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「肩を上げるのが辛い」を科学する Par1:肩関節屈曲で生じる痛みの解消方法。肩の動作における全身の連動性を知ろう

パーソナルトレーニングの現場において、クライアントの疼痛で特に多いのが「肩の痛み」です。その中でも、肩関節を屈曲させて腕を上げるのが痛い…という人に対して、どのようにアプローチすればいいのかを解説します。

肩関節屈曲動作で動くのは肩だけではない

肩関節の屈曲、つまり腕をまっすぐ上げる動作において、肩甲上腕リズムというメカニズムが働いています。これはカンタンにいうと、腕を上げる=上腕骨を上げる動作と連動して、肩甲骨が一緒に動くメカニズムを指します。

肩関節の屈曲動作に関係するのは、肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節、肩鎖関節といった肩周辺の関節です。それに加えて、体幹部の動き、骨盤の傾斜、頭部の位置なども関わっています。つまり、肩を動かすという動作に対して、肩周りだけをケアしても根本的な解決にはつながらないかもしれないのです。

肩甲上腕関節の動き

皆さんが「肩」と聞いて思い浮かべる場所にあるのが、肩甲上腕関節や肩峰下関節、そして肩鎖関節です。まずは、肩甲上腕関節が屈曲動作でどのように動いているのかを解説します。

いきなりですが、手のひらを上に向けた状態で腕を上げてみてください。前腕の内旋・外旋を一切加えず挙上させていくと、屈曲角度が180°に至る手前でつまり感を覚えると思います。

一方で、全力で内旋(手のひらを身体の外に向ける)したまま腕を上げようとしても、やはり最終可動域の手前でつまり感を覚えます。

実は、肩甲上腕関節は肩関節の屈曲動作時において、上腕骨を内旋→外旋させているのです。動き出しの際は手のひらが内側に向いて、腕が上がってくるにつれて上腕を外旋させていく。これによって、スムーズに腕が上がります。例えば、水泳の背泳ぎにおいても、この動きが行われることで腕の動作を実現させています。

肩甲胸郭関節の動き

肩甲胸郭関節は、肩甲骨を胸郭上で「すべらせる」ように動作させる関節です。シンプルな動作でいうと、肩甲骨を寄せたり(内転)離したり(外転)するときに働いています。

今度も実験してみましょう。肩甲骨を内転させる、つまり肩甲骨をグッと寄せた状態で腕を上げてみてください。おそらくかなり上げづらいと思います。なぜ上げづらいのか。それが正しい動作ではないからです。

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