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1-5.インタビューワークの効果

「大学生版書く力をきたえるプログラム」のベースにインタビューワークを実施したが、どんな感じでワークが行われたのかを、T先生のブログから一部転載させていただいて、紹介してみる。
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昨日から「書く力をつけるプログラム」をスタートさせた。講師はHさん。通常の講義とは無関係の、単位がもらえるわけではないプログラム。だから、多くの学生は見向きもしない。そのプログラムに21名の学生が集まってくれた。

昨日は2人ペアになって、一方が他方にインタビューをするワークをした。欠席者が2人いたので、私が入った。相手をしたのは2年ゼミ生のTさん。私が彼女にインタビューする形でワークを始めた。

Tさんにとって、いま一番の悩みは、バイト先で、年齢が上の人もいるパート、バイトの人に対して指導的な立場にたっていることだという。マイテーマ(自分という人間の真ん中にくるようなテーマ。質問シートは山田ズーニーさんのものを使ったので、ズーニー流のタームである)でもあると。

その悩みやマイテーマがでてきた背景や経緯(自分の人生軸における)についてきくと、次のような話をTさんはしてくれた。バイトに入って、ある上司から、執拗に皆、数ヶ月にわたり、叱られた。半端なしかり方ではなく、多くのバイトは辞めた。彼女も辞めようとしたが、なぜそういう怒り方をするのかを相手の立場にたって考えてみようと思うようになった。負けず嫌いだから逃げたくなかったからだとも話してくれた。

そしていま、なぜ、上司がそういう怒り方をしたかが理解できたという。半分は仕事上の立場として仕方がない、もう半分はその上司の個人的な資質に帰するもので、そういう考え方をし、理不尽な話し方、怒り方、叱り方をするものだと。後者に関しては納得しないところも多々あるけど、そういう考えの人もいるものだと自分の中で位置づけたとも。

私は思わず、「大人だね~」と唸った。

別のところで、Tさんは「自分勝手な人が、お客も含めて多すぎる」と話していた。私は、あなたのような大人の考え方をすると、身勝手な人の分まで背負い込まねばならないよね、と水を向けた。それに対して、「わかっています」と彼女はきっぱり答えた。

まだ20歳というのに、なかなか悟ることができない意識に立つTさん。凄いというしかない。

ただし、そのことが彼女にとってプラスなのかどうかは、わからない。特に生物学的な観点に立つとき。他者の問題を自分の問題として処理できる人は、大人としてりっぱな分、生物学的に無理な荷物を背負い込む危険性も高いからだ。生真面目で責任感がある人ほど、そうなる傾向がある。

私の周りをみてもそうだ。理不尽な要求や環境に対して、大人としての意識にたって対処する人が肉体的、精神的に追いつめられ、身体を壊し、時に精神を病んでいく。理不尽に他者を攻撃する方が生き残り、理不尽さに大人の態度と意識で対処する方が生き残れないのが、悲しいかな、現実の社会である。
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※T先生はプロなので、対象者の「なぜ」を掘ることに長けているというところはもちろんある。が、質問シートがあるから本人がすんなり話せ、対話の中で掘り下げることができたのではないか。
またこういう機会でもないと、こんなエピソードを先生に語るシチュエイションもなかったのではないかと思うと、今回のインタビューワークはTさんにとって、貴重な機会だったのではないかと感じる。

こういうワークをやって思うのは、私たち大人は、学生のことを理解しているようで、ちっともわかっていないのではないかということだ。

彼らは、このTさんのように、自分の思いをちゃんと持っている。言語化する機会がないだけではないか。
学生はあまり考えていないと、どこか下にみていないか。

考えていない子もいるかもしれないが、それはその時そのことを考えていないだけで、思いは何かしら持っている。そのモヤモヤした、本人も気づかないような思いに気づき言語化できる機会を増やしたい。
今回のプログラムで、私はそのことを強く思った。


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