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出張編集部にマンガの持ち込みをしてみた【関西コミティア】

こんにちは、漫画家/イラストレーターのタソです。
今回は念願だった出張編集部へのマンガの持ち込みをしてみたので、そのレポを綴りたいと思います。

持ち込みってよく「ボロクソに言われて心が折れた」なんて聞きますよね。

めちゃくちゃヒヨって数日前からお腹が痛くなっていた私ですが、当日はなんと予定していた3社を大幅に超えて6社もまわれました。

マンガを持ち込んでみたい人、出張編集部がどんなところか気になる人、エッセイマンガでも持ち込みしていいのか悩んでいる人など、持ち込みの勇気が出ない人は是非ご覧ください。


出張編集部とは

各出版社の編集部がイベントに集まり、プロの編集者に作品を見てもらえる場です。
来られている出版社や編集部はその時のイベントによって変わるので、自分が持ち込みたい編集部があるか事前にチェックが必要です。
ちなみに各地域のコミティア(一時創作同人誌即売会)や、COMIC CITYなどに来られているそう。

持ち込みしたキッカケ

先日、KADOKAWAさんが開催されている「コミックエッセイプチ大賞」に作品を応募し、一次審査を通過しました。
その時いただいた講評に「トピックの面白さに惹かれるものの、ページ数の短さからそれ以上の評価に結びつかなかった。」との記載が。

うん、わかる…たくさんの作品を講評されてお忙しいのはとてもわかる…!!!
でも他に良かったところは!?逆にもっと直したら良いところはどこ!!??
私は商業出版するためにどういうことを意識していけばええんや~~~!!??

良かった部分が「トピックの面白さ」しかわからず、それ以外の良かったところやもっと改善した方が良いところなど、プロの編集者から見た「自分の作品の良し悪し」をもっとちゃんと知りたい!と思ったのが、出張編集部に持ち込みをしょうと思ったキッカケです。

持ち込みのために用意したもの

・見てもらいたい作品
・作品が入る封筒
・ペン
・ノート
・名刺
・iPad

見てもらいたい作品は必須。
その他は状況に応じて必要になります。
編集さんからのアドバイスをメモしたい場合はペンとノートは持っていきましょう。

iPadは他の作品を見てもらえるような話になったら、作品を表示するために出そうと思っていましたが、使う機会はありませんでした。

よくわからん!という人は、とりあえず作品さえ持っていけばなんとかなります。

持ち込みした作品

今回持ち込みしたのは、この4つです。

■売れないアイドルがファンが欲しくてメイド喫茶に潜入した話


■プロフィール漫画
こちらの冒頭の4ページ。


前世が見られるサービス「インナージャーニー」を体験した話


クリエイターEXPO用に作ったパンフレット


マンガ作品はどれも実体験を描いたコミックエッセイです。
メインで見ていただきたかったのはメイド喫茶の話。
最初の4ページは先に描いていたのですが、今回出張編集部で見ていただくために、20日間で続きの54ページを描き下ろしました。

それ以外は以前描いた短編作品になります。

それでは実際にいただいたコメントをまとめていきます。

1社目

エッセイメインではないものの、現在連載中のエッセイ漫画の取り扱いがある会社だったので1社目に行ってきました。
エントリーシートに商業執筆希望、添削アドバイス希望とコメントを書いたうえで見ていただきました。

以下編集さんからのコメントです。

テンポが良く楽しめる。リアルに描かれていて知らないことを知れた。
しかし商業だと経験だけを描くのでは足りない。
いかに経験したことをフィクションとして作っていけるかどうかが肝。
よりヒットを目指すには、続きが気になって読み進められることが大切。
一発ずつは楽しめるマンガだが、続きを読みたい感じではないので意識していかなければならない。

図星~~~~~~!!!!!
今回描き下ろした54ページは「Twitterで読者の間口を広げる」ことを意識して描いたものだったので、「続き」よりも「1話ごとのキャッチーさ」を大切にしていました。
(それができているかは置いといて)

商業で描くとなると、長く読み続けてもらえないと話にならない。
ちゃんと続きも意識して描かないと。
でもこれは「ほとんどが1冊完結」なエッセイ漫画だとどうなんだろう。
そのあたりが気になるところです。

ちなみに続きを意識する以外でも勝負するやり方があるそうで。

「続きを読みたい」以外で勝負するなら、強い魅力を持つキャラクターがいることが大切。
キャラクターを好きになることで、読み続ける読者もいる。

だそうです!!
エッセイで魅力的なキャラクターとは…!!
どれだけ盛るか、尖ったところをどれだけ突出させるかということでしょうか…!!

最終的には

どういった作品を武器にしていくかが見えない。
ヒロインを応援したくなるのか、ストーリーで見せていくのか、どちらでいくのか。
わかりやすい今っぽいキャラクター設定や、キャラの魅力の深堀り、尖りを意識すること。
エッセイより経験をもとに創作として作る方が売れるよ。

とのことでした。
ここまでは「なるほどな~」と思いながら聞いていたのですが、その後ちょっと色々厳しいお言葉もいただきまして、私は1社目にして心が折れそうでした…(笑)
涙がちょちょぎれるぜ…!

でも今日は3社はまわると決めていたので、ひとまず2社目へGO。

2社目

こちらもエントリーシートに商業執筆希望、添削アドバイス希望と書いて見ていただきました。

あっさりしていて、マンガは上手い。
オタク向けとしては新鮮さに欠けるが、逆に50歳向けだと知識欲が掻き立てられるのではないかと思うので、載せる雑誌によって大きく変わると思う
アイドルがメイドをやるというと一般的には似たような系統だと思われるので、「〇〇だけど〇〇」のようなギャップをつくることで、もっとドラマや面白さが生まれるのではないか。
またそういったギャップなど、本の帯などに書かれた文字面でどれだけ目を引けるかが大切。

とのことでした。
こちらではプロフィール漫画もしっかり読んでいただけたのですが、掴みがバッチリで面白いと絶賛していただけました…!
メイド漫画だけでは弱いが、プロフィール漫画とあわせて読むことで面白さが増すとのお言葉も。
過去の経歴が特殊な方は、プロフィール漫画を作るのはありかもしれません。

ちなみにこちらの編集さんには、なんと名刺をいただけました…!!
クリエイターEXPO用のパンフレットが良かったようで、エッセイ漫画はうちでは扱えないけど、何か企業さんからのお仕事があれば相談しますとのこと。

こういうこともあるんだなぁ…!
なんでも持っていってみるもんだなぁと、ギリギリにパンフレットをカバンに突っ込んだ自分を褒めてあげたい気持ちでいっぱいでした。

3社目

こちらもエントリーシートに商業執筆希望、添削アドバイス希望と書いて見ていただきました。

知っていることばかり描いてあるので面白味がない。
情報の伝え方や漫画の描き方で読みにくいところはないが、何も起こらない。
現実ベースにしすぎなので、「メイドってそんなに素敵なの?」ともっと読者に思わせられないといけない。
「主人公が何を思ったか」が弱いので、話の展開ではなく、その人なりの世界の見方やあまりマンガにされてこなかったことがエッセイでは大切。
また、エッセイは読んだ人が作品から受ける気持ちも大切。
言語化して、読者が今までうまく言葉にできなかったことを代弁するイメージ。
大切だけど気付かないことを描くのがエッセイ。

自分で精一杯「面白おかしく」描いたつもりだったので、面白味がない、何も起こらない、というコメントに衝撃でした…!
そうか、メイド喫茶のことを知っている人が読んだら「あるある~」の共感だと思ってたけど「面白くない」ってなる人もいるのかと。

その後のお話は大変勉強になるお話で、自分のエッセイ漫画で弱いところをズバリ指摘いただいたなという感じでした。

このあたりで「編集さんによって全然言うことが違う」と気付き始めました。
本当に三社三様でアドバイスの内容が違っていて面白いです。
本来はここまでの3社を回って終わる予定でしたが、急遽回れるだけ回ってみることにしました。

4社目

こちらもエントリーシートに商業執筆希望、添削アドバイス希望と書いて見ていただきました。

エッセイの読者が求めているのは、感情移入や追体験。
読んでいてスカッとする「ざまあみろ」と思えるような作品。
今回の作品は「自分」が出すぎていてメイドが弱いので、もっとメイドの裏側やアイドルとメイドの違いを客観的にどう描くかどうか。
マンガとしてもっと面白おかしく表現するために、本当8:ウソ2くらいに盛っていくといい。
また自分自身と「タソ」というキャラクターを切り離し、エッセイではあるがあくまで「タソ」はマンガの登場人物として描き、彼女の目を通して見えたところを描いていくといい。

自分と「タソ」を切り離すという視点が目から鱗!!
つい「自分の視点」に意識がいっていたけど、「タソというキャラクター」と客観視することで見えてくることも色々ありそうです。

5社目

こちらはエッセイのイメージはない編集部だったため、添削、アドバイス希望とのみ書いて見ていただきました。
かなりじっくり読んでいただいた気がします。

さらっと最後まで読めた。
面白いし上手くてタッチも完成されているので、あんまり言うことがない!

その後もしばらく褒められまくり、これまでの編集部とのあまりの違いに思わず「今言ってくださったコメントって甘口ですか?」と聞いてしまうほどでした(笑)

「商業執筆希望」って書かなかったからかな。なんて思ってましたが「甘口なわけではなく、純粋にエッセイが好きでよく読むんです、面白いです」とのこと。
なるほど、初めてここまで褒めてくださる編集さんに出会えたぞ!

その後、しいて言うなら…と何点かアドバイスをくださいました。

読者は設定を忘れがちなので、「なぜメイドになりたかったのか」の動機をもっと読者に意識させていくといい。
またエッセイは読みやすさが大切なので、タテのコマワリが続くと読みづらくなってしまうので、たまにタテを使うのはアリだがなるべく横で見せた方が良い。
画面がトータルバランスで見て白めなのでもっと描き込んでも良いのではないか。

ここまでずっとストーリーやキャラクターにフォーカスしたアドバイスだったので、マンガのテクニックについて聞けたのが新鮮だったし勉強になりました!
あとたくさん褒めてくださったので、なんかとても元気が出ました(笑)
やっぱり褒められるって、大事。

6社目

こちらはエッセイのイメージはない編集部だったため、添削、アドバイス希望とのみ書いて見ていただきました。
こちらの編集さんもじっくり見てくださいました。

このへんになるともうイベント終了間近、編集さんも疲れてきてるのかなんだかテンションがおかしめになってきています。
「ぼくエッセイわかんないんですけど~~~~!!」と言いながらもアドバイスをくださいました(笑)

キャラ設定が弱く、それぞれのメイドをもっと掘り下げると広がりが出る。
観察力を磨き、人の面白いところをもっと見つけていくと◎。
淡々とやりすぎているので、もっとギャグを入れた方が楽しめる

ギャグ…ふんだんに入れたつもりだったんだけどな…!!(笑)
個人的には顔芸もギャグと思っていたのですが、顔芸ではなくストーリー的なギャグで魅せろということなのでしょうか(講評を聞いていた時に「えっギャグ少ないの!?」と衝撃で、それ以上突っ込んで聞けなかったのが悔やまれます…)

ちなみにこちらの編集さんは、プロフィール漫画を読みながら何度も噴き出していました。
やはり過去の経験が濃いので掴みが良いらしいです。
今日これ言われたの3回目くらいだな…と思いつつ、これからもプロフィールは前面に出していこうと誓いました。

持ち込みしてみた感想

実際に持ち込みしてみて、編集の方によって言うことが全然違っていたり、逆に同じことを指摘されたりということもありました。
これがもし1社にしか見ていただいていなければ、そこで言われたことをすべて鵜呑みにしてしまったり、ガッチガチに凹んで帰ってきていたかもしれません。
持ち込みは1社に限るのではなく、数社持って行ったほうが「本当に自分に足りないもの」が見えてくるかと思います。

また今回見てもらった作品はエッセイでしたが、エッセイをメインに取り扱っていらっしゃる編集部が来られていませんでした。
エッセイ系の編集部に見ていただけていたら、また違ったコメントをいただけているかもしれません。

とにもかくにも、「プロの編集さんからの目線」を知れたのはとても勉強になりました。
ここから「自分の作品に活かすべきところ、活かしていきたいところ」を整理して、スキルアップしていきたいと思います。

出張編集部に持ち込みしようか悩んでいる皆、数社回れば怖くない…!怖くないぞ…!!


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