2021東大物理対策シリーズ C60分子干渉のお話(前編)
受験生の皆さま、こんにちは。2020年11月25日(水曜日)、本日も私と一緒に物理を勉強する楽しいお時間がやってまいりました。
本日は物理の問題演習はお休みにして楽しいミニコラムの日にします。
脳みそを休める日をつくることも大切です。
🌟 お試し読み用として記事の途中までを無料公開しています。
【2021年度 東大物理 第3問のゆくえ】
東大物理の第3問はギャンブルです。(ですよね?)
熱力学 or 波動(または超大穴の原子) のどの分野が出題されるのか毎年業界関係者を悩ませます。
裏ではこうどなじょうほうせんも繰り広げられているようです。
ブックメーカーもしのぎを削ります。
個人的予想としては2021年度東大物理第3問は波動がくるのではないかと考えているのですが、もしかしたら意外にも原子がくる可能性もあるのではないかと心が揺れ動いており、今年も非常に悩んでいるところです。
こんな感じで日々悶々とした生活を送っていたわけですが、
もしかして熱力学+波動+原子のトリプルコンボ来ちゃう?
とハッとひらめきまして、
業界で未出題の「C60分子干渉」が意外と狙い目かも?
との結論に至りました。
このようなわけで今回と次回の2回にわたってC60分子干渉について熱く語ることにしました。
※ 東大理物院生時代にC60分子干渉をテーマとして簡単な学内セミナーをしたことがありますので、その時に使用したppt資料をベースにお話しいたします。
※ 高校生の皆さんにも理解できるようにppt資料は適宜編集しました。
【C60分子干渉のお話(前編)】
それではC60分子干渉の楽しいお話のはじまりはじまり~。👏👏👏
ウィーン大学のマルクスらのグループは
量子力学が支配するミクロの世界と我々が日常生活を営んでいるマクロの世界の境界はいったいどこにあるのか
に興味を持ちました。
電子は波動性を持つことは分かっています。だったらもっと大きなものだったらどうなるのかな? 本当に波動性を持つのかな? と考えたわけです。
まぁ、確かにそれは私もそう思います。
皆さまもそう思いますよね? (迫真)
皆さまおなじみ、2重スリットのヤングの実験です。
光で干渉パターンを作るのはご存じのとおりで大学入試物理のテッパンですが、光だけでなく電子でも干渉パターンを作ります(電子の波動性)。
見た目は明らかに「つぶ」の電子でも「波」として干渉パターンを作るのは世界仰天ニュースですが、電子は超小さいのでミクロの世界の住人ということで百歩譲って干渉するのはOKといたしましょう。
それでは電子みたいな超小さいものではなく、もっと大きなものではどうでしょうか? 果たして干渉するでしょうか?
たとえばサッカーボールではどうでしょうか?🤔
・・・え? 無理っぽいですって?
確かに。
私もここまで大きいものでは干渉は無理のような気がします...
それではこちらの“サッカーボール”ではどうでしょうか?
巨大分子のフラーレンC60です。これは干渉しそうでしょうか?
C60っていったい何ぞ?という高校生も多いと思いますので簡単に説明いたしますと、C60とは炭素原子が60個集まってサッカーボールのような構造をしている巨大分子です。ごろんごろんしてるイメージです。
C60はクロトーらによって世界で初めて合成され、ハフマンらによって大量合成法が開発されました。
本題からは少し話はそれますが、ここでフラーレンC60の合成について簡単に紹介します。
クロトーらによるC60合成の成功後、さまざまなグループがクロトーらによるC60合成法を改良してC60の大量合成を試みましたが失敗の連続でした。クロトーらによる合成法は職人技であり、この合成方法でC60を大量合成するのは現実的ではなかったみたいです。
世界中の物理屋さんが悪戦苦闘をしている中、ハフマンらは「抵抗加熱法」によってC60の大量合成に成功しました。真空中で炭素棒を加熱して蒸発させるだけという非常にシンプルな方法です。シンプル思考が功を奏したという良い例です。
抵抗加熱法の発明によりC60の大量合成が可能となり、比較的容易にC60を入手できるようになりました。お値段もとてもお安くなりました。
1gでお値段たったの300000円の大バーゲンセールです。お安いでしょ?
※ 個人の感想です。
さて。話を戻して本日の本題のC60分子干渉実験の話に移りましょう。
実験装置のセットアップはこのようになっています。
この実験には多くの困難が伴うことが予想されます。C60で干渉実験をすることくらいは誰でも思いつきますが、それを実際にやるのは超大変です。
<実験の難しさ>
1. どのようにC60を用意してスリットへ入射させるか?
2. 回折格子はどうするか?
3. どのようにしてC60を1個ずつ検出するか?
<解決策>
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