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炎症が認知機能に及ぼすさまざまな悪影響 炎症と脳機能#1

アンチエイジング、健康、ダイエット、美容…。身体に関するあらゆるシーンで大きなテーマとなるのが「炎症」です。炎症とは「生体の恒常性を構成する解剖生理学的反応の一つ(Wikipediaより引用)」とされます。組織(細胞)のダメージに対する、生体の防衛反応です。

精製糖質、加工食品、添加物、日々のストレスなどなど。現代人はとにかく炎症を避けられない生活を生きていると言われています。今日から何回かの記事で、そんな炎症が脳機能にどう影響を及ぼすのかを紹介していきたいと思います。

炎症が視覚的認知機能を低下させる?

多くの疾病は、その症状の一つに「認知機能の低下」というものが挙げられます。2019年に発表された研究では、炎症がそうした認知機能にどう影響をもたらすのかを、いわゆる「注意力(覚醒、方向づけ、行動コントロール)」にどう影響するのかを調査しました。

この研究では、健常男性20名にサルモネラ腸チフスワクチンを摂取して、一過性の軽い炎症を誘発させました。いわゆる腸チフスは開発途上国で多く見られる感染症で、発熱や頭痛、食欲不振、全身倦怠感などを発症します(もちろん、研究では健康に重大な悪影響を及ぼす量は摂取していません)

実験では、ワクチンを摂取後6時間の参加者の脳波を記録。コンピューターによって行う「注意ネットワークテスト」という簡単な認知テストで、注意力のパフォーマンスの変化を調べました。

注射後、参加者には軽度の全身性炎症を確認。注意ネットワークテストでは生理食塩水を投与したプラセボ群とに明確な差は見られませんでしたが、脳活動には変化が見られました。炎症を引き起こしていたグループは、対象にハッキリと意識が向いている=覚醒時に見られる脳波「α波」の抑制が確認されたそうです。

この研究で興味深かったのは、人が認知や行動時に見られる他の行動、例えば方向づけ(進む決定や目標・進路・やることなどを決定すること)や実行制御(思考や行動をコントロールする。主に前頭部に備わる機能)には、影響が見られなかったということです。

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