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モチベーションを誘発する組織とは? 【イベントレポート・ 後編】


MIXI デザイン本部 ブランドデザイン室 デザイナーリレーショングループの若狭です。

先日、株式会社インプレス主催「Web担当者Forumミーティング 2023 秋」に、弊社デザイン本部 執行役員 CDO(Chief Design Officer) デザイン本部本部長の横山義之が登壇しました。

講演テーマは「MIXIが挑む! デザイン職独自の評価指針策定と狙い」。

イベントレポート前編では、どのような思いで組織開発を行ってきたかを紹介しました。
後編ではデザイン職独自の評価指針の紹介、さらにこれらを運用していくことでどんなモチベーティブな組織へと変貌を遂げたのかをお伝えしていきます。

▼イベントレポート(前編)はコチラ



MIXIデザイン職独自の評価指針を制定するに至ったわけ

MIXIには全社員向けの人事制度があります。
全職種を網羅する制度のため抽象度が高い表現になっており、デザイン職独自の制度を作ることになりました。

さらに社会状況が変容する昨今、デザインへの期待が拡張し、マネジメントする側に負担になっていたそうです。

横山:ここ5年から10年でデザインに期待される領域が拡張し続けていたり、テクノロジーの進化でデザインの表現や演出、制作の専門性が深まり続けていたりする背景もあり、自分がやっていない領域でマネジメントや評価をせざるをえない状況になっています。

この状況はマネジメント層にとっては難易度が高く負担は増え続け、退職者が出てしまったり若手が伸び悩んでしまったりといったエラーにつながっていました。

マネジメントの負担軽減のためにも、若手が自分から成長しやすい環境を作るためにも、全職種共通の評価指標をデザイナー向けに翻訳する必要がありました。

デザインの評価指針を「視座」「スキル」「登り方」で定義

全職種共通の人事制度はG1からG6まで6つで定義しており、数字が大きくなるほどステップアップしていきます。
一方、デザイン職の評価指針はJuniorからJediまでの6つで定義しています。

今回のスライドではグレーを全職種共通、オレンジをデザイン職向けグレードで紹介

横山:デザイン職の評価指針は、(グレードごとに求められる)視座、スキル、登り方の3つの項目で構成しています。

視座は、高くなるほど見晴らしが良くなり、影響範囲を見据えて物事の本質をより理解し、デザインできるようになる力。

スキルは、高くなるほどデザインの品質や技術が向上するとともに、より抽象度の高いもの、例えば、仕組みやシステムを作るなどをデザインしていける力。

登り方は、次のグレードに上がるための階段です。1つ登れたらもう1段、もう1段と成功体験でコツをつかむ力、と定義しています。

視座と必要なスキルだけでなく、次のグレードへの登り方も定義

デザイン職向けに翻訳した評価指針6段階を紹介

ここからは現在運用している6段階のグレードの紹介に移ります。

まずはデザイン職向けのグレード6段階のうち、Junior、Young、Middleの3つのグレードの定義から解説してもらいました。

横山:Juniorは目の前のタスク、つまり作るものが決まっており、そこにアサインされて制作するレイヤーになります。
既に決まっている目標やKPIに応えるようにデザイン要件を満たすことを目指します。新卒のデザイン職はここからスタートします。

Juniorの指針とJunior からYoungへの登り方

横山:1つ上のYoungは何かを作るだけではなく、デザインするという行為を通してグループ目標にリーチすることを意識するレイヤーになります。

目標に向かうベクトルの中で、デザイン品質を追求しデザインに取り組む。これを定常的に行えるデザイン職になっていくことを目指します。
最初は周りのサポートを受けながら、自立した自走できるデザイン職になっていくフェーズです。

Youngの指針とYoung からMiddleへの登り方

横山:次に、Middleは見据える部署目標が大きくなるとともに、課題解決に向けてデザインでアプローチできるようになる、あるいは課題解決に向けてデザインの提案から実装まで責任もって遂行できるようになるレイヤーです。

ここまでできていわゆる一人前のデザイン職になります。ポートフォリオなどデザイナーの実績を積み始めていくフェーズです。

Middleの指針とMiddle からSeniorへの登り方

マネジメントかスペシャリストか?自身のキャリアを見直す分岐点

JuniorからYoungへ、Young からMiddleへ、MiddleからSeniorへ、1段ずつ階段を上っていく「登り方」。
特にMiddleからSeniorへの登り方は、今後のキャリアを考えるターニングポイントになるそうです。

横山:MiddleからSeniorへの階段は、今後のキャリアの主軸をマネジメントに置くか、デザインのスペシャリティとして組織に貢献していくかのターニングポイントになります。

日々の仕事や組織への活動以外に自身のキャリアをどちらに向けていくかは、このレイヤーあたりから考えてもらうようにしています。

これまでの改訂は9回!これからもアップデートを繰り返す

制定から2年。現在運用し続けている評価指針は今もアップデートを繰り返しています。

横山:スライドの登り方にある黄色のマーカーは、マネージャーが追加で定義して、評価指針に組み込んだものです。

評価指針はこれまで9回バージョンアップをしており、評価の時期がくる度にマネジメントチームで「適切にナビゲーションできている?」「この登り方は適している?」といった話をして日々アップデートを重ねています。


MIXIの新しい可能性を切り開く上位3グレード

続いてSenior、Master、Jediの上位グレードの紹介へと続きます。
SeniorからMaster、MasterからJediも同様にそれぞれの登り方の項目をクリアしてステップアップしていきます。

横山:Seniorは、目標の大きさがさらに広がるとともに、課題定義や課題解決に向けてデザインでアプローチができるようになるレイヤーです。

「課題を定義する」とは、目標達成のために取るべき打ち手の仮説をデータやユーザーの定性的な声や行動から推測し、デザインでアプローチできるようになる状態のこと。
それを実現していくには、デザイン部署を超え、エンジニアや企画部門など周りを巻き込めるリーダーシップを発揮し、プロダクトやプロジェクトの中心人物になっていくと定義しています。

これができるようになると、個人貢献者であればデザインリードやアートディレクター、クリエイティブディレクター、マネジメントであればMIXIでいうとデザインマネージャーレイヤーであり、市場価値の高い貴重な人材になり、仕事が業界で注目され始めるフェーズです。

Seniorの指針とSeniorからMasterへの登り方

横山:次のMasterでは、課題を発見する、例えば、事業やプロダクトが人や社会にどのような提供価値を広げていくとよいのかを考え、事業価値や企業価値を高めていくことにデザインの専門性でチャレンジしていけるレイヤーです。

チャレンジは個人ができることに限定していません。チームビルドもできて、デザイン組織がどうあるべきかのベクトルを指し示して、自ら率先して先頭を走れることが要件になってきます。

これができると、業界においても希少性の高い稀有な人材になり始めている段階で、社内においてはロールモデルになっている存在。仕事だけでなく名前もデザイン業界で注目され始めるレイヤーです。

Masterの指針とMasterからJediへの登り方

横山:最後にJediです。このレイヤーはMIXIの新しい可能性を切り開く人たちのグレードです。

デザインの専門性で経営をより多面的に強固にできるような人物であり、経営とデザインを直結させる存在であり、その活躍はデザインに閉じず全社貢献の視座に立つこと。
そして、自社にとどまらず、デザイン業界全体へ知見を還元して業界発展の循環に寄与するレイヤーです。

このレイヤーは経産省の定義で言うところの高度デザイン人材に当たると考えています。企業においてはCDOやCXOやVPoDレイヤーのデザイン責任者を想定しています。

役職とともにデザイナー個人がデザイン業界で一定の認知があり、業界ではひっぱりだこの存在になり始めている状態と考えています。

Jediの指針

横山:以上のように、マネジメントの負担軽減のためにも、若手が自分から成長して階段を登っていく環境づくりのためにも全社員共通の人事制度を翻訳する形で、デザイン職独自の評価指針を作って現在も運用しています。

「効果測定」で見えてきた組織の変貌

デザイナーは物を作れる。ただ、作って終わりではなく作ったものがちゃんと機能しているかを効果測定することがポイントだとCDO 横山はいいます。

横山:これまでお話ししてきた取組みを経て、MIXIのデザイン組織は現在まで大きく変貌をとげ、成長しています。

デザイン職の評価も大きく伸び、ここ4年でグレード別の比率も変化し、主力のMiddleが半数を超え、上位グレードを頂点にピラミッドを形成できるよいバランスになってきています。

新しいチャレンジが自然と生まれる組織へと変化

次に、成長を続ける組織のなかで新しい取組みに挑もうとするチャレンジ精神が芽生えてきた事例を紹介してもらいました。

横山:こちらは社内アワードイベントをオフライン・オンラインで同時開催したときの様子です。
本イベントでは新しい表現や技術を導入しています。

AR技術を使って会場を豪華に表現。現場はとても盛り上がりました!

横山:数年前は、僕なりマネジメントが「もっとチャレンジしようよ」と言ってやってきたのですが、今回は現場から「もっとこうしたらおもしろいんじゃない?」「エンジニアにも協力してもらってやってみようよ」といった意見が広がり、このような表現になっています。

デザインをするデザイナーが楽しんで新しいデザインにチャレンジしないと、デザインを受け取る側が楽しい気持ちや豊かな気持ちになれません。
つまり、モチベーションは最も重要な指針の一つでもあり、デザイン品質に直接的に関わってきます。

だからこそ、モチベーティブな組織を作って運用し続けなければいけない。
モチベーティブな組織を作る理由は、自分たちがデザイン組織だからでもあるといえます。

蓄積してきたナレッジはデザイン業界に還元する

モチベーティブな組織の活動は社内にとどまらず、デザイン業界へナレッジシェアを推進するなど社外にも広がっています。

横山:今期はウェブメディアに17本の記事、延べ29人のデザイン職が発信しています。この活動は今後もさらに続けていきますし、インターネットメディアだけでなく今回のようなオフラインイベントやデザイン系のイベントにも出展し、さまざまな接点を持ちながら組織活動をしていきます。

採用イベントなどにも積極的に参加しています

デザインからMIXIの事業創出を牽引していく

ここまで、デザイン職の価値の広がりによって評価指針が生まれた経緯の話をお聞きしました。
最後は今後の展望で締めくくられました。

横山:この先良い仕事をし続ける限り、今ある評価指針では物足りなくなっていきます。そうならなければデザインの価値は広がっていないことになります。

MIXIは事業会社です。会社が存在する限り、事業開発や事業運営をやめることはありません。
今後はデザイン職というカテゴリーに捉われず、事業責任者のプロダクトマネージャー(PDM)やプロダクトオーナー(PO)といった役職を作って、評価指針の「登り方」に追加できる未来を作っていきたいと思っています。

これからは事業の提供価値や体験が大事になっていく時代です。
だからこそ、デザインからももっとMIXIの事業創出を牽引していきたい。
そのためにも、デザイナーやものづくりの人たちがモチベーション高く働く場を作って提供することがCDOとしてやっていくべき仕事だと考えています。


以上、イベントレポートをお届けしました。

イベント登壇を聞いて感じたこと

私がMIXI入社後に感じたことは、モチベーションが高い人が集まっているということ。

イベント企画、動画編集、プロジェクト進行などいろんな場面でコミュニケーションが生まれ、よりよいクリエイティブを作ろうとする熱意が伝わってきます。

また、社内情報共有ツール(DocBase)を導入しており、最新のクリエイティブやノウハウ・知識を習得したら、チームやグループはもちろん、全社にナレッジをシェアをして還元する文化も活発です。

DocBaseでノウハウ共有。デザイン本部内だけでも月に40〜50本の記事が投稿されています

社内Slackでも活発にコミュニケーションが行われています。情報共有のほか、マネージャーやマネジメント層に相談が寄せられることもあります。

メンバーからマネージャーに寄せられた質問

これは、試行錯誤を重ねてきたデザイン職独自の評価指針とマネジメントチームの努力あってこそのチームワークなんだと改めて実感しました。

これからも私たちはアップデートし続けます。
いっしょに働く仲間とともに、MIXIらしい、強い組織を作っていきたいと思います!

最後までお読みいただきありがとうございました。


今回の講演内容を書き起こした記事も公開されています。
ぜひこちらもご覧ください!



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