視覚・前庭覚をうまく訓練する方法~ロンベルグ試験の応用~
パーソナルトレーニングの現場では、日々さまざまな要望に応えて運動指導を行います。シンプルに「痩せたい」「筋肉を付けたい」だけではなく、「年齢を重ねて足腰が弱くなり、歩くのがしんどくなってきた。できれば以前のように、家の周りの散歩や旅行を楽しめるようになりたい」という要望を持つ高齢者もいれば、「100m走の選手で、今のタイムをなんとか1秒縮めて大会で好成績を残したい」という要望を持っているアスリートもいます。
パーソナルトレーナーは、こうしたクライアントにさまざまなパフォーマンスアップの運動指導を行います。しかし、往々にしてそれらの指導は筋肉・関節運動に特化したもの指導内容に偏りがちです。
もちろん、いわゆるウェイトトレーニングや敏捷性を高めるトレーニングで、アスリートや高齢者の方々のニーズにこたえることもできますが、もし現在の指導内容でパフォーマンスアップの効果が得られない場合、何をすればいいでしょうか? 当然、アプローチの仕方を変えていかないといけないですよね。
そこで試していきたいのが、視覚・前庭覚に働きかけたエクササイズの実施です。このクライアントは、目で得られる情報や、平衡感覚から得られる情報がうまく処理できずにいるため、筋力が上がっているのにパフォーマンスアップ効果がうまく得られていないのではと考えられるからです。実際に、クライアントの視覚・前庭覚の能力を確かめる方法として、「ロンベルグ試験」というものを用いることができます。
ロンベルグ試験
ロンベルグ試験の方法は簡単で、道具がいりません。まず、クライアントに「つま先・かかとをそろえた状態の立位姿勢」を取ってもらいます。その状態で30秒以上(60秒程度を目安にしましょう)、ぐらつかずに立っているかを確かめます。次は同じ検査を「閉眼した状態」で行います。
閉眼した状態で、ふらついたりバランスを崩して倒れそうになったりした場合は、前提覚によるバランス保持がうまくできていないということになるでしょう。前提覚での情報処理と、体性感覚がうまく連動していないことで、バランスを崩してしまうと考えられます。
ちなみに、この試験を行う際は相手の運動レベルに応じて、バランスを崩してもすぐ支えられるようにしてください。安全確保を第一に動きましょう。
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Brain Special Magazine
運動指導者の方へ向けて「脳」について理解し、パフォーマンスを高め機能改善などを行えるように学べるコンテンツです。
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