「おもちゃ流企画術」に学んだコンセプトのつくり方/テキスタイルデザイン「私のお気に入り」の話
布・生地の通販サイトnunocotofabricさんより発売中のテキスタイル「私のお気に入り」は、ロマンティックなピンク色をベースとした、ウサギがモチーフの生地です。ウサギのシルエットに加え、リボンとブラウスを規則性をやや崩して構成すること、ブレ感のある描写をすることで、脱力感を表現しました。心がほっとするような優しい印象のテキスタイルデザインです。
こちらのデザインを制作するにあたって、自ら出したお題は
「モチーフを今年の干支のウサギにする」ということ。
「ウサギを使ってどんなデザインをつくろうか?」
そんなある日、書店で1冊の本に出会いました。
それは、アイデア発想の専門家・大澤孝さんの著書「おもちゃ流企画術」(実業之日本社)です。
鮮やかなブックデザインからも楽しい感じが伝わってきて、思わず手に取りました。
大手玩具メーカーで数々のヒット商品を手掛けられた企画のプロフェッショナル大澤さんは、アイデアを生み出す基本を以下のように定義されました。
こちらの公式を、私がこれから作ろうとしているウサギ柄に活用するべく、以下の手順に従って解いてみたいと思います。
まずは手順1「カテゴリー」を決めることですが
私の場合、予め決まっていたテキスタイルデザインに該当します。
続いて手順2「人」を決める
その商品を誰に向けたものにするか。
ここはちょっと自分だけのトレンドを盛り込みました。
私にとってのファッションアイコン、beamsスタッフのHさんです。
Hさんを「人」に取り上げた理由は、
いつも色彩豊かでオリジナリティのある着こなしをされていること、
お客さんへの気配りを感じる真摯な接客態度が素晴らしいこと。
こんな素敵な女性に私がデザインした柄を身につけてもらえたら‥!!
という私のちょっとした願望です。
ちょうどHさんからカーディガンを購入したばかりの時だったので
私にとって旬な方だったのです。
では手順3「感情」を決めるです。
この「感情」が、書籍「おもちゃ流企画術」の根幹とも言えるのではないでしょうか。
20年以上おもちゃづくりに携わられた大澤さんが
時代に合わせて大きく変化してきたおもちゃでも変わらないことがある、
と述べられています。
高性能化・低価格化の進んだ現代、
機能を高めるだけでは人の欲求を満たせなくなりました。
その商品やサービスが顧客にとってプラスに働くこと、
精神的な側面での価値が今、求められてきているのです。
まさに、おもちゃが変わらず持ち続けている「プラスの感情」が、
おもちゃ以外にも求められてきている、ということになります。
(参考箇所:おもちゃ流の考え方が、飽和した市場を打ち破る|大澤孝「おもちゃ流企画術」実業之日本社,2022,|p19-23)
では、私のテキスタイルデザインによって
beamsスタッフのHさんにどういう感情になってもらいたいかを考えます。
ウサギ柄の構想時期が昨年の冬だったことや、
いつも仕事に力を注がれているHさんのお姿から
Hさんの心がリラックスするようなものでありたいと思いました。
そうして手順4①~③をひとつの文章にまとめる(コンセプト決定)
に進みます。
ここまでをひとつの文章にまとめると‥
「Hさんの心がリラックスするようなテキスタイルデザイン」
なるほど!こうして文章にするとウサギ柄の方向性が自ずと見えてきました。そして、このテキスタイルデザインが商品としてnunocotoさんにリリース頂くことを考慮して、やや視点を上げてみました。
「おしゃれが好きな女性の心が安らぐ可愛いウサギ柄デザイン」
こちらをコンセプトに、続いては色彩や形、構成といった視覚的要素をリサーチします。心が安らぐってどんなだろ〜、こんなかな〜、と試作、検証、再度リサーチ、といったサイクルを繰り返しました。
先に挙げましたアイデアを生み出す手順に置き換えますと
5.④をもとにアイデアを出す
6.アイデアを選ぶ
にあたります。
私は5のアイデア出しに時間を費やし、そのアイデアを裏付けるウサギに説得力をつけるため、ウサギを擬人化し、こんなストーリーを設定しました。
「今日は街にお出かけ、おしゃれをしましょう。お気に入りのブラウス、ゆったりとした袖のフリルが素敵でしょう。 耳にはリボンをアクセントに、これはママのおさがりなの。」
ウサギの子どもがお気に入りのファッションアイテムを付けてお出かけする、という話です。
こうして仕上げたデザインがこちら
こちら2種類のデザインをnunocotoさんよりリリースいただきました。
テキスタイルデザイン「私のお気に入り」は「おもちゃ流企画術」の著者、大澤孝さんの知恵なくしては生まれませんでした。試行錯誤の集大成から生み出された貴重なメソッドを共有くださった大澤さんに、この場を借りて心より感謝申し上げます。私もデザインの実績を積んで、その経験から得た情報をnoteでご紹介していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた次回のデザインでお会いしましょう。
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