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メガネとご主人


ご主人へ
僕をぞんざいに扱うご主人に心底嫌気がさしました。
ご主人がお付き合いしている康介さんは、ご主人が机に突っ伏しているときにへしゃげかけた僕を必ず助けてくれますし、ご主人が僕をその辺に放置しても、僕が踏まれたり行方不明になったりしないようにそっとサイドテーブルに移動させてくれます。
康介さんはとっても優しい人だというのにご主人は酷いです。
だから僕は康介さんのところに行きます。
今日は帰りません。
でも、僕がいなくて困ったり寂しかったりしたらまたそばに居てあげてもいいですよ。
しょうがないですからね。


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「あ、もしもし?康ちゃん、私のメガネそっちにない?起きたらどこにもないのよ。あの子ったらすぐにどっか行っちゃうんだから」


「美沙がそのへんに適当に置くからだろ?……あ、あったよ」


「よかった!今から取りに行ってもいい?」


「危ないからメガネなしで出歩かないで。僕が持って行く」


「ありがとう。でも、メガネのくせに朝帰りなんてなんだか生意気ね」




こちらはたらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただくものです。

たまたま見かけた企画が面白そうで、それでもって今回のお題が「メガネ朝帰り」
いや、妄想しか膨らまん。
どんなお話にしようかなと思ったのですが、脳内でメガネ(銀縁、華奢タイプ。少年と青年の間くらい)が喋り始めたので、今回はツンデレ系メガネとそんなメガネの気持ちには気づかない鈍感系ご主人のお話です。


ちなみに、私のメガネもよく旅に出るので、メガネを探すぼやけた視界に苛立ちながら「こういう時こそお前の出番だろ、メガネ!」と叱りつけています。
だいたいは畳まれた洗濯物の上とか本棚の中とか思いもよらぬ場所、ただし寝っ転がって手が届く絶妙なポジションで見つかります。