きっと、この恋は永遠に実らない。第15話「割り切れない過去」
*
僕は小学校の友達|(仮)である男子たちに内緒話、要するに陰口をされたり、僕の容姿に対するネガティブな悪口を言われたり、ゴム製の縄跳びを鞭のようにぶつけられたり、僕が授業中で使う筆記用具を忘れてしまったときに男子たちは誰も貸してくれなく、僕が女子に筆記用具を借りようとするところをじっくり見られたり|(僕は顔が赤くなりやすく、異性に対する反応を男子たちが僕を見て真っ赤になるところを観察したりして面白がっていた)したり、メリーゴーランドみたいにグルグル回る――一歩間違えば死んでしまうような――遊具|(回旋塔というらしい。現在では、ほとんど撤去されている幻の遊具であるらしい)で、無理やり理由づけ|(おまえさあ、サキちゃんのこと好きだろ? 好きじゃなかったら回転する遊具で激しく回転するくらいに回ってこいと、言われて回ったりした。僕が嫌な思いをしながら回り終わった後、男子たちが陰口で、あんなに必死になるってことはさ、やっぱり、サキちゃんのことが好きってことだよな、という感じの言葉をニタニタ笑いながら僕に聞こえるように言って、僕を複雑な気持ちにさせた)されて遊ばされたり、冬の季節になると雪合戦で標的になったりした。
結論から言うと、僕は弱者に成り下がっていたのだ。
さらに両親、特に父から――。
「――物の貸し借りは、いけません。物の貸し借りはトラブルの元です――」
――実際に小学校の友達|(仮)のリョウちゃんが。
「なあ、少しだけ、あのゲーム機を貸してくれよ。……えっ? タケちゃんの父親が物の貸し借りは許さないって? はあ?」
納得しないような表情をして。
「……大丈夫! 大丈夫だよ! そんなに毎日監視している親なんて、この世に存在しないって! 絶対に……ばれないって! 大丈夫だって! だからさあ、頼むよ、まじで。友達だろ?」
僕に、ねだるのだけど。
「すみません、うちの子が……ご迷惑をおかけしました。うちでは家の決まりで物の貸し借りをしてはいけないことになっています。私は教育者、教師として、生徒同士の物の貸し借りでトラブルが起きたことを何度も見てきました。大体なにもわからない純粋無垢な子ども同士で物の貸し借りを行うなんて考えただけでも……ぞっとします。ぞっとしませんか? お宅は……。だから、お宅の……リョウちゃんにも言って聞かせてあげてほしいのです。物の貸し借りは、よくないと」
リョウちゃんが、その出来事を小学校の友達|(仮)たちに話すのだけど、やっぱり僕の印象は、どんどん悪くなっていった。
物の貸し借り事件――誰も得しない結末になってしまった|(特に僕のダメージは大きい)。
それでも僕は、長い付き合いになる友達を見つけることができた。
名前はセウくん。年齢は僕より一つ上で、僕と同じ地域に住んでいる。
なんで友達になったのかというと、授業をする教室が同じになったからである。
それぞれの一学年が所属しているクラスの人数が少なすぎたから、同じ教室で時間を過ごすことになった。
それが縁となり、セウくんの家で電子ゲームをする毎日を送るようになったのだ。
僕の家では電子ゲームをすることに時間制限が課せられており、自由にプレイすることができなかった。
だからセウくんには感謝している。
電子ゲームの本当の楽しみを教えてもらったから。
僕を友達として認めてくれたから。
――だけど。
それでも僕は同い年の友達|(仮)と仲良くしたい。
そんな思いがあった。
だから、小学校の四年次に小学校の友達|(仮)の男子五人が所属しているミニバスケットボール部に入りたいと思った。……というか、実際に入った。
みんなと同じになりたい。
セウくんもミニバスケットボール部に所属しているし、入ってもいいよね?
――でも。
「なんで入ってきたの?」
……と、小学校の友達|(仮)に言われ、親指を下に向けられたり、中指を立てられたりした。
……つらい。
こんな毎日が田舎での生活が当たり前のように続くと思っていた。
僕が他県の小学校に転校することが決まったのは、小学校の四年次が終わる時期になったくらいのことである。
*
僕が他県の小学校への転校が発表されたのは、小学校四・五年生の教室の中だった。
周囲の人たちは、それを見て、聞いて、どう思ったのかは知らないけど、人口密度が小さい田舎で転校する人が出てくるなんて意外に思ったはずだ。
僕だって意外だと思ったが、父が教師の決まりで二年間、大学院に通わなければならないルールがあることを僕に教えるまで、転校することは必然だったように思える|(まあ、母と田舎で二人暮らしをするという選択もあったのだが、父と母は離れたくなかったのだろう。僕は、その巻き添えを食らったというわけだ)。
僕の転校が発表された後、セウくんが描いてくれたオリジナルの漫画をプレゼントされた。
それより、もっと喜んだのは小学校の友達|(仮)もとい小学校の友達である同級生が、自分たちの声を録音したカセットテープをプレゼントされたことである。
カセットテープの内容は、ものすごい奇声と、ものすごく雑なオリジナルの音楽の入ったものであった。
僕は、うれしい思いを胸にしまい、友に別れを告げ、転校していった。
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