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3つの好きな映画|道を辿り、風景を紡ぐロードムービー[コンパートメントNo.6、SOMEWHERE、セントラルステーション]

言葉にすること、考えること

自分が気になっていること、ぼんやり思っていること、曖昧なこと。そんなことを、きちんと言葉にしていきたいなぁ、と。ネットで調べれば答えが出てくることじゃなく、もっと捉えどころのない、ふわふわ漂っている、とっても感覚的なことを、見つけて、掴んで、言葉にする。

言葉にすることは、考えること

考えることは集中力もいるし、疲れるし、時間もいる。でも、その過程で生み出された言葉は、本やネットで見つけたものではなく、自分のもの。ひょっとしたら、何の役にも立たず、利益をもらたらさないかもしれないけど、純度100%、自分オリジナル。

考えるためには、情報を遮断する。調べればいくらでも情報が溢れてくる世の中で、どれだけ情報を忘れるか。外に意識を向けて、表層的な知識をかき集めるのではなく、自分の内に耳を傾けて、掘り下げる。自己の内面の旅に出る。

なんでも知っているより、なんでも考える
いつも考えて、いつも言葉にする

自己の内面へ、旅をする

旅といえばやっぱり飛行機

道を辿り、耳を澄まし、風景を紡ぐ

「家に帰るまでが遠足です」といえば、小学校でお決まりのセリフなんだけど、ロードムービーの醍醐味は、旅の目的地に着くまで。ということで、ロードムービー3選。ヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュが有名だけど、それ以外にもいい映画は盛りだくさん。

道を辿り、変わりゆく風景を見つめながら、自己の内面に耳を澄ます。旅を通して、前向きになれる。美しい風景と、希望をもたらすロードムービーは面白い。

他人への憧れをやめ、自分の人生を生きる
今この瞬間を大切に、未来へ歩む
旅の出会いで、自分が変わる

直近に迫る巨大な飛行機


コンパートメントNo.6|ロシア

他人への憧れから、自分の人生を生きる

1990年代。モスクワに留学しているラウラは、世界最北端の駅へ向かう寝台列車の旅を恋人にドタキャンされてしまう。ひとりで列車に乗り込んだラウラが6号コンパートメントで乗り合わせたのは、粗野な炭鉱夫のリョーハだった。言葉の通じないふたりの旅が始まるが……

北極圏にある世界最北の街へ向かう寝台列車の旅。偶然の出会いと見知らぬ人との会話。ロードムービー好きなら、もうたまらない。男性の粗暴な振る舞いと、それに困惑し怯える女性の関係性を描き、ロシアとフィンランドの複雑なお国柄を表現する演出がとてもいい。

旅に大切なのは、たどり着くまでの過程

旅の目的地はあまり重要ではない。列車の中での偶然の出会いと、心に刻まれる小さな瞬間の積み重ね。車窓から流れていく風景で物語が紡がれ、到着する時にはもう答えは見えている。通過する駅の暖かい灯り、青白く冷たい雪の光。車窓から差し込む光の色で心象を表す映像も最高に美しい。

最低の言葉が 最高の言葉に

ここしかないいいタイミングで映画が終わる。自分の心の声に従い、自分の人生を生きる。その大切さを教えてくれるロードムービー。


SOMEWHERE|ロサンゼルス

今しかないないこの瞬間を噛み締める

タブロイド紙を頻繁に賑わす俳優は、ハリウッドにある伝説的なホテル、シャトー・マーモントで暮らしている。フェラーリを乗り回し、女性にも事欠かず、ふわふわと漂うように毎日を過ごしている。そんな中、前妻との間にできた11歳の娘が、不意に現れる。娘と過ごす時間によって、自分の現状を見つめ直し始めるが…

孤独と退屈に沈む日常に、母の元で暮らす娘が現れ、多幸感に包まれる日々に様変わりする。でも幸福な時間は、あくまで限定的。娘がサマーキャンプに行くまでの間だけ。最初から「別れのエンディング」が決められている。とてもロードムービー的な映画。

ゲームで無邪気に遊びながらも、父親に愛人がいることもなんとなく気づいている。子供から大人に成長してく11歳の少女にしか出せない雰囲気も相まって、一見すると単調な日常が、いかに当人にとってかけがえのないものか、シーンを重ね訴えかける。

誰かが、必要としてくれるということ
それだけで人は、独りではなくなる

ラストシーンで父親は歩き出す。どこに行こうとしているのか、全く分からない。でも、歩き出したことに意味がある。前妻との関係はきっと、元には戻らない。でも、自分が変わろうともがく姿をみせるラストに希望が見える。

どこかへ行きたくてもどこへも行けない虚無が
どこでもいいからどこかへ行こうとする希望へ

SOMEWHERE


セントラルステーション|ブラジル

母親を亡くした少年と代筆屋の老女の成長物語

ひねくれ者で怒ってばかりの老女と母に先立たれた少年が父親探しの旅に出る。リオ・デ・ジャネイロの中央駅。代書業を営むドーラのもとに、息子を連れた女性が夫への手紙の代筆を依頼にきた。ところが手紙を書き終えた後、その女性は事故で死んでしまう。仕方なく父親を探しに、一緒にバスで旅に出るのだった。

代筆業という仕事が成立するところに、まずカルチャーショックを受ける。未来への希望もなく、人も信じられず、騙し騙し生きてきた女性が,子供に出会い変わり始めていく。

心を解きほぐす、ブラジルの田舎の美しい風景

荒涼とした砂漠、広大な山並み、見たこともない祭り、人種民族の多様性などなど、ブラジルの、抒情的な風景を通して、丁寧に老女と9歳の少年の心情を描く。最後に、母親違いの兄を見つけ、目的を達成する。

字の読めない兄に代わり父親からの手紙を読み、子供に気づかぬうちに家路に帰る。普段化粧をしない彼女が口紅をつけワンピースを着て、長距離バスに乗って映画が終わる。

子供を通して、大人の成長を描く

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