ポートになります。どちらもUSBや充電器からとれる直流低電圧で使えるため、200Vの国でも100Vの国でも使えます。

もし海外での展示や滞在制作が増えるのであれば、この手の知識も取り入れながら道具選びをすると良いと思います。

香港に行った話

その後、作家活動は難航しました。 インストーラーの仕事をしながらレジデンスに応募していましたが、なかなか受からない期間が続きました。海外行きたい欲が抑えきれず、技術のつく仕事を選んで海外で就職してみることにしました。今思い返すと、作品が作れないことや評価されないことよりも英語に触れている時間が短くなることのがストレスでした。

人生観:個人的には評価や制作よりも成長がないことがストレス

イギリス人の友人から紹介で香港の美術運送会社に就職しました。その友人はW●ITE C●BEギャラリーで仕事するためにイギリスから香港に転勤になりました(その後G●gosi●nに転職)。僕は彼を通して日本人が1人もいなかった世界に入って行きました。自分しかもっていないネットワークを上手く使うことで人生経験にオリジナリティがでるなと思った瞬間でした。

tips:自分しかもっていないネットワークを積極的に使う

彼が働いていた2つのギャラリーは、世界トップ5に入っていると思います。いわゆるメガギャラリーと言われるギャラリーです。香港ではアートバーゼルも開催されているので、世界のアートマーケットの一旦を見れたのがとても良かったです。

(ちなみに、下の画像はギャラリー勤務の友人達と呑みに行った時。みんな純粋にアート好きななのもありプライベートも楽しかったです。)

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これは守秘義務があるので具体的には言えませんが、コレクターに作品を届ける仕事をしていると色々な場面にでくわしました。例えば作品を買っても自分の倉庫に保管し作品を一度も見ずにまた作品を売るようなコレクターもいます(資産運用のため)。 おもちゃやゲームといったものに関連した作品を買い続けるコレクターもいます(好きなものを買う)。有名な作家だからという理由でペインティングを買う人もいます(知名度で買う)。市場は思っているより広大です。上手く言えませんが幅広い作家におおくのチャンスがあるのではないでしょうか。

tips?:作品は人に出会えるかが勝負(評価というよりマッチングに近い)
tips?:評価される作品を作るよりも評価される場所を探した方がよいかも?

1日に100以上のオペレーションがある香港の運送会社での仕事は日本のマーケット感を完璧に打ち砕いてくれました。講座ではアートバーゼルがだしているマーケット調査の資料をみながら国ごとのマーケットのスケール感など特別なお話をします。(資料は以下のリンクからみれます)

また、香港は小さな特別行政特区のため大学がそれほど多くありません。多くの人が海外に留学して香港に帰ってきます。香港という根っこをもちながらインターナショナルな経験をして同じ場所に帰ってくる。こんな特殊な場所は世界を探してもなかなかないのでは無いでしょうか。昨今の状況を見ると本当に悲しくなりますが……

ドイツに行った話

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香港の会社を退職した後、あいちトリエンナーレなど日本でちょこちょこ仕事をして、次はドイツに行きました。この頃には制作よりもどうやって効率的に世界中まわろうかという思考だったかもしれません。(上の画像はドイツで常用されている栓抜きつきのハンマー)

人生観?:とにかく世界中で色々な事例を体感したくなる(価値基準の探求

ドイツではアート関係の仕事にはつけなかったのですが、今まで見たこともなかった工具や材料に出会えたことはとても良かったです。たとえば、ドイツでは電動工具は大型機械の小型化という発想から作られているようでした。逆に日本は電動工具はハンドツールの延長という視点で進化してきたものが多いと思います。(下の動画は日本であまり使われてないトラックソー。FESTOOLがオリジナルです)

また、大きな特性としてドイツではドリルドライバーが多用されていました。 インパクトとドリルの違いは、分かってるつもりで分かってない人も凄く沢山いらっしゃるようです。僕が知らないことも沢山あるかもしれない奥の深い2つの工具です。講座では実演でインパクトドライバーとドリルドライバーの特性について説明します。

また、借り物の動画ですが以下の動画が両方の工具の特性について非常にわかりやすかったのでリンクをいれておきます。

まだ、一台も電動工具を持っていない学生は以下の記事を読むとよいと思います。インパクトドライバとドリルドライバは一家に一台ずつあっても良いレベルの工具なので、まずはそこから。どうしても一台しか買いたくなく、あまり工具を使わないのであればドリルドライバを僕はお勧めします。

インパクトドライバーは主に木工や金属架台の組み上げなどに使用されることが多いです。僕の場合は、ドリルドライバーはアクリルへの穴あけ金属へのタップあけ、機械類のネジの装着など衝撃に弱い作業をする時。夜間や静かなギャラリーなど音を出してはいけない状況などで使用しています。

tips:設計思想が変われば工具は全然違う

沢山の道具で溢れる市場ですが、これほどまでに種類が大いのには理由がありあます。設計思想が1つでは無いからです。この状況に関しては声を大きくして言いたいことが沢山あります。講座の目的とはずれるため、詳しくは説明しませんが完結に書いておきます。後日別記事にまとめるかもしれません。

・工法が道具を決定するので道具を売りたいなら工法を広めるべき
・最初に使った道具を気に入る傾向がある。
・良い道具を教えてもらうのでなく、道具の選び方を学ぶべき

もう一つ書くと、ドイツでは上のようなメジャーを主に使っていないことにもびっくりしました。 日本でいう折尺がメインで使われていました。講座では実際に両方の道具をお見せして、どういった設計思想の違いがあるのかを説明します。(上の商品は僕が気に入っているシリーズで、5.5mだったメジャーを5mにすることでテープの厚みと強度を増しています。下のリンクが折尺)

最後に、ドイツでみたアートシーンは「近所の大工さんに家を作ってもらう」「気に入っている美容師に髪を切ってもらう」ような小さなコミュニティでもアートがしっかりと根付いている感じがとても良かったです。住んでる街でアーティストをしている作家からアート作品を買うのが日本でも流行ればよいなと思いました。僕の経験の中ではドイツがもっともアートが身近にある生活だったかもしれません。

オーストラリアに行った話

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その後すぐに、シドニービエンナーレで働く機会をえました。今回は紹介などなく(というか知り合いがいなかった)直接事務局に履歴書を送った結果採用されました。今までに行ったインストールの図面なども添付しました(上の画像はその一部、軽いプロジェクタ設置例)。色々と現場の理解が深まってきたため、どういった人材が必要か予想がつくようになってきたのが大きいと思います。

tips:挑戦できるものには挑戦するべき

200~240V用機材

シドニービエンナーレでは映像音響インストールチームに入りました。とても良い経験だったのは200V のプロジェクターを使えたことです。メーカーはシェアの多い200Vの機材を豊富に製造している傾向があります。日本のPanasonicも200V機器のが多く作ってるのではないでしょうか?(正確には200~240V製品)

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200V機器を日本で購入するのはちょっと難しそうですね。しかし、200V機器を使うことは、みなさんが思っているよりは可能性が高いことを説明します。ここで単相200Vと三相200Vと単相100Vの違いについて説明したいと思います。

直流と交流、単相と三相など電源について後日記事にします。
(講座では実演と資料をつかって説明します)

通称「動力」と言われる三相200Vとは、 基本的には大きなモーターを動かすための電力です。エレベーターや工場で使用する大型機械などがこれにあたります。普段家庭で使われてる電源は単相100 V です。これは交流用の家電製品や直流に変換されて使用されています。

実は、単相であれば200V電源は家庭でもよく使われています。8畳以上のエアコンであれば大抵は単相200Vが使われています。家庭内に単相200Vのコンセントを作ることは、それほど難しいことではありません。

配電盤までは単相200v の電源が来ているため、そこからコンセントを増設すれば使用可能です。電気工事を依頼しても数万円程度だと思います。電気契約の変更は必要ありません。

僕は第二種電気工事士資格を持っているので、電気事業者を通して案件を受託すれば200Vの回路から電源を増設することができます。つまり、200Vのプロジェクターをインストールすることができると言うことですね。単相200Vが使えることで世界中の機器を使えるため、この知識を持っておいても良いかと思います。(海外展示のテストも日本でできます)

tips:単相200Vは一般家庭でも使われている。

プロジェクションスクリーン

もう1つ、オーストラリアの経験で良かったこととしてプロジェクション用スクリーンを張ってインストールする経験ができたことです。残念ながら、日本でプロジェクションスクリーンを使用する機会に恵まれなかったため、イギリスから輸入された最高品質のスクリーンを利用できたのは本当にラッキーでした。

今後、お金ができたら自作のスクリーンフレームを商品化してみたいと思ってます。(講座ではスクリーンを張っている動画を見ます)

シートとアルミフレームで構成されたスクリーンは、材料費が高くなります。しかし、違う展示のために分解して再度利用するということができます。 インストール場所にスクリーンを広げられる綺麗な部屋が必要ですが、搬入やインストールも柔軟になるのではないでしょうか。ただし、保管場所が必要になります。

tips:複数回展示する映像はスクリーンを使用したほうが経済的かも

ビスなし展示

シドニービエンナーレでは「ビスなし展示」を多く体験できたこともとても有意義でした。日本でもビスなし展示をすることは多いのですが、海外のメソッドでするのはまた違っておもしろかったです。日本の方が繊細ですがオーストラリアのほうが大掛かりです。特にリガーという吊りもの専門職の人がいたのが良かったなとおもいました。(講座ではシドニービエンナーレの安全手帳的なのもお見せします)

tips:オーストラリアでは吊りもの展示に資格が必要(危険な作業です)

国際展において、展示数や規模の大きさは魅力の1つだと思います。普段は展示場所として使われてない美術館外の場所が多く使用されます。また文化遺産やその町の特色が色濃く出た場所に美術展覧会をインストールするというのは国際展ではよく見られる手法です。そういった建物や施設に傷を残せない場合で、「ビスなし展示」は行われます。これは難しいですが、できると展示場所を選ばなくなるかもしれません。(映像はベニスビエンナーレのアルセナーレでの展示。ビスなし展示だと思われる)

現状復帰ということを考えるのであればビス無し展示か、現場復帰が簡単な方法などを展示プランを考える際に取り入れると良いかもしれません。展示の経験が豊富になってくると、起こり得る問題を先回りして対処しておくというのは常套手段になります。これは、多くの場合で起きてしまった問題に対応するよりはるかに簡単です。

tips:問題がおこってから対処するより問題が起こらないように計画する。

日本で今していること

世界各地で新しい経験を積むため、僕は個人でインストーラーをしています。普段は美術館全体の展示など大規模な仕事を受注することはありません。国際展の事務局に入ることがありましたが、大抵は5人以下でできるもの、大きな仕事で20人以下で出来る仕事をメインに活動しています。バスケットボールくらいの人数の感じが好きです。(下の画像は何人写ってるでしょうか?)

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3人以下で出来る仕事に関して言えば、日本全体のインストール技術の向上が見込めれば、学生のアルバイトや作家のネットワークで助け合うことでほとんどが達成可能だと思います。 これは各大学の卒業生からインストールチームが出てきたことからも流れを感じます。僕はそういった技術の底上げに自分の経験を生かしたいなと考えてnoteに記事を書いたり講座の依頼を受けたりしています。

tips:インストールチームは増えている(自分達でできる範囲を広げる)

各地にインストールネットワークがあるだけで副業が必要なアーティストにもお金がまわると思いますし、展示に必要な予算を削減し、より挑戦的な展示が可能になるのではないでしょうか?大きい規模の会社は人材や機材、工場や倉庫に車と法人税などに多額のお金が必要です。大きな会社は日本に必要ですが、小さな規模の展示を依頼するのには適していないと思います。

tips:小さなチームはランニングコストが低いので経済的

ただし、安全にはくれぐれもお気をつけください。しっかりとした知識や必要な特別教育や技能講習を修了しておくと、いかにインストールが危険な作業かわかると思います。(安全衛生法、特別教育、技能講習、免許について講座では少し説明)

宮路がもっている資格(2020年12月31日現在
・中型自動車免許(普通自動二輪も
・第二種電気工事士
・高所作業者技能講習
・フォークリフト技能講習
・玉掛け技能講習
・小型移動式クレーン運転技能講習
・床上操作式クレーン運転技能講習
・積卸し作業指揮者等安全教育
・足場の組立等作業式従事者特別教育
・フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
・ガス溶接技能講習

また、事務局側は安くアーティストを買い叩いてプロジェクトを強引に進めるということを絶対にしてはいけません。1人で現場を収めれる人は立派な個人事業主です。家族が養える程度の賃金を支払いましょう。学生のアルバイトにも1日1万円と言って1日20時間働かせるのはやめましょう(労基)。

tips?:技術は買われるべき。労働力は搾取されてはならない。

効率的に展示を行えるくらい日本全体の技術力が向上すれば展示するというハードルが下がるため業界はもっと盛り上がるはずです。ギャラリーの場所を借りなくても自分たちで空き家をリノベーションしてスペースをつくるのもよいでしょう。日本中廃墟だらけです。技術があると可能性が広がります。

そうは言っても不器用な人はたくさんいます。どうしても自分でできなくても発注する時に目利きが効けば事故を減らしお金を守れます。学生のうちにインストールについて学ぶことは信頼できる相手を見つけるためにも良いと思います。インストールという仕事は幅が広いため全ての業務をできる個人はいません。自分が必要としている人を見つける目も育てましょう。

tips:インストール経験は、将来依頼する技術者を選ぶ目利きにも有用。

Lv1からLv4の仕事をみんなができるようになれば、展示へのハードルが下がり機会がすごく増えます。特殊な仕事が増えてくる中堅作家は、Lv5からLv7の仕事をお互いに発注できるネットワークがあると良いかもしれません。実現可能なプロジェクトの幅が広がります。Lv8からLv10の難しい仕事はプロに依頼するのが無難です。

ちなみに、僕はLv7~9くらいのスキルを5つくらい持っている感じで、複合的で複雑な中小規模のプロジェクトなどに強い感じにキャラ育成しています(インストーラーはキャラ育成ゲー)。5人の特殊な人を呼ぶくらいなら僕1人呼んだほうが効率的です。

tips:学生のうちに他学科の学生と交流してネットワークを作ろう

本音を言うと、力学や電気の知識、建築や輸送、安全衛生法などの知識、 展覧会が始まる前と後でどういうことが起こっているのかは大学内できちんと学べると良いなと思います。が、なかなか難しそうなのでいつか一冊の本にまとまるくらいまで行けたらなとコツコツ書いています。よければnoteやtwitterのフォローお願いします(宣伝です)。

https://twitter.com/_miyaji

今興味があること、今後。

私が興味があることは短く言うと「入れ物と中身の関係」であって、しっかり説明すると1万字を超えている以下の文章をお読みください。ただ、かなり抽象的な内容なので今回は別の観点でお答えします。

こういった抽象的な興味でなく、具体的に作りたいと思っていることを紹介します。それは、インストラクションミュージアムと言うミュージアムです。(インストラクションミュージアムに関しては秘密にしたい部分もあるので講座のみで少しお話します)

自分は、生涯で何千点と作品を残すタイプではないなと思っています。そもそも、作品かどうかわかりませんが生涯に3作品しか作らないアーティストの形があってもよいと思うんです。そういうスパンで考えるとインストラクションミュージアムは30年40年続けていけるモチベーションがわいたプロジェクトと言えます。

人生観:生涯で3作品大きな作品を作りたい

ちょっと宣伝ですが、インストラクションという作品指示書の重要性について美術批評誌のREARに文章をのせています。九月末か10月頭ごろ発売だと思いますが、600円程度だと思うので是非読んでみて欲しいです。購入できる場所は以下のリンクにリストがあります。

インストラクションミュージアムに関しては、なかなか考えがまとまらず執筆が進みませんが以下の記事から少し作りたいものが想像できるかもしれません。今後の新しい記事も気長にお待ちください。

REARにも書いていますが、インストラクションは今後とても重要になっていくと確信しています。展示の技術だけでなく保存修復アーカイブに関してもアーティストは学ぶ必要があります。100~1000年というスケールで作品を残そうとするならば画家も彫刻家も全ての作家がインストラクションを残すべきです。

インストラクションに関しては第一人者になるつもりでいるので、今後を期待していてください。(速く記事が書けるようにならないと…)この文章からは一体何が面白いのかさっぱり解らないかもしれませんが、僕にとっては人生をかけれるかもしれない課題なので凄く楽しくプロジェクトを動かしています。

(5分ほどで大雑把にプロジェクトについて説明した実際の講座では、学生のリアクションはわかりませんでしたが、おそらくピンときてなかったと思います。ただ教授陣の興味はかなり引きつけたかなと)

人生観:評価をきにせず作りたいものを作る

僕は自分が何ものかよくわかりませんが、展示技術者(インストーラー)として話して欲しいという依頼だったため長々とお話しましたが、展示することと制作することとインストラクションミュージアムのような活動に対する動機というのは別のところから来ているとは思えません。

「アーティスト」とはつまるところただの名詞であって職業やライフスタイルや肩書きなどを指します。僕の人生観としては、それって言葉ありきの考え方であって、もっと言語化される以前の動機や興味を素直に見つめ直す必要があると思います。急に精神論的な話になりましたが、周りに振り回されず悔いのないように学生生活や今後の展開ができるよう応援しています。

人生観:周りにとらわれず、やりたいことをするべき

サポートされると、自分も他の人をサポートしてみようかな?という気になります。また、自分の文章の価値を感じれてとても嬉しい気持ちになります。