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大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ Vol.3:アドミニストレーション・グループの業務②「PR業務を深堀りする」

2019年1月に創業した三浦法律事務所(以下、M&P)は、今年新卒採用2年目を迎えます。

スタッフの採用活動を行う法律事務所が一定数ある一方で、法律事務所で働くスタッフの業務について知るチャンスが少ないと筆者が感じたことからスタートした本連載「大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ」もやっと3回目を迎えます。

前回は当事務所の「アドミニストレーション・グループ(以下、アドミGR)」の業務が「PR(広報)・マーケティング」「経理」「総務」「HR(人事・採用)」「IT」の5つの分野に分けられるということと、業務内容は多岐にわたるのに、なぜ分業制にしないのかーーその理由を解説しました。

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今回から、M&PのアドミGR業務の5つの柱をもう少し詳しく解説していきます。

最も力を入れているのは「PR&マーケティング」

全国に法律事務所は1万8000以上(日本弁護士連合会「弁護士白書2020」P.75)あります。最近は広報専任者を置く法律事務所も増えてきましたが、独立した部署を持つ事務所はまだまだ少数で、「法律事務所に広報があるんですか!」と驚かれることはよくありますし、企業の方だけではなく他事務所の弁護士からも驚かれることがあります。このことからも「法律事務所のPR」という業務は、まだまだ一般的ではないことを実感させられます。

これにはさまざまな理由がありますが、弁護士法で比較的最近まで広告規制がかかっていたため、広報活動に力を入れることができなかったことも1つの理由だと筆者は考えています。2000年になってやっと全面的に広告規制が解禁されたため、法律事務所のPRの歴史は非常に浅いといえます。

「法律事務所の広報活動」といえば?

「法律事務所の広報活動」と聞いて何を思い浮かべますか?ーーこれは2020年にM&Pが開催したインターンシップで全員に質問したことです。

最初に出てくるのは「テレビCMや電車内の広告」という回答です。たしかにこれも一般的な広報活動の一つですが、こうした手法を採用する法律事務所は個人のお客様を依頼者とする法律事務所が主で、M&Pのように企業法務を専門とする法律事務所がテレビCMや電車内の広告といったPR活動を行うことはまだ一般的ではありません。

M&Pの広報は事務所のブランディングに関わること全般を一手に担い、大きくは以下に分類できます。

ブランディング戦略立案・実行
Web・SNS発信
パンフレットやプレゼン資料などの監修・制作
賞レース・ランキングへの参加
取材対応
セミナー/イベント企画・運営
各種分析、企画立案
競合調査
所内広報

クライアントへの情報提供の場として、またクライアントとのコミュニケーションの場として最適なセミナー/イベントの企画・運営や、事務所が手掛けた案件の情報を収集して、海外メディアが主催する賞レースに参加するために提出資料をまとめるといったことは企業法務事務所の広報業務の定番といえます。当然M&Pでも定番の広報業務は全てカバーしています。

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写真上:2019年9月に開催した開設記念イベント「M&Pフォーラム2019」には、事務所開設からわずか9か月にもかかわらず、のべ1000人以上のお客さまにご来場いただきました。このイベントの事前準備から当日の運営、開催後の分析まですべてがアドミGRの広報業務です。

写真下:「三浦法律事務所」の名前で世に出ていく広告類はすべてアドミGR主導で制作しますし、セミナー資料や提案資料も原則としてすべてアドミGRのチェックを経ています。こうしたプロダクトはフォント・サイズ・色・色の組み合わせ、すべての要素が重要で、少しの違いでも印象に大きく差が出るためです。ブレないメッセージ・世界観を発信するためにはプロダクトのクオリティを一定に保つことも重要な仕事といえます。

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強みは「先進性」と「スタッフが能動的に提案できるカルチャー」

M&Pは「過去20年で初めて設立当初から30人以上が集まった企業法務事務所」として、業界内外から注目いただいています。設立3年目の事務所としては、高い認知度を獲得しているといえます。しかし、たくさんの法律事務所がすでに存在するこの業界でゼロからスタートしたわれわれとしては、既存の法律事務所と同じことだけをしていては不十分だと考えています。したがって、M&Pでは「伝統的な法律事務所のPR活動+新しい取り組み」のコンビネーションで積極的にPR活動に取り組んでいます。

新しい取り組みの1つとして、SNSの積極的な活用が挙げられます。最近では情報発信の手段としてTwitterなどのSNSを活用する企業法務事務所も増えてきましたが、数年前まではどちらかというとSNSの活用には消極的な業界でした。

その理由としては、「炎上リスク」や「法律事務所がSNSをやる意味があるのか」「発信するコンテンツがない」「運用する人がいない」などさまざまですが、SNS利用者の増加や「最速で情報を得る手段=SNS」という認識の高まりから、少しずつSNSでの情報発信に対してハードルが下がってきたように感じます。

M&Pでは2019年6月からTwitterを開始しています。

M&PのTwitterを運営するにあたって大事にしていることは以下の4点です。

①フォロワーにM&Pのことを知ってもらい、M&Pのファンを増やす
②フォロワーが飽きない情報発信を心がける
③過剰な情報発信はしない
④1~2割だけ事務所や弁護士の素顔が伝わる内容を発信する

SNSは「なんとなくやる」「とりあえずやる」のではなく、目的やコンセプトを明確にして運用することが大切だと考えていますし、「SNSをやる」ことがゴールなのではなく、「広報活動を効果的に循環・拡散させるパーツの1つ」という意識をもって運用することも重要です。

情報発信という点では、noteでのコンテンツ作りもM&Pの広報業務の特徴といえます。

トップダウンではない組織の強み

上で挙げたTwitterやnoteの企画は、弁護士から指示を受けて始めたものではありません。いずれもアドミGR発案で弁護士と協議しながら企画を完成させ、実行に移しています。

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2020年8月から若手弁護士にフォーカスした連載『若手弁護士「ホンネ調査」』も、アドミGRから企画を出して実現したコンテンツです。

スタッフ主導で広報戦略を考えることができる点は、M&Pの特徴であり強みの一つといえます。「弁護士がどうしたいか」はもちろん重要ですが、弁護士が考える手段が必ずしも最善とは限らないからです。

どんなものか分からないからという理由で当初は様子をうかがっていた一部の弁護士も、今では積極的にnoteやTwitterでこういうことを発信してみたいと相談してくれることが増えました。ここで重要なのは、「指示」ではなく「相談」してくれるという点です。

本業ではない広報の部分でわざわざ未知のリスクをとって新しいことをはじめる弁護士は多くないでしょうから、弁護士主導ですべての戦略を決めて、スタッフが実行するだけの組織では、新しいアイディアは生まれにくいといえます。スタッフ側からも提案し、弁護士と議論してゴールまでの道のりを決めていく。議論という場面では対等にアイディア出しができる環境だからこそ、新しい企画が生まれると信じています。

弁護士とスタッフが議論できる事務所は多くなく、多様性を重視し、弁護士・スタッフ問わず全員で事務所を運営していくというマインドが弁護士にもスタッフにも根付いているM&Pだからこそ実現できていると実感しています。

次世代の「スター」を輩出する

広報としてのゴールは「スター弁護士」を輩出することです。これは、必ずしも露出が多かったり知名度が高い弁護士を指すわけではなく、本当の意味でクライアントが信頼して相談できる弁護士、「この人に相談したい」と思っていただける弁護士を指しています。

クライアントからの信頼を得るには、まずは接点を作る必要があり、その人となりや仕事ぶりを知っていただく必要があります。このサポートをするのが広報の仕事だと筆者は考えています。

弁護士も十人十色なのでセミナー向きの人もいれば文章を書くことが得意な弁護士もいます。広報担当者として、弁護士それぞれの特性や専門性を理解し、最適な形でプロデュースすることがミッションの1つといえます。

<M&Pの広報業務:こんな人におすすめ>
事務所・メンバーのことが大好き
プロデュースすることに興味がある
アンテナを張り続けられる。新しいことにも抵抗がない
冷静に見極める力
わくわくする仕事がしたい
能動的に動くのが好き

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次回予告:アドミニストレーション・グループの業務③:「経理」「総務」「HR」「IT」を深堀りする

次回は、アドミGR業務の中の「経理」「総務」「HR」「IT」について詳細に解説します。

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Author

平川 裕(三浦法律事務所 PRマネージャー兼アドミニストレーション・グループ マネージャー)
PROFILE:大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年からファッション業界紙「WWDジャパン」の編集記者として、同紙におけるファッションロー分野を開拓する。同時にバッグ&シューズ担当としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材も行う。19年6月から三浦法律事務所のPRマネージャーを務める傍ら、フリーランスのファッションジャーナリストとしても活動する

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