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【木曜radio】 vol.4 ロマンチックなSFのはなし

 梅雨と在宅生活の閉塞感に自律神経をやられてしまって久々の投稿となってしまいました…

 ステイホームがはじまってから、これまであまり興味を持ってこなかったジャンルことSF(サイエンス・フィクション)に惹かれるようになり、いろいろ読んだり観たりしてみようかな〜と思っているので今日はそのはなしです。

なんでSFなのかというと、たぶん、この「疫病の蔓延する世界」が異世界っぽすぎて現実とは思いたくないからだと思う。

SFって現実に起こり得そうであるけど決して起こることのない事象、を取り扱うものだから逆に安心できます。なぜなら絶対に現実にはならないから。

それなのに、なんということでしょう。未知の伝染病が蔓延する世界なんていかにもSFの設定であるのに、現実になってしまっているではありませんか!

おそろし…それならいっそ、SFの世界に逃げ込んだ方が安全です。

そうです、これは安全な逃避なのです。


■SFの宝箱 テッド・チャン『息吹』

『あなたの人生の物語』が2016年に「メッセージ」というタイトルで映画化され世界的に名前が広がったテッド・チャンの短編集です。2019年発売。

タイムトラベル、自由意志、AI、パラレルワールド、創造説などSFのメインテーマがちりばめられている作品集で、どれも本当に質が高くとっても面白いです!

収録作品と概要は以下のとおり

■「商人と錬金術師の門」
…過去を変えたい商人が、相対性理論と矛盾しないタイムマシン(ワームホールの門)を持つ老人と出会う。アラビアンナイトの枠組みを使って語られる物語。

■「息吹」
…空気が命の源であり永遠の生命が続く世界で、自己解剖する科学者。われわれの記憶や意識のメカニズムはどうなっているのか、なぜ時計がいっせいに早く進むようになったのか。避けられないエントロピー増大にどう向き合うか。

■「予期される未来」
…ボタンを押す1秒前に光る予言機が発売された。人間に自由意志はあるのか。

■「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」
…発展した仮想環境で「ディジエント(ディジタル生物)」を訓練することになったアナとデザイナーのデレクは次第にディジエントたちに愛情を抱くようになる。AI育成がたどる未来を描いた中編。

■「デイジー式全自動ナニー」
…子育てをするマシンに育てられた子供たちはいったいどのように育つのか。

■「偽りのない真実、偽りのない気持ち」
…生活を24時間365日ビデオ記録するライフログという新しいテクノロジーが巻き起こす悲劇。自分の記憶はどこまで信用できるものなのか。

■「大いなる沈黙」
…宇宙のどこかに知的生命体は存在するのか。フェルミのパラドックスを題材とした作品。

■「オムファロス」
…「何もないところから神はこの世界を創造した」
創造説があたりまえに信じられている世界で、この常識が揺らいでいく。

■「不安は自由のめまい」
…並行世界の自分と会話できるプリズムという機械が発明される。無数の未来があるとき、人間の道徳はどのような意味を持つのか。

読み進めるのがもったいなくなるくらい、どれも傑作です。わたしは「商人と錬金術師の門」「不安は自由のめまい」が特にお気に入り。


■人間に自由意志はあるのか Netflixオリジナルドラマ『ダーク』

原発のあるドイツの小さな町ヴィンデンで男の子が失踪したところから物語がはじまり、同じ町に住む4家族3世代に渡る因縁が描かれます。

次第に事件が33年前の同じような失踪事件とつながっていることに気づいて…というお話。全部で3シーズン、完結済みです。

シーズンを追うごとにどんどん筋が複雑になり、理解が難しくなっていくのですがダークな世界観と物語哲学──「過去が未来に影響を与えるだけでなく、未来も過去に影響を与える」「始まりは終わり、終わりは始まり」──に惹かれて一気見してしまいました。

1953年、1986年、2019年の3周期をメインに話が進んでいくのですが、だんだんすべてがつながってくるのが面白いです。すべてがループしていきます。例えば未来の自分が現在の自分に忠告しにきた、ということは、どのみち未来は確実にそうなるということを意味します。避けたかった事態を避けられたら、未来から自分がやってくることもないので…
どうあがいても同じ結末の地獄ループにはまってしまう登場人物たちが、このループを解きみんなが幸せな世界線を達成するために超がんばるドラマです。

近年おこなわれているさまざまな研究結果は、自由意志など存在しないという結論を出しています。すべての運命があらかじめ決まっている、としたら人間の自由意志はいったいどうなるのか??
このドラマは量子力学的な多世界解釈をベースにした物語だと思いますが、自由意志や決定論にもいろんな考え方があってとても面白いテーマです。


■いつになったら車は空を飛ぶのか

 近未来都市のイメージには必ず空飛ぶ車が登場しますが、なかなか実現しませんね。やっぱり難しいのでしょうか。技術的に?

<これからチャレンジしたい映画>
・未知との遭遇/スティーブン・スピルバーグ
・アノン/アンドリュー・ニコル
・月に囚われた男/ダンカン・ジョーンズ
・ブレードランナー2049/ドゥニ・ヴィルニーヴ
・バック・トゥ・ザ・フューチャー/ロバート・ゼメキス

リモート飲みでSFの話をしたら友達が勧めてくれた映画です。ステイホームどころか惑星単位で3年も隔離されているって尋常じゃないですね。いまだとその恐ろしさがよくわかります。気が狂いそう。

 9月に公開予定のクリストファー・ノーラン監督の『テネット』もとても楽しみです!時間のルールを覆す、みたいなところがテーマだとか。
あと、小説では『三体』がすごく面白いらしいのでちょっと読んでみたい気がしています。

広大なSFの世界に逃げ込んで、引き続きこの現実をやり過ごしていけたらいいな…と思っている今日この頃でした。



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