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ストレス耐性と視覚の話~ストレスのバケツには何が入ってる?~

みなさんの周りで、同じ年齢・性別・身体能力なのにストレス耐性がなく、すぐ体調悪くなっちゃう人と、逆にストレスフルな環境でもすごく元気な人がいます。健康診断などの各種データでは年相応なのに、ストレス耐性に差が生まれるのはなぜか。その疑問を、今回は「視覚」という観点で考察してみたいと思います。

ストレスのバケツの中身には何がある?

「ストレスのバケツ」という考え方があります。体の中にバケツがあり、その中にさまざまなストレス=負荷が溜まっていくという考えです。

人間関係や仕事といった分かりやすいものだけでなく、運動による負荷、知識を蓄えるための運動、新しいことへの挑戦や経験、食事や睡眠、目から入ってくる情報…。

バケツの許容量をオーバーする負荷が入ってくると、動作のエラーや痛み、体調不良、怒りや不安、場合によっては鬱といった症状が、結果として出力されるのです。このバケツに溜まっている、最も容量のかさむものを探し出してケアすることで、バケツに溜まったストレスが減り症状やエラーが改善されることがあります。

例えば、20代で会社員のAさんとBさんがいたとします。仕事で忙しい毎日を送り、人間関係も複雑でストレスを感じやすい環境にいる2人ですが、Aさんはストレスからくる不安感や精神疾患的な症状が見られるようになり、休職することとなってしまいました。

一方で、BさんはAさんと年齢も背格好・身体能力も大して変わりませんが、 特にストレスで心身が参ってしまうことはなく、毎日出勤できています。この2人のストレスのバケツには、どんな違いがあったのでしょうか?

後頭葉の復習と神経細胞の働き

視覚・視力といった話を聞くと、大抵は「遠くの物がハッキリと見える」「小さな文字がしっかり見える」といった、いわゆる視力検査的な能力を思い浮かべますよね。とはいえ、人間において「視覚」という機能には、単に物を見る以上の意味があります。

脳における視覚機能の中枢は「後頭葉」です。後頭葉はいくつかの「機能的視覚野」で分けられていて、全ての機能を統合することで、視界に入るあらゆう情報を受け取ることができます。その機能を簡単にまとめると、次のように説明できるでしょう。

  • 視覚情報を処理して解釈する機能

  • 視覚的記憶を形成できるようにする機能

  • 視覚情報を、隣接する頭頂葉から送られる空間的情報と統合する機能

後頭葉は、視覚的情報の処理に特化した機能を持ちます。そのため、両側の後頭葉に障害が生じると、眼は正常に機能しているにもかかわらず、視覚により「物を認識する」ことができなくってしまうのです(これを「皮質盲」と呼ぶ)

一次視覚野

後頭葉の領野は、明確に区別できる特徴(縞や溝)がありません。ただし、一次視覚野にはだけは目立った縞模様があるとされています。

目から入った光の情報は、眼球の網膜で電気信号に変換され、視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線を通り、後頭葉の一次視覚野へ到達します。そのため、一次視覚野はV1とも呼ばれます。

一次視覚野は、主に次のような低次の情報を感知するとされています。

  • 局所性(対象の視野中における大きさ)

  • 方向選択性(対象の向き)

  • 空間周波数(対象の明るさが変化する空間的頻度)

  • 色彩

ちなみに、一次視覚野は6層構造になっており、第2、3、5、6層には「ブロッブ」という円柱構造があり、色を分析する機能がある他、第4層以外には特定の方位・傾きに選択的反応を示す「方位円柱」が存在する。たった2mm四方のこの皮質に、左右2組の眼優位円柱、16個のブロッブ、180°の角度に対応できる方位円柱があり、空間の像の分析に十分な機能を果たしているのです。改めて、視覚というのは非常に複雑な脳構造で成り立っていると分かります

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