漫画原作「私カエル」

S1.東京駅・正面
東京駅の正面。

S2.東京駅・新幹線プラットホーム
新幹線のプラットホーム。新幹線を待つ乗客達。その中に、若い女性北浜美咲がいる。キャリーケースを持ち、背が高く、カジュアルな服装の美咲(イメージ渡邉理佐)。
美咲「来た」
駅に入って来た新幹線を見て言う。
N 「私の名前は、北浜美咲(きたはまみさ)」

S3.オフィス(回想)
オフィスの内部。机、ノートパソコン、電話が設置。
同僚と仕事をしている美咲。
N 「東京で、ファッション関係の会社の仕事をしています」
片手に電話、片手にペンを持って、仕事に奮闘する美咲。

S4.新幹線・内部(指定席)
指定席。美咲が窓側の席に座っている。
N 「休暇を貰い、地元宮城県に帰る所です」
窓の外を見る。丁度、東京スカイツリーが見える。
N 「でも、本当は東京での生活に疲れました。否戦い疲れました」
目を瞑る美咲。

S5.夜の公園(回想)
夜の公園で美咲と恋人と思われる男性が激しい討論(男性顔は見せずに背中のみ)。
N 「仕事も、プライベートも、自分が想像していた物との違いに戸惑いながら、悩み傷つき、現在に至ります」

S6.新幹線・内部(指定席)
指定席。
目を開く。開くと、窓の外には、埼玉県の鉄道博物館。
N 「そこで、もう一度宮城県に帰ってみようと思いました」
美咲の横顔。

S7.新幹線・走行
走行中の新幹線。

S8.新幹線・内部(指定席)
指定席。新幹線が白石蔵王駅に到着。
美咲「アッ! 」
白石蔵王駅の標識を見て。
美咲「ママに連絡! 」
直ぐ様、スマホを取り出し、母親にLINEを送る。
車内販売の新幹線パーサーが登場。
美咲「すいません! お茶ください! 」
前に乗り出す。
お茶を飲みながら、新幹線の窓の外の風景を見る。新幹線が宮城県の長町周辺を走行中。
美咲「もうすぐ、仙台か」
お茶を持ちながら言う。
N 「東京から返って来た私を故郷は受け入れてくれるんだろうか・・・」
考え込む美咲。

S9.仙台駅・正面
仙台駅の正面。

S10.仙台駅・新幹線プラットホーム
新幹線プラットホーム。新幹線プラットホームに降り立つ美咲。
N 「こうして、私は宮城県に帰ってきました」
美咲のバストショット。

S11.住宅街
2階建て等の住宅が並ぶ住宅街。公園も存在。

S12.美咲の自宅・正面
住宅街の中心部に白い2階建て住宅(美咲の自宅)。

S13.美咲の自宅・表札
「北浜」と書かれた表札。

S14.美咲の自宅・リビング
リビング。液晶テレビ、ソファー、ピアノ、犬のゲージとトイレ等がある。
美咲がソファーでスマホを持って寛いでいる。
美咲「やっぱり、平日だから、地元の友達に連絡はしずらい」
スマホを見ながら、スマホの電話番号の連絡先を見る。
N 「家に帰ってビックリした事。弟が就職活動中、パパのまさかの転勤、そして・・・」
スマホを見ている顔を上にあげて、視線を移動。
N 「犬と言う名の家族が増えていた! 」
ゲージにゴールデンレトリバーがいる。
美咲「大きくっても、可愛い」
犬を撫でる。
犬 「ワン! 」
N 「しかし、こうして、貴重な休日をダラダラと自宅で過ごすのを勿体無く」
犬とふれあい笑顔。

S15.美咲の自宅・正面
自宅。バッグを持った美咲がドアの前にいる。
N 「私は、あてもない、果てしない散歩に出発しました」
自宅を背に出発。

S16.歩行路
歩行路を歩く美咲。
N 「私の住んでいた町も、いろいろと変わりました」
何かに気付き視線をふと変える美咲。
「管理地」と看板が書かれて平屋の建物。
美咲の脳裏に、子供の頃の美咲が笑顔で駄菓子を買っている記憶が浮かぶ。
美咲「子供の頃に行ってた駄菓子屋さんが・・・」
平屋の前を子供達が横切る。
N 「これも時代の流れかと思いながらも、一抹の寂しさを感じました」

S17.運河(小)
小さい運河。ボートが繋ぎ止められて停留している。釣り人も数名いる。近くには、公民館が見える。

S18.運河と橋
運河に架かる橋を渡る美咲。
先程の釣り人とすれ違う。

S19.公民館
大きな公民館の正面に来た美咲。
美咲「懐かしい! ここで、よく友達皆で映画観てたんだった」
脳裏に子供の頃の美咲が友達と公民館で映画を観ていた事が思い浮かぶ。
声 「美咲? 」
美咲「!? 」
自分の名前を聞いて驚く。振り向くと、地元の友人の松田茉奈(まつだまな)が
いる。無地のブルーオーバーTシャツとチェック柄ハイウエストスカートを着ている茉奈(イメージ松岡茉優)。
美咲「もしかして茉奈? 」
茉奈「そうだよ! 」
美咲「うわぁ! 久しびり! 」
近付きはしゃぐ二人。

S20.校庭(回想)
学校の校庭で、子供時代の美咲と茉奈が同級生達と遊んでいる。
N 「彼女の名前は、松田茉奈(まつだまな)。小、中学校時代の友人です。学生時代は彼女の明るさに励まされました」
子供時代の美咲と茉奈の笑顔のアップ。

S21.集会所
公民館の近くの集会所。集会所の前に美咲と茉奈がいる。
美咲「本当久し振りだね」
茉奈「前会ったの東京行く前だっけ? 」
笑顔で会話。
茉奈「私、地元のNOTE株式会社で働いてるんだ」
美咲「良い会社だね。私は、東京のファッション関係の会社で、オフィス事務の仕事してる」
茉奈「美咲らしいね。ずっと、ファッション関係の仕事したいって言ってたから、夢が叶ったんだね!」
二人の前のウォーキング用ポールを持った夫婦が通りすぎる。
N 「夢が叶った。本当にそうだろうか・・・」
複雑な表情の美咲の横顔。

S22.オフィス(回想)
オフィスの内部。美咲が上司に呼び出されて𠮟られている。上司の顔は見えない。
N 「夢は叶った。けど、毎日が戦いの日々であり、思い描いていた理想と現実の狭間に苦悩しながら、生きていました」
頭を下げる美咲。

S23.集会所
集会所。二人の会話が続く。
茉奈「秀ちゃんも、東京に行ったよ」
美咲「あの子も行ったの! 」
オーバーに驚く。
茉奈「そんなに驚かなくても、あの子もあの子で大変だったんだから」
苦笑い。
茉奈「美咲! 」
美咲「何? 」
近くの運河を小さいボートが航行。
茉奈「私結婚するの! 」
美咲「エッ!? 」
オーバーに驚く。
茉奈「だから、驚かないで」
美咲「ゴメン」
落ち着く。
N 「そうだ、今の私達の年齢なら結婚する者も登場して、当たり前な訳で・・・」
茉奈「彼は良い人だよ。今の仕事は続けていくつもり。美咲は東京で良い人とかいる? 」
美咲「わっ、私? 親しい男友達がいるけど、私今仕事人一筋だし! まだ、結婚するつもりないし! 」
顔を赤らめて、デフォルメ調で慌てる。それを唖然として見る茉奈。
N 「親しい男友達が居るには事実。恋人と破局した直後の私は恋愛をする気持ちにもなれない複雑な物もあるのも事実」
美咲の心の声と同時に、二人の会話が続く。
美咲「挙式いつ? 」
茉奈「決まったら連絡する! 美咲に教えて貰ったLINEに送るね! 」
美咲「私、まだ地元にいるから、暇な時ご飯食べに行こう! 」
茉奈「うん! 」
手を振り分かれる美咲と茉奈。
N 「茉奈を見ながら、地元で幸せや、やりたい事見つけて過ごす彼女を見ながら、茉奈が幸せそうに見えてきました」
手を振る茉奈のアップ。

S24.ノート緑地公園・入り口
緑地公園の入り口。『ノート緑地公園』と書かれた立て看板がある。入り口を入ると駐車場。
美咲「緑地公園か、懐かしいな」
緑地公園に到着。

S25.ノート緑地公園・マラソン(回想)
緑地公園で体育着を着た子供時代の美咲がマラソンをしている。
N 「小学校の頃、よく此処でマラソン大会走したっけ・・・」

S26.ノート緑地公園・運動場
広い運動場に美咲が一人いる。
運動場の上空を飛行機が飛行機雲を残しながら飛行。
美咲「こうして、空を見上げるのって、東京じゃあまりしなかった」
空を見つめる。
その美咲をジャージを着た青年が横切る。
美咲「!? 」
青年の顔を見て、何かを思い出す。
美咲「待って! 」
青年「えっ? 」
立ち止まる。
美咲「えーと、えーと、誰だっけ? 」
デフォルメ調で誰だが思い出そうとする美咲。コイツ大丈夫かと思いながら心配する青年。
美咲「分かった! 隆一兄ちゃんだ! 」
隆一「もしかして、美咲か! 」
青年(佐原隆一)も思い出す。ジャージを着た長身の青年隆一(イメージ佐藤隆太)。

S27.学校の校庭(回想)
校庭。子供時代の美咲と隆一が遊んでいる。
N 「彼は佐原隆一(さはらりゅういち)。小学校の頃は皆の良き兄貴分でした。私は隆一兄ちゃんと呼んでます」

S28.ノート緑地公園・運動場
運動場のベンチに座っている美咲と隆一。
隆一「今警官で地元の警察署勤務だ」
美咲「凄い! 立派なポリスマン! 」
隆一「何だそれ! 」
二人共笑う。
隆一「皆大人になったな」
しんみり言う。
美咲「そうだね・・・」
感慨深げに言う。

S29.集合写真
美咲達の子供時代の集合写真。写真の中央には、美咲、茉奈、隆一がいる。
N 「本当に、皆大人になりました」
徐々に写真が写真の中央に寄って行く。
N 「でも、大人になって、自分が本当に成長したのか。何を失って、何を得たのかの分からない時も有ります」
子供時代の美咲のアップ。

S30.野球の試合(回想)
野球の試合。若い頃の隆一がピッチャーで投球。
N 「隆一兄ちゃんは、学生時代野球部でピッチャーをしていました。けど、怪我で野球の夢を断念したと言う過去が有ります」


S31.ノート緑地公園・運動場
運動場のベンチ。
隆一「友達連中も元気にやってるよ」
膝に手を当てて言う。
美咲「まあ、隆一兄ちゃんの友達って昔から元気だからね」
隆一「オイ、美咲どう言う意味だ!? 」
デフォルメ調で怒る。
美咲「いえいえ、そういう意味じゃ」
デフォルメ調で反論。
隆一「じゃあ、もう一走り行って来るよ! 」
立ち上がる。
美咲「短い時間だったけど、有難う」
美咲も立つ。

N 「隆一兄ちゃんの背中を見ながら、自分の夢を断念しながらも皆の為に働く姿に、本当に大人だと思いました」
走りながら去る隆一の後ろ姿。

S32.大空
大空と照りつく太陽。

S33.NOTE MART(前)
「NOTE MART」と書かれた大きな看板のコンビニ。
美咲「この季節は、喉乾くなあ」
コンビニの前に到着。
美咲「何か飲み物買おう」
コンビニに入ろうとする。しかし、先にドアが開く。ドアから、大老の男性が登場。
美咲と男性、二人の顔のアップ。目を合わせる。
明石「お前帰って来たのか? 」
白髪交じりの凛々しい男性明石賢治(イメージ北大路欣也)。
美咲「明石先生! 」

S34.病院・診察室(回想)
診察室。
N 「明石賢治(あかしけんじ)先生。私が子供の頃通っていた病院の先生です」
カルテを見ながら診察。

S35.病院・治療室(回想)
治療室。子供の頃の泣く美咲とあやす明石。
N 「私も先生の病院で注射を克服しました」
泣くのを辞めて、明石に注射を打たれる。

S36.NOTE MART・内部
コンビニのイートインにいる美咲と明石。
明石「まさか、お前とこんな所で再会するとはな」
珈琲を飲む。
美咲「先生、病院は良いんですか? 」
明石「引退したよ」
美咲「エッ!? 」
制止する。
明石「待て、医者は引退しとらん。病院は息子に譲った」
美咲「あの無茶苦茶痩せてる事で有名な息子さんに! 」
脳裏に息子(イメージ滝藤賢一)が浮かぶ。
明石「お前、何て事言うんだ」
苦笑い。
明石「いや、ボランティアやったり、友達と一緒にカラオケ行ったりして、結構楽しいよ」
美咲「先生がカラオケ」
脳裏に、友人とカラオケをする明石が浮かぶ。
明石「お前何考えてるんだ? 」
突っ込む。
明石「引退して、やってなかった事をすると、今まで見えてこなかった事が見えてきて、結構勉強にもなるぞ」
美咲「見えてこなかった事か・・・」
ボトルの水を飲む。
明石「お前東京で何かあったのか? 」
心配そうな表情で言う。
N 「何で見破った! 」
ビビる美咲。
美咲「大丈夫です! 休暇貰って地元に来ただけです! 」
慌てつつも反論。
明石「ならいんだかな」

S37.NOTE MART(前)
コンビニの前。ドアの前に美咲と明石がいる。
明石「何かあったら病院に来い。病気じゃなくても、俺がここら辺で散歩してるから、相談事があるなら、何時でも来い」
美咲「有難うございます」
深々とお辞儀をする。
明石「東京でも頑張れよ」
笑顔。
N 「例え引退していても、明石先生は先生でした。そして、新しい生活に生きがいを見つけて、楽しそうに見えました」

S38.公園(夕日)
夕日を背景にした公園。滑り台、ジャングルジム、ブランコ等がある。
美咲「歩き疲れた・・・」
公園に到着する美咲。
考え込んでいる様な表情。
ブランコを発見して座る。
美咲「皆変ったなあ」
脳裏に、茉奈、隆一、明石の顔が思い浮かぶ。
美咲「私は、どうなんだろうか?」
ブランコの鎖を握る。
N 「東京での生活に疲れた私に、再会した皆は、幸せそうに見えたと、同時に
私に色んな『問いかけ』をしてくれました」
美咲の横顔。
美咲「皆、地元で頑張っている。でも、私は東京で頑張っていたのか? 」
脳裏に、オフィスで働く美咲の姿。
美咲「このまま、宮城県に帰って来るのは『逃げ』なんじゃないのか? 」
下を向いて、考え込む。
美咲「!? 」
上を向いて、驚く。
ブランコの前に、子供時代の美咲が出現。
美咲「わたし?」
子供時代の美咲、大人の自分を見た後に後ろに振り向き、後ろの子供達と合流して遊ぶ所で消滅。
美咲「そう言えば、ここは子供の頃よく遊んだ公園だ」
公園を見渡す。
美咲「子供の頃か・・・」
モンタージュ的描写で、子供時代の思い出が登場。

S39.教室(回想)
小学校の教室。子供時代の美咲や同級生がいる。
美咲「私、サファイアアリスになる! 」
同級生達の中央で右腕を上げる。
N 「子供の頃は、アニメの美少女戦士になりたいって、ずっと言ってたっけ」
教室で騒ぐ美咲達。

S40.公園(夕日)
公園。
美咲「! 」
何かに気付く。
美咲「私、美少女戦士になれなくても、学生時代の夢だったファッション関係の仕事をしてる! 」
ブランコから、立ち上がる。
美咲「例え、キツくたって、その夢の為に歯を喰いしばって、いろんな事を乗り越えて来たんだ! 」
前を見て、夕日を見る。
N 「今本当に仕事を辞めて、地元に帰ってきたら、『甘え』であり、『逃げ』になる。だから・・・」
夕日を見る顔のアップ。

S41.仙台駅・正面
仙台駅の正面。

S42.仙台駅・新幹線プラットホーム
新幹線プラットホーム。新幹線プラットホームにいるキャリーケースを持ち、カジュアルな服装の美咲。新幹線を待つ美咲。
美咲「もう逃げない!」
決意を新たに、真剣な表情。
N 「もう一度、東京に戻って、自分の為、自分の『夢』の為に戦います! 」
キャリーケースを強く握る。
駅に新幹線が入る。
N 「私カエル」
美咲の横顔。