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娘夫婦、家を建てる⑤〜テープカット編

皆さんは人生でテープカットをしたことがありますか?

娘夫婦の家がついに完成して引き渡しのセレモニーが行われた。引き渡しとは聞いていたが、まさかそんなセレモニーがあるとは驚きである。まるで何処かの何かの施設が建設されてオープニングセレモニーが行われるような感じである。だって、テープカットとかあるのよ。テープカットですよ。ははは。笑っちゃう。人生でテープカットをする機会があるなんて、娘夫婦もなかなか稀有な経験ができたものだ。

テープカットって普通は建物の外でやるものだ。テープカットと聞いて、これからご近所さんになる方々にそれを見られるのは、何となく恥ずかしいような気持ちだった。いや、テープカットをするのは私じゃないけどね。ところが当日家に行ってみると玄関あたりにはテープカットの準備がなされていない。あれ?ご近所の目もあるのでやっぱりテープカットはやらない方向になったのかな?それならそれで別にいいんだけど、と思いつつ部屋に入った。

あった。テープカットの準備がしてあった。そこは娘夫婦こだわりのデッキ。そこにちんまりと可愛らしいテープカット器具が置かれていた。「あ、ここなんですね」と娘夫婦も思わず声に出して言った。きっと娘夫婦もどこでテープカットをするか聞かされていなかったのだろう。2人は緊張の面持ちでテープカット器具の前、いや後ろ、まあとにかくこっち向きに立った。住宅メーカーの担当者さんの声を合図にジョキッ。見事にテープカットは終了。

そしてそのあと担当者さんから家の鍵を渡される。それも超デカいやつ。ほら、よくサッカーとか野球の試合でMVP選手が車をもらう時に渡される、あの大きな鍵。アレだ。テープカットといい、超大きな鍵といい、一般人ではなかなか経験のできないセレモニーだった。

私は自分で家を建てたことがないので「家を建てる」という、人生における最も高額な買い物の経験がないということだ。結婚した時点で旦那さんのお父さんが建ててくださった家があったから。とてもありがたいことだ。10年ほど前に、台所とトイレのリフォームをした時、家に自分の意見を取り入れる機会はこれが人生最初で最後かもと思った。台所にもトイレにも私の意向が色濃く出た。

娘の新居には、娘のこだわりが色濃く出ている。家そのものが高額な買い物であるゆえ、普通なら使えないような金額をシステムキッチンや照明器具に使う。何千何百何十万の下のほうのケタの金額が少々増えることには鈍感というか。金銭感覚がおかしくなっている様子が伺える。

それでも頑張って働いて自分たちで支払っていくのだから、気に入るようにすれば良いと思う。自分がやりたいことが叶うのは娘にとってとても幸せなことだし、こだわって作った家ならきっと大切に使うだろうし。

そして私はちょっとだけ娘が羨ましいのである。

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