この物語にオチはない@メイド喫茶(短編小説)

「おかえりなさいませ、ご主人様っ!」
メイド服姿の女の子が満面の笑みで出迎えてくれた。
フリルのついたエプロンドレスに、頭にはヘッドドレスを付けている。スカート丈は短く、足も太ももから大胆に露出している。そのスカートは膝上20センチぐらいだろうか。ニーソックスとガーターベルトが絶妙な絶対領域を作っている。
そんなかわいらしい女の子の姿に、思わず胸が高鳴る。
(うおおおおっ! かわいいよこの子!)
心の中で絶叫する。
ここは秋葉原にある某有名メイド喫茶だ。
俺は今、この店の常連客として、週に2回ほど通っている。そう、俺はオタクである。
アニメや漫画、ゲームなどが大好きで、暇さえあればそれらを嗜んでいる。
そして今日は、このお店でお気に入りのメイドさんが出勤すると聞き、やってきたのだ。
彼女は俺の1つ年下で、名前はエミリちゃん。明るくて笑顔がとても素敵な子だ。
「ご注文は何になさいますか?」
エミリちゃんがメニュー表を差し出してくる。
そこには様々な料理名が並んでいた。オムライス、カレーライス、ハンバーグ、スパゲッティ……等々。どれも美味しそうだが、俺が今日食べたいものは決まっていた。
「じゃあ、この『萌え萌えキュン』ってやつを頼むよ」
「かしこまりました、ご主人様! では、少々お待ちくださいね♪」
そう言うと、エミリちゃんは笑顔で去っていった。
彼女が去ってからも、俺はドキドキしていた。
だって、あのエミリちゃんに接客してもらえるんだよ? しかも、あんなかわいい子に。
こんな嬉しいことはないじゃないか。しばらくして、エミリちゃんが再び戻ってきた。
その手にはトレイを持っており、その上にはお皿が載っている。
どうやら、料理を持ってきてくれたようだ。
「お待たせしました、ご主人様っ! こちら、萌え萌えキュンです!」
そう言って、テーブルの上に皿を置く。
皿にはハート型のクッキーが載っていた。
これが噂の萌え萌えキュンか。どんな味がするんだろう。ワクワクしながら、まずは一口食べてみる。
サクッという食感とともに、口の中に甘さが広がる。
これは……美味しいぞ!
「どうですか、ご主人様?」
「うん、とっても美味しいよ」
「ありがとうございます♪ 嬉しいです♪」
俺の言葉に、エミリちゃんは満面の笑みを浮かべる。
ああ、なんていい子なんだ。
それからしばらく、俺とエミリちゃんの会話が続いた。
他愛もない世間話をしたり、趣味の話だったり、好きな漫画やアニメについて語ったり……。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
やがて、店内に閉店を知らせる音楽が流れ始めた。
もう終わりの時間か……名残惜しいけど仕方ないよな。
「そろそろ時間なので、お会計お願いします」
「はい、わかりました! それではこちらにどうぞ!」
席を立ち、レジへと向かう。
すると、そこで予想外のことが起きた。
なんと、エミリちゃんが俺の手を取り、ギュッと握ってきたのだ。
突然の出来事にドキッとする。
「え、えっと……」
「えへへ……また来てくださいね、ご主人様♡」
上目遣いで俺を見つめながら、甘い声で囁く彼女。
その表情はとても色っぽく、思わず見とれてしまう。
「あ、ああ……もちろんだよ」
動揺しつつもなんとか返事をすると、エミリちゃんはニッコリと笑って手を離した。
そのままお金を払い、店を出る。
帰り道、俺はずっと彼女のことを考えていた。
(かわいかったなぁ、エミリちゃん……)
まさか、手を握ってくれるとは思わなかった。
正直言って、すごく嬉しかった。まるで恋人同士になったような気分だった。
また今度、ここに来ようかな。今度は別のメニューを食べてみたいし。
そんなことを考えているうちに、家に到着したのだった。
そうだ、またエミリちゃんに会いに行こう。そうしよう。
俺は新たな決意を胸にベッドの上でティッシュを広げて、メイド姿のエミリちゃんを思いだし、いわゆる自家発電をおこなうのだった――。

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