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小さな旅・思い立つ旅|自然と向き合う 祈りの空間[頭大仏、狭山の森礼拝堂、猪名川霊園]篇

梅雨明けとともに蝉の初鳴き

自宅の前に小さな公園があり、毎年クマゼミが朝からシャアシャアシャアシャアと大合唱。あと少しであの鳴き声が目覚まし代わりになると思うと憂鬱になってしまう。。

子供の頃過ごした出雲では、蝉といえばアブラゼミジリジリジリジリと威勢のいい鳴き声をたよりに、日中追いかけ回したのが幼少の思い出。

山間部に出掛けた時に出会うのはヒグラシの声。カナカナカナカナと響き渡る涼しげな声で、家に帰る夕暮れ時を教えてくれる。

都市の朝、地方の日中、山間の夕暮れ

蝉の声は、自然と向き合える日本の夏の風物詩。
これから夏本番。お盆に向けて、祈りの空間を巡る建築の旅でもどうでしょう、という話。

祈りの場、祈りの行為

一年の初めは初詣で神頼み。一年の終わりは除夜の鐘で煩悩祓い。建物を建てるときは地鎮祭でその土地の神様に許可をもらい、ご飯を食べるときは「いただきます」と手を合わせる。

宗教とは縁遠いと言われる日本でも、祈る行為は自然と暮らしの中に溶け込んでいる。

では、祈りの場にふさわしい建築とは?

静謐な場所、感覚が研ぎ澄まされる空間
日常から非日常への移り変わり
視線の制御と身体性
のゆらめき、で揺れる木漏れ日
四季の移り変わり、刻々と変化する光と影

そんな祈りの空間で強く印象に残っている建築を3つ。北海道、埼玉、兵庫と場所もバラバラで、どれも辺鄙なところにあるけれど、一度は行ってほしい祈りの建築旅


頭大仏 安藤忠雄

札幌にある真駒内滝野霊園の頭大仏は、これからの季節がとてもおすすめ。霊園だけど、観光客も訪れる有名な場所。

ラベンダー畑から大仏の頭が、、

遠くからみても大仏の顔は見えない。見えないことで想像力が喚起される。
すべてはラベンダーの中に埋まっている。

暗いトンネルの先に大仏。それでも顔は見えない
天空から降り注ぐ光と大仏の顔

大仏の足元まできて、ようやく大仏の顔が見える。

広大な平地にあれば遠くからでも見えるので、わざわざ近づく必要がない。覆い隠されることで、自然と大仏に意識が向き歩を進め、徐々に祈りの空間へと入っていく。人の行為を誘発するとてもいい建築

遠くからでもよく見える以前の大仏


狭山の森 礼拝堂 中村拓志

所沢の狭山湖畔霊園にある礼拝堂。霊園と森の間に建ち、樹木と一体となった建築。

アルミ鋳物の鈍く光る屋根と寄り添う樹木

人も祈り、建築も祈る

手を合わせてお祈りする時にできる、手の中の小さな空間をそのまま建築にしている。木を立てかけ合う合掌造りの建物。そして、三角形の窓から森を見る。

構造材でもあり、仕上げ材でもある木の合掌造り
樹木に寄り添う建築

床は祭壇側に僅かに傾き、床石の目地は森の奥の消失点に向けて伸びていく。訪れる人は無意識のうちに、自然と森の彼方に引き寄せられて祈りを捧げる。

半眼とよばれる坐禅の時の視線を再現し、
風景をあえて全開で見せない休憩棟もおすすめ


猪名川霊園 デイヴィッド・チッパーフォールド

兵庫の山の中。建物全体がひとつの岩の塊のように見える赤土色のコンクリートの建築。

斜面に沿った大きな片流れの屋根が、自然と山上の霊園に意識を向けることになる。最小限の暖房と照明で、刻々と変化する光が建物の内部に入り込む。

磨き上げたコンクリートの床とサンドブラストのザラっとした風合いの壁と天井
刻々と変化する光、四季を感じる静謐な空間
お祈りしているつもりの末っ子


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