義肢のヒルコ 第4話

「父さん、また、いつか会おう。俺、がんばるから」

「ああ、お元気で……皆神みなかみ蛭子ひるこくん」

漢字と読み方の情報は俺の脳へ伝わった。それさえも吸収したらしい。

「……それって、この世界での俺の名前?」

「うん、名字は皆を守れる神さまになれって意味。名前はヒルコの由来からだ」

「なにから、なにまで、ありがとう……じゃあね、父さん」

「バイバイ、皆神みなかみ蛭子ひるこくん」

こうして俺と父さんは別れた。混じり気がなくなるように。

あれから、三百年が経過した。

遠方に大きな島が見える。

あそこへ行かなければ、世界を変えられない。

俺は、すべてを取り戻す準備をしてきた。

ゆえに、そのための行動をする。

すべては、すべてを取り戻すために――。

――とある海上にて。

戦闘が発生していた。

俺と化物の戦いである。

俺は腕を構えた。

その瞬間、腕は異質な材質へと変貌し、その腕で化物を殴った。

化物は気絶した。

化物の隙を俺は見逃さない。

再び腕を構え、こぶしをつくる。

そのこぶしで化物に猛撃を食らわせる。

化物は消滅した。

腕が、ふしゅう……とうなる。

その腕から発生する蒸気は機械のようだ。

俺は力を使い果たし、海に落ちた。

俺は、かつて生まれた故郷ふるさとの地まで流されていく。

俺の思い描く理想の地へと――。

神現暦しんげんれき三〇一年。

俺がたどり着くべき舞台は日本ひのもとという国に存在する都市――広輪京《こうりんきょう》だ。

広輪京《こうりんきょう》のとある海岸の砂浜に俺は流れ着いていた。

その近くにいた緑がかった黒髪を持つ十六歳の少女――葛原かつらはら青葉あおばは俺を発見する。

(……人? なんでこんなところに人が倒れているの?)

青葉ちゃんは俺の容態を確認するために俺のもとへと駆け寄る。

(……息をしている! 生きている! でも、体がすごく冷たい。すぐに助けなきゃ! だけど、こういう場合ってどうすればいいんだっけ?)

青葉ちゃんは俺の口元を見る。みるみると青葉ちゃんの顔は真っ赤な色に変わった。

(こんなことを考えている場合じゃないのに! わたしのばかあっ!)

俺は青葉ちゃんの手で胸を何回か圧迫されたあと、口と口が接触し、空気が送り込まれ……それに気づいたのは、そんなに時間がかからなかった――。

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