デンマークのインクルーシブ教育に学ぶ

日本の教育改革をしたいと思ったときに、海外の教育で素晴らしい取り組みを学びたいと思うのは必然。

「ゆりかごから墓場まで」社会福祉や教育に力を入れてる北欧諸国の中でも、インクルーシブ教育に力を入れている、デンマークのエグモンドホイスコーレという学校の取り組みについて、現地デンマーク人の教師が来てお話をしてくれるという企画に参加してきた。

https://miniegmont0223.peatix.com/?lang=ja&fbclid=IwAR06j6W4CWBHbf1luOMYD2pNgx8ua2rmdi-2h2eHZAU0o_ygACjfTYLBZt0

インクルーシブ教育って、何だっけ?という方。私もあまり聞き馴染みがなかったのだけど。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321668.htm

上のURLの文科省の説明によれば。

障害者等が積極的に社会参加・貢献していくために、初等教育等から障害のあるものと障害のないものが共に学ぶ仕組み。

らしい。

「障害者等」としてるのは、他にも「国籍や人種、宗教、性差、経済状況、障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもたち」という意味も包含してるからみたい。

まぁよく会社とかでも最近言われるダイバーシティーを実現するための教育ってことなのかな。

エグモンドホイスコーレでは、インクルーシブ教育の中でも、障害者というカテゴリーに特化して、障害のある生徒、ない生徒が一緒に過ごすことで、お互いに良い効果が生まれることを期待して作られた学校だ。

生徒数は250名程度。(年齢は18〜22くらいが大半。)うち4割は障害者らしい。残りの6割の生徒は健常者で、必ず複数人でチームを組み、障害のある生徒の世話をする。(正確には、お金をもらい仕事として障害ケアをする時間が週に20〜30時間くらい、授業を受ける時間が20〜30時間くらい。授業中は原則として教育アシスタント的な大人がつく)

授業は完全選択制で、心理学、料理、体育、アウトドア、経済学、その他色んな授業がある。

特徴的なのは、それらの授業を障害者も一緒に受けるので、どうやったら、健常者も障害者も一緒にその授業を楽しめるか(=主体的に参加出来るか)ということを、常に健常者の生徒(+先生)が考え行動することが求められるということ。

また障害者の生徒も、障害の程度に応じて、何に困っていて、どう助けて欲しいのか、具体的に周りに言えるように考えなきゃいけないし。また、助けられる立場(日本だと迷惑をかける立場的な意味合いが強くなるかもだが)であることを自分で受け入れ、卑屈にならずに、ただ「ありがとう」と感謝の気持ちを持つこと、そして、障害者であっても出来ること(喋ること、周りを明るくユーモアを言うこと等)を常に考えるようになる。

そうすることで、この映画「最強のふたり」 の世界のような関係でチームの気持ちが一つになり、これまでいろいろなことを諦めて生きてきた障害者が、周りの助けを借りて、何かを出来るようになる瞬間に立ち会い、健常者もまた、人の可能性や挑戦してあきらめない大切さ、そして人に助けを求める大切さ、助け合う大切さ等を学ぶのだという。

実際のエグモンドホイスコーレの映像がこちら。

ヤコブ君という重度障害の子が、入学後もどんどん病気が進む中で、生きているうちにやりたいこととして、北ヨーロッパ最高峰の雪山に登ることを決意。それを周りのサポートを得て、先生の指導の元、めちゃくちゃ準備して、そして実際に最後は生徒だけでヤコブを連れて、山頂に登り切るストーリー。

見ているだけで涙が出る。完全にドキュメンタリーだが、ドラマよりもドラマチック。

ここで過ごした障害のある子は幸せだろうなー、そして同じくここで過ごした健常者たちは、優しく強くたくましく世界を変えていくのだろうなーと思った。

今回の企画授業の休み時間に、受講者と「普段は何されてる方ですか?」「どこでこの企画を知ったのですか?」 「どういう問題意識をもって参加されているのですが?」みたいな話をしていて。

受講者全員と話せたわけではないので網羅はされていないが、カテゴリー的には、教師(特に特別支援学校教師)や、教師になろうとしている大学生やその親、その他実際にデンマーク留学を考えている障害者とその親等が多かった。(私みたいな社会人で働きながら、教育興味持ってる人は少なめかな。当たり前だけど。笑)

日本ではどうしても、ひとクラス40人の生徒を一人の先生が見なきゃいけないので。その中にインクルーシブ教育として、障害者の生徒が入るということが難しく。結局特別支援学校という学校で学ぶしかない。

しかし、そんなに多く特別支援学校があるわけでもないし、その子達は社会から隔離されてしまって、同じ年代の子と遊ぶこともない。

そうすると社会でそうした障害の子たちと関わった経験のない大人が増えるので、障害者の人たちがハード・ソフト含めて暮らしづらい世の中が待っている。(一部ユニバーサルデザインとかは進んでるところはあるが)

そういう課題意識をもった特別支援学校の先生とかは多かったかも。

ただ、実際に日本にそれをどう取り入れるの?というのは、教師不足も問題となっている現代の日本ではなかなか難しそうだなーという気がした。

一方、私が可能性を感じたのは、一つはボーイスカウト、もう一つはやはり職場である。

ヤコブ君の北ヨーロッパ最高峰の山登頂なんて、まさにボーイスカウトのメンバーの中に障害者がいたら、やってることは、まさにアウトドアそのものなので、安全性をどう担保して、親をどう絡めるかとか色々課題はあるけど、インクルーシブ教育を実現する場としては、ありえる選択肢だなと思った。

あとは職場。
これはたまたま以前労働組合の仕事をしてるときに、当時の委員長の紹介で見せてもらった映画で。

日本一幸せな従業員をつくる〜ホテルアソシアの挑戦〜という映画があって。

まさにここで行われていたのは、障害のある子と、障害のない子が一緒のホテルで働き、そうすることで、仲間に迷惑をかけたり、時にお客様にクレームを言われることもあるけど、仲間がそれをフォローし、守り、優しい職場を作っていき、その優しさがお客様にも伝わり、コアなファンを作っていく。それにより、赤字経営だったホテルがV字回復をしていく。そんなドラマだ。(ちなみに今はホテル経営をたたんでいるのでありません)

このV字回復をさせたホテル経営者が、労働組合の出身の柴田秋雄さんという方で。本当に仲間のために、お客さまのために、社会のために、何が良いのかを考え尽くし、ホテル経営なんてやったこと無かったのに、その優しさとアイデアで、従業員の心を鼓舞し、最幸の経営をされた。(柴田さんは82歳でまだご存命のはず)

こういう職場本当に素敵だよなー、経営はノウハウやスキルじゃないんだよなー、と組合活動している20代の頃強く思ったのを覚えている。

だから、何ていうか。
障害者って、もちろん、親にとっても周りにとっても、あるいは本人にとっても大変だし、生きていくのが大変だし、どうしても周りのケアが必要だし。出来れば障害のない子が生まれることをすべての親は願う訳だけど。

なんかエグモンドホイスコーレとか、ホテルアソシアとか見てると。障害のある子に、社会が周りの人がちゃんと向き合うことで、そこに優しさが生まれ、人間がエゴに走らないように、神様がギフトとして世の中に下さっている、そんなような気もして。

だから特別支援学校とか、そんな分断した世の中を作っちゃいけないのだよなと思ったのだ。

また同時に、こういうインクルーシブ教育をするために、かかる費用(車椅子代やケアする人にかかる費用)をちゃんと国がもつ、とか、あるいは団体が国から引っ張るというのは、とても大事なことで。

もちろん、国におんぶに抱っこだと、経営が不安定になるので、良くないけど。

でも、ちゃんと国が正しい方向にお金を使うように、行政からお金を引き出すというのは大切なことだなーと思った。

またその活動をする団体は、障害者が生きるミニマムな暮らしのための活動ではなくて。

ヤコブくんのようなクレイジーな夢(ヨーロッパ最高峰の山に登る)を実現する、まで活動の幅があっても良いよなーと思った。

それはワガママではなくて、本来人が、健常者、障害者に関わらず、もつ夢の一つで。それを実現することで、社会が優しくなるなら、それはそれで意義のあることだから。

障害者が、障害の重度にかかわらず、普通に夢を追うってなんかいいな、と思った。

今は不登校児も増えていて、障害がなくても、普通の学校に通えない子が増えている。

そしてどんどん日本は「普通の子」と「そうでない子」を分けて、効率的に教育する仕組みを残そうとしているけど。

本来は逆で。
どうやったらインクルーシブに、すべての子たちが幸せに生きる社会を実現するか、を小さい頃から考えていかないといけないのだよな。そうしないと社会がどんどん優しくない方向に行くから。

そういう大切なことを学んだ一日だった。
(受講料はちと高かったけど。まぁデンマークから3人来ている渡航代と宿泊費と考えたらまぁしゃーない。苦笑)

以上










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