コピーライティングとUXライティングの考え方の違いについて
わたしは広告会社で10年ほどコピーライターとして勤務した後、転職してIT系の事業会社でUXライターをしています。
そんなキャリアなので、コピーライティングとUXライティングの違いについてよく考えるのですが、最近読んだこちらの記事でも、コピーライティングとUXライティングの違いについて軽く言及されていました。
通常のコピーライティングは主に販促を目的としたライティングであり、UXコピーライティングは製品やサービスとの接触時に使用されるものです。
最近有難いことに、たくさん記事にスキをしていただいたり、フォローをしていただいたりしています。
そんなわたしのnoteに興味を持ってくださる方のバックグラウンドを見てみると、UXデザイナーなどUI/UXの領域に関わる方や、IT系の事業会社でマーケティングに関わっている方が多いです。
なので、どちらかというとUXライティングはなんとなく意識するようになったけど、コピーライティングはマジで未知の領域、という感じなのかなと思いました。
そこで、広告業界のコピーライティングとUI/UX領域のUXライティングの両方を経験しているレアポケモンのわたしが、自分なりに考えているコピーライティングとUXライティングの違いを書いてみたいと思います。
コピーライティングとUXライティングの違い
わたしは、コピーライティングとUXライティングは大きくわけて、次の2つの観点で異なると考えています。
ひとつ目が、対象となるサービスやプロダクトを利用する前に接触するのか、利用中に接触するのか、という違い。もうひとつが、WHAT TO SAYを考えるのか、HOW TO SAYを考えるのか、という違いです。
それぞれについて詳しく書いていきます。
サービス利用前に接触するのがコピーライティング、サービス利用中に接触するのがUXライティング
ひとつめは、コピーに接触するタイミングの違いです。
まずはコピーライティングについてですが、広告などのコピーは、基本的にはそのサービスを利用する前の生活者をターゲットに書かれています。
ビールの広告コピーであればビールを飲む前の生活者、アプリの広告であればアプリを利用する前の生活者に対して、どうすればビールを飲んでもらえるだろうか、どうすればアプリを使ってもらえるだろうか、を考えます。
つまり、サービス利用前の生活者に対して、サービスを使ってもらうためのコピーを考えることが、コピーライティングの役目です。
一方、UXライティングは、すでにサービスを利用開始している生活者に対して書かれるものになります。UXという言葉は、ユーザーエクスペリエンスの頭文字をとったものですが、ユーザー、つまり利用者という概念がそもそも「UXライティング」という言葉の中に含まれています。
このボタンをタップすると、どのような体験をすることになるのか。何か問題が起きた時に、どうすればユーザーを安心させることができるのか。サービスを今まさに利用しているユーザーに対して、どうすれば安心して気持ちよくサービスを使ってもらえるかを考えます。
つまり、サービスを利用している生活者に対して、よりサービスを円滑に利用してもらうためのコピーを考えることが、UXライティングの役目です。
では、それぞれを具体的な事例で見てみましょう。
以前NetflixのUXライティングを検証したnoteを書いたのですが、非常に多くの方に読んでいただきました。
このnoteは「NetflixのUXライティング」という括りで書きましたが、このnoteに書かれていることの一部は、UXライティングではなくコピーライティングになります。
なぜなら、Netflixを利用する前の登録フローについてのコピーだからです。
例えばこの画面です。
この画面には、次のような3つの特長が書かれています。
✔簡単登録、いつでもキャンセルできます。
✔低価格、定額でNetflixの全作品が視聴可能。
✔どんなデバイスでも見放題。
この3つの特長は、Netflix未利用の生活者に対して、Netflixの利用を促すものです。なので、これはコピーライティングとして書かれたテキストであるとわたしは考えています。ひとつの画面の中に、コピーライティングとUXライティングが混在しているイメージです。
では、それぞれの考え方についての差ですが、それがWHAT TO SAYとHOW TO SAYの違いだと思っています。
コピーライティングはWHAT TO SAYを考える、UXライティングはHOW TO SAYを考える
コピーライターがいちばん最初に勉強することのひとつに、WHAT TO SAYとHOW TO SAYというものがあります。
WHAT TO SAYは「何を言うか」、HOW TO SAYは「どう言うか」を考えることなのですが、コピーライターはとにかくWHAT TO SAYを考えろと厳しく言われます。
サービス未利用者に利用を促す上において、大切なのは何を言うかであり、どう言うかは二の次だからです。
こちらも先ほどのNetflixの事例がとてもわかりやすいです。
✔簡単登録、いつでもキャンセルできます。
✔低価格、定額でNetflixの全作品が視聴可能。
✔どんなデバイスでも見放題。
この3つの特長こそ、未利用ユーザーに対して「何を言うか」を考えた結果になります。
上記のnoteでは3つ目が「広告や追加料金はありません。永遠になし。」というコピーにさし変わっている画面も取り上げています。このように「何を言うか」を変えることで、大きくコンバージョンの結果が変わることが想定できます。
一方、コピーライティングにおいてHOW TO SAY「どう言うか」を考えるというのは、例えば「簡単登録、いつでもキャンセルできます」というコピーを「登録はとても簡単で、いつでもキャンセル可能です」のように、表現を変える作業になります。こちらはWHAT TO SAYを変えるほど結果に大きなインパクトを与えることはありません。なので、コピーライターはとにかくWHAT TO SAYを考えろと言われるわけです。
ではなぜ私が、UXライティングはHOW TO SAYを考える、だと定義しているかというと、UXライティングにおいてはWHAT TO SAYが予め決まっている場合が多いからです。
例えばこちらの記事で書いたSlackの事例です。
こちらの画像は、すべて「未読メッセージがなくなった」ということを伝えるための表現です。ひとつのWHAT TO SAYに対して、多彩なHOW TO SAYが用意されています。
このように、UXライティングにおいては、次のページに進む、申し込む、アプリをダウンロードする、問い合わせをする、エラーが起きている、など、何を言うかの部分が決まっています。そのため、HOW TO SAYを考えることが主な役割になるというわけです。
コピーライティングとUXライティングをわけて考えると、コピーの品質向上につながる
わたしなりにコピーライティングとUXライティングの違いを改めて言語化してみましたが、もちろんすべてがこのように分類できるわけではありません。
ただ、今自分が考えている言葉が、コピーライティングなのか、UXライティングなのか、を意識することで、UI/UX上の言葉をより伝わりやすく、質の高いものにできるのではないかと思っています。
これからももっと多くの人の心を動かせるようなコピーライティングとUXライティングをめざして、自分なりの気付きを蓄積していけたらなと思います。
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