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SUBARU ff-1 レストアプロジェクト 最終回

皆さまこんにちは。
ff-1レストアプロジェクトチームです。

今回で最終回となります本レストア連載ですが、車検取得と車両完成、最後にお知らせを皆様にご紹介をしていきます。

全社員大会でff-1お披露目決定

前回でもご紹介いたしましたが、エンジンの微調整が完了し安定したアイドリングと吹け上がりを復活させることができました。
しかしながらこの時点で車両は全ての艤装が終わっておらず、またテスト走行もできていなかったためにエンジン初点火前に完成させていたミッションとブレーキの完成度が不明のままでした。
このほかにも灯火器類の取り付けや車内の配線等も未完成でした。

お話はガラッと変わりますが弊社では年に2回、全社員大会という社員が一堂に会し研修を受けるというイベントがあります。
その全社員大会が2022年10月24日に行われる予定で、今回は社員間のコミュニケーションをより深め、また、「健康経営、環境経営」を推進するという趣旨のもと泉ヶ岳登山が企画されました。
そして、そこでff-1を皆にサプライズでお披露目することが決まりました。

サプライズの演出プランは以下の通り
①皆が泉ヶ岳を下山し、下期の方針説明で弊社の坂本社長が呼ばれるが姿を現さず。
②皆がどこに行った?と首を傾げている中、司会が「坂本社長、どこですか~?」と叫ぶ。
③そこに社長がff-1を運転して颯爽と現れ、レストアが完了したことを発表する。

エンジンが完成した日から、全社員大会まで日数はおよそ1ヶ月。
それまでに車両を完成させ、お披露目できるように急ピッチで作業を進めます。

まずは車検取得に必要な保安基準をクリアすることを目標とし、内装等の細かい修正点は予備検査適合取得後にじっくりと直していくことにしました。

予備検査突破のための整備

車検取得に必要であるためシートと灯火類の取り付け、ハーネスの配置及びスイッチ類との連結、不具合箇所の修正を行いました。

先日のエンジン微調整の際に純正メーター内の水温計がMinとMaxにしか表示されなくなっているのに気が付きました。
故障診断の結果、メーター内の水温計が故障していることが判明。メーターを分解して目視点検しましたが断線もなく、おそらくバイメタル(温度変化によって湾曲する金属接合板)の劣化と考えられます。直すのは難しそうだったので、汎用品の水温計を装着し、エンジンクーラント温度の管理をすることにしました。

ある程度作業が進んだところで構内を走行テスト。ミッションやブレーキも含む全ての機能が正常に作動するのを確認しました。
1年3ヶ月ぶりに車が問題なく走行したのでこれまでの苦労が報われた思いで涙が出るほど感動しました。

後日予備検査前の最後のチェックの為に、検査ラインでブレーキ引き擦り、左右差、制動力、前照灯の光軸や光度検査、排気ガス濃度などの事前検査を行います。最終チェックで内外装部品に取付忘れ、緩みがないか、漏れがないか、保安基準を満たしているか確認し、翌日の予備検査に備えます。

予備検査当日

ff-1を陸運局に持ち込みました。いよいよ検査開始です。
検査員の人が隈なくチェックしている為ずっと緊張していました。

残念ながら結果は排気ガスの炭化水素HC濃度が基準よりわずかに高くて不合格。
その場で点火時期調整を感覚でしましたが、2度目のラウンドも不合格。
チャンスは3回、一旦工場に戻りしっかり機器を使用して調整し再度持ち込んで検査を試みます。

平成10年度の排ガス規制前に製造されたこの車の基準値は、CO(一酸化炭素)は4.5%以下、HC(炭化水素)は1,200ppm以下である必要があるのですが、HC濃度が基準値を超える1,210ppm…。

ディストリビューターで点火時期を調整したところCO/HC濃度が基準値内で安定したので、検査ラインが閉まる直前に3度目のラウンド。
その結果検査に合格することができました。

書類を申請し数日後にナンバープレートと車検証が届きました。
登録番号下4桁の数字は1970。
これは希望ナンバーで、この車が製造された西暦としました。
SUBARUのAWD発祥の歴史を大切に、そして自動車に携わる仕事に誇りをもってもらいたいという想いを込めて決めました。
レストア開始から1年4ヶ月。
ようやくこの車にナンバープレートを取り付けることができました!

残すところ全社員大会でのお披露目のみ!
少しでも完成度を高めるため、最後のブラッシュアップをしていきます。

全社員大会前日

日々の業務をこなしつつ、その日の仕事が終わったらすぐさまff-1の作業をするという日々が続きました。
レストアメンバーも最後の大詰めに入り力を振り絞ります。

まずドアトリムですが、第25回レストアで完成させていましたが、なんだかシンプルすぎるよねという話が出てきて、すこし改良することにしました。

足が折れた長机の天板部分を剥がして、ドアトリム上部の形に添って成型します。
それを塗装して深みのあるべっ甲色にし、アクセントとして板の下側にホームセンターで販売されているアルミ製コの字チャンネルを加え、高級感があるように架装してみました。

フロントとリヤのガラス縁を彩るモールディングも新しくしました。
オリジナルのモールは経年劣化が著しく途中で千切れてしまっている箇所があったので、市販品で使えそうな物を探して加工してから交換。

ホイールカバーにも塗装を施しました。
もともとは無地の金属面でしたが修復が難しい凹みが多数あり、それらを目立たなくするためと、ホワイトリボンのタイヤと色合いがマッチするかと思いff-1のボディと同じ色を塗装。クラシックな感じ増し増しに仕上がったと思います。

無事に全ての部品の取り付けが完了しました。その時には既に外は真っ暗!
皆身体は疲れ切っていましたが、正反対に気持ちは昂っていました。
いよいよ初めての公道テストを行う準備が整ったからです。

車を外に出し、メンバー達が我先にと乗り込みます。
緊張の一瞬です。エンジンの回転数を上げ、クラッチを繋げます。
男4人が乗ってもff-1は問題なく動いてくれました。ですがまだ安心できません。
始めて公道に出た喜びと、途中で止まってしまうのではないかという不安が交錯する中、会社周辺を試運転します。

運転の愉しさは1970年代当時の車から現在の車両にしっかり継承されているのを感じ、試運転なのにいつの間にか不安は消え去り、車内にはff-1の感想と笑い声で溢れていました。

さて公道走行は無事にトラブルに見舞われることなく無事に完了。
構内でエンジンがかからなくなるというトラブルが有りましたが何とかすぐに復帰。
メンバー達は各々帰宅し、泉ヶ岳でのお披露目に備えました。

全社員大会

さて全社員大会当日、朝からff-1の最終チェックを行い目的地である泉ヶ岳に向かいます。

泉ヶ岳は仙台市民憩いの山。
駐車場にたどり着くためには走行距離28km、長い上り坂もあります。
積載車で運搬するという方法もありましたが、我々のプライドにかけて、あえて自走で目的地に向かうことにしました。(一応、後ろから積載車で付いていきましたが)

急坂では時速30km/hが限界。2速と3速を繰り返しシフトチェンジしながら、なんとか無事に駐車場までたどり着きました。
その後社長に操作方法のレクチャーをしてサプライズ演出が無事に完了。
皆の前でお披露目することができました。

こちらが全社員大会の様子です。
会の終了後、皆ff-1の方に近寄り、ある人は興味深く眺めて、またある人は楽しそうに実際にff-1に触れておりました。
私たちレストアメンバーはff-1本体よりそんな人たちを眺めており、皆の顔を見てなんだか報われたような気がしました。
そしてこれで無事にff-1レストアプロジェクトが終了したのでした。

総括・反省点 ~将来宮城スバルではたらく人へ向けて~

1年4か月もの間、レストアを行っていると多くの苦労や反省点が思い起こされます。

1つめに悩んだのは部品の問題でした。
生産終了して数十年経ている車なのですでに純正部品は枯渇しており、部品を入手することに難儀しました。汎用品で代用できるものはそれを使用して凌いできましたが、中にはどうしても純正品でないと修理が難しいアセンブリがあり途方に暮れたこともありました。しかし弊社のお客様や取引のある会社様から部品のご提供を頂いたりすることで、無事にff-1を完成させることができました。
決して弊社のみでは完成させることはできなかったので、本当に感謝の念に堪えません。

2つめは部品管理の問題です。
長きに渡りレストアが行われる中で、分解して発生した部品の置き場所が広くなりすぎて、必要な部品を見つけ出すのに時間が掛かることがありました。
どこに何があるのかをしっかりリスト化して記録することが重要で、整理整頓を普段から心がけることが大事であることを再認識するきっかけとなりました。

3つめはff-1のレストアの進め方です。店舗スタッフを班分けして本社に集まってもらってレストアをするというやり方でしたが、お店で入庫や整備の調整してもらう必要があり、店舗への負担は多かったものと思います。またこれによりお客様にご迷惑をお掛けしていた部分も少なからずあったでしょう。
しかしながら、そういった店舗の協力がありレストアを無事に完了させることができたので、レストアメンバーのみならず社員全員、お客様も含め皆でff-1を完成させたことと同義だと勝手ながら思っています。

他にもお話したいことがあるのですが長くなるのでここまでとします。
しかし、レストアを通じて得た知見は私たちの中に残り続け、宮城スバルが乗用4WD開発の嚆矢となった歴史と誇りを以前にもまして胸に抱きつつ、今後の仕事に励んでいきたいと思います。

エンジンを点火させてからこの全社員大会までの間、とにかく全社員大会のお披露目に間に合わせたいという一心で、頑張ってff-1のレストアを行ってきました。

無事に完成させることができて良かった…。
本当に良かった…。
この感動を皆様にもお分けしたい。
読者の皆様にもff-1を見てほしい。

お知らせ

ということでお知らせです。
このレストアされたff-1ですが、BEST SHOP栗生にてしばらくの間展示することになりました。
私たちの汗と苦労の結晶をぜひ間近でご覧いただけたら幸いに思います。

SPECIAL THANKS!

最後になりますが、ff-1を完成させるために多くのご支援・ご協力を提供して下さった皆様に感謝申し上げます。

弊社のお客様で文化横丁「源氏」の高橋様。
部品が無く、途方に暮れていた時にお声がけ頂き本当に感謝をしております。
提供頂いた部品が無ければ現在の快調なエンジンに修理できませんでした。
高橋様が経営していらっしゃるお店のご紹介をさせて頂きます。スバル好きな人はぜひ足を運んでみてください。

文化横丁 源氏 アクセス

✑名称 / 源氏
✑ 住所 / 〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町2丁目4-8
✑ 電話 / 022-222-8485
✑ 営業時間 / 16:30~22:00
✑ 定休日 / 日曜・祝日

株式会社ヨコハマタイヤ様からはff-1レストア用に、ヨコハマタイヤ「G.T.SPECIAL CLASSIC」をご提供頂きました。
通常のラインナップにはないホワイトリボン風の塗装まで特別に施して頂き、旧車らしく1970年代の雰囲気をまとったff-1に仕上げることができました。
ヨコハマタイヤ様誠にありがとうございました。

千葉スバル自動車株式会社 松田様、ご縁がありまして当時の資料を快く御貸与して頂きました。本当にありがとうございました。
レストアで使用する以外にも、noteでどんな文章を書けばいいか迷ったときに、ヒントとなることがたくさん書いてあり、こういった所でも大変助かりました。

中山ライニング工業株式会社 仙台営業所様からはff-1のドラムブレーキ内に収まる大きさ形のホイールシリンダーとライニングを長い期間、海外を含め広い範囲で探して頂きました。誠にありがとうございました。

らくだの車検センター宮城店様からはff-1の車検の知見、様々なバックアップをして頂きました。
本当にありがとうございました。

それでは本当に最後になりますが、読者の皆様におかれましては、長い間このような拙い文章にお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。
遠くないうちにまたお目にかかれる日が来る?かもしれません。

それではまた会う日までさようなら。

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