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2019年 九州へ登山旅 九重連山編、5日目

寒くて目が覚めた。
3時。寒い。眠りが浅い。

4時。足を蜂に刺される夢を見て飛び起きた。
足は寒さでチクチクした。足を揉んで血行を促す。-6℃まで快適という寝袋を持ってきたけど、こんなに冷え込むとは。
11月上旬でも冬の装備が必要だった。

前回の記事はこちら。

外を見ると雲が一つもなく、トイレついでに星を撮った。
外は凍りつくようなピリッとした冷たい空気だった。

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中央がオリオン座。オリオンのベルトの下がオリオン大星雲。もやっとしてる。
オリオン座の右手のオレンジ色の星がベテルギウス。この星がいつ超新星爆発してもおかしくない状況。超新星爆発見てみたい。

寒いからか、星が見えるのか。風も強くてあまり外にはいられないほど寒い。

後から聞いた話だとこの日は氷点下5度だったらしい。
風も強く、僕のメッシュでできたテントは尚更寒いわけだ。

なんとか寒さを凌いで目を閉じる。
気がついたら外が明るくなっていた。
寝たつもりは無かったのだが数時間寝ていたらしい。

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朝日が背面にある山に射し込みオレンジ色に染る。

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出発の準備のためにテントを出て、荷物を整理する。もうここには戻ってこない。
朝食を食べていると朝日が山間から射し込み体に太陽光が当たり、氷点下で冷えた体が生き返った気持ちになった。
太陽凄い。放射熱すごい。

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太陽の温かみを感じて一気に作業が捗った。
朝食べたオートミールとコーンスープが美味しかった。

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テントや服を乾かし、荷物を整理してパッキング。
法華院温泉には3日分の温泉代とテント場代と入山料を払ってしまっていたが、僕の気分は変わった。別の所へ行きたい。

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誰も居ない所へ行きたかった。何も邪魔されない。誰もいない所で1人になりたかった。それに今回の旅の目的はそれ。

明日は山頂の避難小屋で寝ようと思うけど、寒さ的には大丈夫だろうか…
標高差は約400m。100mあたり0.6度下がる。2.4度しか違わない。-7.4度。最悪見積もって氷点下10度くらいだ。
僕はメッシュテントだったし、小屋は石造り。多分大丈夫。死ぬようなことは無いと思う。

そんなことを考えながらテント場を出発した。

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朝、登山道は凍りついて、草木は霜が降りていた、地面には霜柱ができ、土を踏むとサクサクと音を立てた。
小学校の時霜柱をよく踏んだっけ。踏むのが楽しくて登山道はサクサク進んだ。

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山道を登り、鉾立峠に到着した。

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峠の横にあるピーク。立中山へ登った。
荷物を峠にデポしてきたから10分で登れた。

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なんとなく帽子をかぶせて「ここに来た」という写真を撮る。
そして九重連山の中心部を目指す。

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写真に見えるピークは白口岳。
急登と地図にある通りまさに急登だった。ストックは使わず、岩を掴み登るほどの斜面で休憩しつつ、マイペースに登る。マイペースがソロ登山の良いところ。
途中藪漕ぎもあり、かなり疲労した。

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気がついたら道を間違えてたみたいだ。九重連山は色んな道が別れていて、分かりづらい。ヤブの中にはタオルが落ちていたり、色んな人が迷い込んだ痕跡があった。このヤブは今までの登山経験でもトップ3に入る嫌な道だった。

やっと正規のルートに戻り、上り続ける。
正規の道は歩きやすい。急登の終わり、白口岳1720mに到着し、遅れて到着した年配の方と喜び写真を撮りあった。

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九重連山と呼ばれるだけ山が連なる。僕は次のピークを目指した。
ちょっと藪こぎがあった。藪漕ぎは九重連山では普通みたいだ。ニットの靴下は気をつけた方が良さそう。

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稲星山 1774mついた。

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阿蘇山が見えた。噴煙を吹き出している。ここにいると外輪山はよくわからなかった。
よく考えるとここが外輪山の外にある山だった。

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火山の石だとわかる。富士山の麓広がる石と同じような石だ。赤く、黒く、軽く、脆い。踏まれて砂のように細かくなっていた。

ピークに登るとすぐ近くに綺麗な山が見えるから、すぐに歩きだしたくなる。
九重連山の名の通り、山頂から山々が見えた。ここは下界と隔離されたまた別の場所だった。

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次はあの山。

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高所恐怖症なのに高所で自撮りをしてみた。
怖くてただ立っているだけで冷や汗がでる。

最高峰の中岳 1791m

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今日出発した坊ガツルが見える。
今日は雲が一つもない。青空だ。

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次の山へ行く途中で今日のサンセットポイントを決めた。ここは絶対に綺麗に見えそうだ。

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火口の御池が見える。なぜこんなに水色なんだろう。
温泉みたい。

次々に山へ登った。次々に変わる景色に僕の足は止まった。

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天狗ヶ城 1780m

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白く見えるのは硫黄岳。今も採掘されているらしい。

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ちょうどいい岩があったので荷物を置いて撮ってみた。

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バックパックは山と道 ONE
サコッシュは自作
カメラを入れられるように防水生地を使ってクッションも入ってる。
(ちなみに小型から中型のバックパックも自作して使ってる。)

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怪獣岩(勝手に命名)

九重連山といえば久住岳 1786m

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山頂から麓へ紅葉が降りていく。

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僕は写真を撮らずにボーッとして時間が過ぎてしまう。気がついたら月が昇り、もうすぐで日没だった。
九重連山はなんと山頂付近に水場がある。そこで今晩と明日の分の水を汲み、石積みの避難小屋に向かった。

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本来は避難の為の小屋。寒くて環境もよくないし景色も見れない。申し訳ない気持ちもあって小屋を掃除をしてから、荷物を広げた。

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窓はあるがガラスが無い。ようするに横穴が空いているだけ、冷気が入らないように石や板で穴を塞いだ。ここに光は入らない小屋に僕1人だ。下界から遮断された精神と時の部屋のような避難小屋は理想的で孤独だった。
暗く、何も無く、暗闇に僕一人恐怖心が湧く。でもこれも心地よい。

避難小屋を掃除していると造花を見つけた。御守り代わりにと枕元に置いた。

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身支度を済ませて中岳へ登った

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猫の耳みたいに立派な由布岳が見える。由布岳も夕日で真っ赤に焼けていた。いつか登ってみたい山。

雲一つない空に夕日が落ちる。

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夕日の反対側には、九重連山の影が落ちた。

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誰もここで夕日は見ていなかった。ここには僕しかいない。

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水平線に近づくにつれて速度を増すようにあっという間に夕日が落ち、徐々に空が暗くなった。この時のグラデーションが好きだ。

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全くの無風になり、鳥や虫も鳴き止み、空と山だけの空間になった。世界に僕一人だけかのような空間に没入ししばらく立ち止まって耳を済ませてみた。
完全に無音で無風。そのうち夜空は暗くなり一番星が見えた。

この瞬間が今回の旅で1番感動的ではじめての体験だった。ここに来てよかった。

ススキの穂をフサフサ触ったり、その辺の岩を触って違いを確かめたり、自然を手で触って楽しんだ。

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僕は自然破壊だからと自然に手をつけない思考より、積極的に自然に触れて自然の素晴らしさを体感した方が良いと考えている。自然を守る為には、自然の素晴らしさを理解する必要だ。

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空は夕焼を少し残したまま、あたりは真っ暗になった。

避難小屋に戻りベニア板で入り口を閉じた。
この避難小屋には扉が無い。割れて隙間だらけのベニア板だけ。

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夕食の時間。山で最後の夜食。今日はカレーだ。
アルファ米とカレーを食べた。美味しい。温かいご飯はありがたい。内側から温まるのを感じる。

読みかけの小説を読んでいたら数時間過ぎていた。
避難小屋は外光も無く、外とは遮断された場所。
多分、夕日はすっかり沈んだ。

入り口を見るとベニア板で塞いだ隙間が光って見えた。
月明かりだった。今日は半月。月明かりで外の光が見えた。

ベニアを取り、外へ出ると月明かりで散歩ができた。

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カメラを取り出して星と山の写真を撮った。月明かりでは山も星も撮れる楽しい条件。
月明かりの世界に僕一人。何も音もしない。気がつけば2時間、極寒の九重を散歩して写真を撮った。

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明日はフェリーで帰る日だ。
この星に後ろ髪を引っ張られながら、避難小屋に戻って寝袋に包まった。

うん。昨日よりかは風が入ってこないけど、かなり寒い。


2019/12/09
iPadで記載した写真が全て消えていたので写真を載せ直しました。
最近iPadで書く時の挙動がすごく不安

おやすみなさい。

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