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大腿骨のポジションから骨盤・股関節のアライメントを見る〜大腿骨の前方突出をどう判断する?〜

骨盤と股関節の両方のアライメントをチェックするとき、いくつかの手順を踏むことになります。今回はその一例として、大腿骨が前方に突出していた場合、どのように骨盤・股関節の状態をチェックすべきか解説します。

股関節周辺のアライメント

クライアントにまっすぐ立位になってもらい、大転子の最外側のポジションを触ります。クライアントに骨盤の歪みがないと仮定した場合、右側の大転子が左側の大転子より後ろにあった場合、何を意味するでしょうか?

正解は、「クライアントの右股関節が外旋している」です。あるいは、このクライアントは後捻股になっている可能性があります。

前捻角と後捻股
通常、大腿骨に対して大腿骨頭は前方に捻じれています。この角度を「前捻角」と言います。前捻角は10〜15°が適切とされていて、15°以上は「過度な前捻」が起きていて、10°未満は「後稔角(後稔股)」と表現します。

前捻角は大腿骨頭の形状の特徴であり、多くの場合は幼少期の過ごし方(座り姿勢やハイハイの形)で決まると言われています。そのため、先天性ではないのですが「ほぼ先天性」の要因で決定されると言われています。

前捻角の改善は基本的に不可能で、成長過程で歪まないようにするアプローチが必要です。スポーツや日常動作では、自身の前捻角に合わせてフォームやトレーニングを調整する必要があります。

(例)前捻角が広く内旋気味なので、股関節外旋の動きを練習するなど

今回のアライメントチェックは、姿勢不良の改善という判断とは別に、クライアントの構造上の特徴を掴むことも大きな目的と言えます。改善できる部分と改善できない部分を見極めて、その人に合わせたトレーニングやフォーム指導を行うための参考として、今回のアライメントチェックを活用してください。

先程の状態とは異なり、もしも大転子の位置に差がないという状態で、左右の股関節の外旋・内旋可動域に差があるとしたらどうでしょう?この場合は、骨盤(というか寛骨)の前傾・後傾可動域に左右差があると判断できます。

他のケースも考えてみましょう。右の大転子が前方にある場合、右股関節が内旋気味になっているか、大腿骨が前に出ているかが考えられます。大腿骨が前に出ている状態というのは、股関節にとっていい状態とは言えません。この状態で荷重がかかると、大腿骨が外上方に動くような力が加わります

本来かからない力が股関節に加わることで、外上方の関節唇が損傷し、臼蓋不全を起こし、変形性股関節症になるという一連のトラブルにつながる可能性があるわけです。

大腿骨のポジションをチェックする

クライアントを仰臥位にして、片脚を持ちます。この姿勢のまま、股関節を押し込んでいきましょう。

このとき、「大腿骨頭のスライド」がどの程度起きているかを確認しましょう。左右それぞれで行い、スライドの差を確認します。このテストで、「この人は右の大腿骨が前方に出ているかもしれない」といった判断を行います。ちなみに、この人は左の大腿骨頭に大きなスライドが確認できました(画像では判別が難しいので、1つの情報として頭に入れておいてください)

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