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大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ Vol.4:アドミニストレーション・グループの業務③「経理・総務・HR・ITを深堀りする」

2019年1月に創業した三浦法律事務所(以下、M&P)は、今年で新卒採用2年目を迎えます。

スタッフの採用活動を行う法律事務所が一定数ある一方で、法律事務所で働くスタッフの業務について知るチャンスが少ないと筆者が感じたことからスタートした本連載「大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ」も、今回で4回目となります。

前回は当事務所の「アドミニストレーション・グループ(以下、アドミGR)」の業務最大の柱、「PR(広報)・マーケティング」について説明し、多くの反響をいただきました。この連載を読んでM&Pをおもしろそうな法律事務所だなと思っていただければ、大変うれしく思います。

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さて今回は、アドミGR業務のうち、「経理」「総務」「HR」「IT」について解説していきます。

1. やればやるほど奥が深い「経理」業務

例えば弁護士の交通費の精算をしたり、支払依頼をしたり、経理担当でなくても法律事務所のスタッフとして働いていれば、何かしら経理業務の片りんに触れる機会がありますが、経理が具体的にどんな業務を行っているのかは、経理部門の外からは見えにくいのが実情です。

筆者もM&Pに参画してアドミGRを統括するようになってから初めて法律事務所の経理業務と正面から向き合いました。そうすると、「経理」の外から見ていた景色と「経理」を業務として担当したときの景色とで、まったく異なるものが見えてきました。

【経理業務の一例】
入出金管理、明細作成
振込対応、海外送金
仕訳入力
小口現金管理
請求書のファイリング
銀行への外出
その他付随した事務処理

上で挙げた経理業務の一例をみると、「はいはい、経理業務ってこういうイメージよね」と思われがちですが、事務所のお財布を管理する経理の仕事は、上の一覧からイメージできること以上に複雑です。

入出金の管理1つとっても、イレギュラーな対応や急ぎの対応が発生しますし、事務所の規模が大きくなればなるほど扱う件数・金額も大きくなります。また、一般的な法律事務所は「企業」とは異なり、経理処理の方法も特殊な部分があります。適切な経理処理を行うためには法律事務所の組織構造を理解することが必須であり、この点が非常に難しいところだと感じます。

<M&Pの経理:こんな人におすすめ>
① プレッシャーに強い
②  正確性・ち密さがある
③ ルール整備が得意
④ 他人を説得することが得意
⑤ 問題点を発見して改善提案ができる

経理業務は”お金”というデリケートなものを扱います。取引先の信頼を失わないためにも、また事務所を健全に運営するためにもミスは許されないため、プレッシャーに強く、正確性やち密さが求められます。

また、ミスが発生しないためにも可能な限りイレギュラー対応を減らし、全員が処理方法に困らないようにルールを整備することも経理業務の重要な仕事の一つです。さらに、仮にイレギュラー対応が発生した場合も、全てを受け入れてしまうのではなく、ルールに照らして対応できないものについては、対応できない理由をきちんと説明して理解してもらう必要があります。

筆者が経理業務に携わるようになって、スタッフや弁護士が知らなかったり思い至らないような細部にまで意識を巡らせてルール整備を行わなければいけないことの難しさやおもしろさを初めて実感しました。

M&Pは設立3年目で現在も拡大中のため、拡大した規模に合わせたルール整備が必要となります。しばらくは定期的なルールの見直しの必要があるため、問題点を発見して自発的に改善提案ができる人にM&Pの経理業務を担ってもらいたいと考えています。

2. 総務の仕事は「1人の秘書」ではなく「全員の秘書」

「総務」の業務は、どんなことをイメージしますか?

学生に聞くとなじみがないのか、明確なイメージを持っている人は少ないようです。総務の仕事の中には、例えばこんなものが含まれます。

新規メンバーが増える!
→PCや机周りの備品などを手配して、業務に必要な環境を整える

オフィスのレイアウト変更や座席を変更する!
→ビル管理会社や引っ越し会社、内装工事会社と連携してプロジェクトを進行

新型コロナウイルスの対策を事務所に施す!
→抗ウイルスコーティングを実施する会社と打ち合わせを行い、どの範囲で対策するのか検討・対策の実施

上の例を見ると一見地味な部署と思われがちですが、総務の仕事は事務所のメンバー全員が快適に働くための環境づくりがミッションであり、誰かがやらなければいけない大切な仕事です。

また、書類や情報の整理整頓やベンダーとの折衝といったルーティーンワークも多いため、雑務ととらえられがちですが、実は非常に頭を使う仕事も多く、広い視野を持てなければ務まらない仕事です。

例えば座席移動の際に配線を1か所変えただけでも事務所全体が機能不全に陥ることもあり得ます。こうしたトラブルが起きないように、俯瞰的に物事を見る力が総務の担当者には求められます。

最大のミッションは引っ越しプロジェクト

2022年初頭にM&Pは大規模なオフィス拡張を予定しています。具体的には今の5倍の広さに拡張します。快適かつ洗練された”かっこいいオフィス”を目指し、弁護士とアドミGRで結成したタスクフォース(TF)とデザイン会社で新オフィス作りの真っただ中です。

オフィスを新しく作るには、まずメンバー全員で共通言語を作り上げることが重要です。例えば一口に「明るいオフィス」と言っても、日差しが降り注ぐオフィスをイメージする人、ポップな色使いをイメージする人などなど人によって感じ方はさまざまです。これを統一しなくては必ずどこかでズレが生じてしまい、プロジェクトは成功しません。

このプロジェクトにおけるアドミGRの仕事は、全員が同じ絵を描くための共通言語作りをサポートすることです。このためにアンケートを実施したり、デザイン会社とのヒアリングセッションをアレンジしたりします。

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(写真)「共通言語」を作るため、まずはデザイン会社さんによるヒアリングセッションを実施。「M&Pとは?」「M&Pらしさとは?」など、抽象的ですがM&Pの本質を改めて考える良い機会となりました

今回が初の大型プロジェクトとなりますが、今後も移転や新オフィス立ち上げなどが発生することを見越して、次回からはさらに迅速かつ円滑にプロジェクトを進められるようにノウハウを蓄積していくこともアドミGRの重要なミッションです。

ノウハウ蓄積や情報収集のためにも、アドミGRは弁護士と一緒に打ち合わせに出席することがあります。しかし、「ただ同席している」だけではノウハウの蓄積も情報収集もできません。「どういった情報を集めて保管すればいいのか」を考えながら、弁護士の指示がなくても自発的に動くことが求められます。

<M&Pの総務:こんな人におすすめ>
① 資料や情報の整理整頓、意見の交通整理が得意
②よく気が付くタイプ
③ ルーティーンワークも嫌いじゃない
④ 俯瞰的に物事を見ることができる

アドミGR全体としてもいえることですが、秘書が数人の弁護士をサポートする仕事だとすると、総務の仕事はM&Pのメンバー全員からの相談を受けることからも、「全員の秘書」としての役割が大きいといえます。

3. HRは事務所の将来を担う人材を発掘する重要な仕事

M&PのHRは、主に人事業務採用業務に分けることができます。

人事業務は、新メンバーの入所手続きや年末調整の取りまとめなどを社労士と連携して対応しています。また、最近では勤怠システムをより効率化するシステムを導入するために、導入までのプロセスを考えたり、説明会を開いたりしています。

採用業務は、スタッフの新卒採用の企画・実行、インターンシップの企画・運営、中途採用などを行っています。

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M&Pの採用業務の特徴は、スタッフに広く裁量が認められているという点です。例えば2020年に実施したインターンシップは、企画から募集、運営まですべてをアドミGR主導で行いました。「スタッフ向けのインターンで知りたいことはスタッフが一番わかっているから」と弁護士がアドミGRを信頼して任せてくれた結果、実現したのが「少人数で実施する2Daysのインターンシッププログラム」です。

オンラインで実施する企業が多い中、月1回、最大3人という超少人数で実施する代わりに対面形式で開催することにこだわりました。おかげさまでたくさんの応募を頂き、対面形式で実施した点や、秘書もアドミGRも体験してもらうために二日間にわたって開催した点などが参加者からは好評でした。

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(写真上)秘書体験では、弁護士から直接指示を受けて秘書業務を体験

(写真下)アドミGR体験では、実例を題材に「自分がM&Pの広報担当だったら」という視点で広報業務を学びました

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<M&Pの総務:こんな人におすすめ>
①「人」が好き
②コミュニケーションをとることが好き
③人を見る目に自信がある
④企画することが好き

当たり前ですが、HRの仕事は採用業務でも人事業務でも人と関わる仕事です。つまり他者に興味があって、コミュニケーションをとることが好きな人ほど向いているといえます。これに加えてM&Pが求める人材を発掘する力企画力が身につくとHR分野で力を発揮できるプレーヤーになれるのではないでしょうか。

4. ITは事務所の生命線

ITは業務の効率化や快適さを左右する大切なインフラです。リモートワークなどが推奨されている昨今の状況からもITの重要性は増しており、事務所の生命線ともいっても過言ではありません。

現在はIT担当弁護士とアドミGRが共同でIT化の施策を検討したり、事務所メンバーのIT面のサポートを行っています。また、来年のオフィス拡張に向けて、現時点のIT課題を洗い出し、より快適なIT環境を整備するにはどうしたらよいかを検討しています。

M&PではDiversity&Inclusionをコアバリューの1つに掲げているとおり、多様性を認め合う土壌があります。男女ともに子育てをしながら働いている弁護士が多いことからも、事務所設立時点で「オフィスに来なければ仕事ができない」という状況を作らないことを意識した環境づくりを行いました。この結果、新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワーク体制に移行する際にもIT面で大きな問題は起きず、むしろこれを機に、電子契約システムの導入ヴァーチャル空間に仮想オフィスを置いてみたりと、積極的にIT化を図っています。

現状はアドミGRの中ではIT業務のポーションが最も少ないですが、今後はより効率的に業務が回るよう、自前でシステムを開発するといった大きなプロジェクトが発生することが見込まれます。

<M&Pの総務:こんな人におすすめ>
①ITに興味がある
②分からないことも解決法を調べて解決しようとする
③効率化することが好き

まとめ:秘書でなければ「サポート」できないのか?

採用面接で志望動機を聞くと、新卒採用・中途採用問わず「サポートすることが好き。弁護士の近くでサポートしたい。だから秘書になりたい」という答えが非常に多くかえってきます。

確かに秘書は弁護士をサポートするのが仕事ですが、広報も経理も総務も人事もITも、すべての部門が弁護士をサポートするのが仕事だということが、この連載からお分かりいただけたでしょうか。

どういったアプローチで「弁護士をサポート」したいのかという観点から、「法律事務所のスタッフとして働くこと」について再度考えていただくきっかけになれば幸いです。

アドミGRの仕事の魅力

ここまで3回に分けてアドミGRの仕事をお伝えしてきました。アドミGR業務の幅広いカバー範囲や、事務所運営の仕組みを考えるといった業務内容も魅力ですが、秘書業務と比較したときに以下の点も魅力といえます。

① 事務所の方針を「決める場」に立ち会える。関わることができる。
→法律事務所がどのように作られていくのかを一番近くで見ることができますし、組織作りに携わることができます。

② (内外ともに)たくさんの人と関わることができる。
→秘書は数人の担当弁護士と密に関わりますが、アドミGRは所内のほぼ全員と日常的にコミュニケーションをとります。また、所外の人やクライアントとも関わる機会は多い点が特徴です。

③ 弁護士が出席する打ち合わせに同席できる
→打ち合わせの場では意見を求められることもありますし、弁護士の働く姿を間近で見ることができるのはアドミGRの特権ともいえます。

これだけ多岐にわたる業務を2021年3月現在、5人(4月から6人に増えます!)で対応しています。やりたいこと・やらなければいけないことが山ほどありますし、チームが大きくなればなるほどパワーアップしていくと信じています。そのために一緒に取り組んでくれる仲間をアドミGRは募集しています!


Author

平川 裕(三浦法律事務所 PRマネージャー兼アドミニストレーション・グループ マネージャー)
PROFILE:大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年からファッション業界紙「WWDジャパン」の編集記者として、同紙におけるファッションロー分野を開拓する。同時にバッグ&シューズ担当としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材も行う。19年6月から三浦法律事務所のPRマネージャーを務める傍ら、フリーランスのファッションジャーナリストとしても活動する。



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