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ストーリーよりキャストが気になるって本末転倒なのかな?〜映画『沈黙のパレード』感想文なのかな?


まずエンディングの話からするってのも本末転倒だけど、KOH+の新曲に乗せて流れたのが今までのガリレオシリーズの思い出の名場面集みたいで「ん?」ってなった。確かに、このシリーズも長く、最初の頃の福山雅治さんはそりゃあもうカッコいい。今もカッコいいけど、本作の中で例えば向こうから歩いてきて「やぁ!」って感じで手を上げるシーンとか、なんかサイボーグっぽくてちょっと笑っちゃった。昔は「やぁ!」なんてしないようなキャラだったから、湯川先生もいろんな人と関わることで大人になったのだ、きっと。それはさておき、私は何年も前に原作を読んではいたが正直そこまで詳しく覚えていなかったので知らないのと同じと思ってくれていい。その私が最後の最後まで飽きずに観られたという、これはそういう映画だ。


いやそんなことよりも、私はやっぱり福山さん、北村一輝さん、そして柴咲コウさんの3人が揃っているのが一番しっくりくるなぁってあらためて思った。福山さん、いや湯川先生も相手が内海(柴咲さん)だと安心している感じがある、そこが嬉しい。私はニヤニヤしてしまう。


本作の事件は北村さん演じる草薙が、過去に捕まえられなかった犯人を追う話。湯川先生とは親友の間柄だが作品が長く続けば演じる俳優さん同士にも役柄そのままの空気感が感じられる、そこも嬉しい。周りの俳優さんたちもなかなか“出来る”人が揃っていた。田口浩正さん、椎名桔平さん、檀れいさん、吉田羊さん、飯尾和樹さん、戸田菜緒さん、岡山天音さん、村上淳さん。


つい先日テレビで放送されたスペシャルドラマの犯人役が村上虹郎さんだったが、村上さん家は親子で重要な役を担ってる。しかも上手い。ホント、すごい。そうそう、山田孝之さんのドラマに村上淳さんがご自分の役で出演されていた時、“村上淳といえば首吊りをスタント無しで自分でやるマジですごい俳優さん”という位置付けだったが、役のためにはそういう訓練もしてそうなストイックさは若い頃も今もありそうだよねって勝手に思ってしまう、そんなイメージ。

お笑い芸人さんがドラマや映画で結構重要な役で出演されるのを見ると、世の中には沢山、俳優さんと呼ばれる人たちがいるにも関わらず何故わざわざ芸人さんを使うのだろう?とわりと思ってしまうほうなのだが、飯尾さん、邪魔してなかった。ただ、飯尾さんの娘さんたち(もちろん役の上での)が2人とも美人なのを見て「あぁ、娘さんたちはお母さん(戸田奈緒さん)に似たんだねー」っていらんことを考えてしまった。そういう意味では邪魔してたか。


で、今回一番書きたかったのは、酒向芳さこうよしさん。私が酒向さんを認識したのは福山さん主演のドラマ『集団左遷』で、福山さんの上司バンカー役。どんどん立場が悪くなっていくエリート役、そのやられ方が見事だった。憎まれ役というのは、やられた時に視聴者が快哉を叫びたくなるくらいに憎まれてなんぼだと思う。酒向さんにはそれがあった。そのあと『最愛』では行方不明の息子を探す執念深い父親役、これも見事だった。バンカー役とは打って変わって、見すぼらしいジャージ姿の汚れ役。この人に睨まれたら逃げられないんじゃないか、そんな恐怖心さえ抱かせるくらいの迫真の演技だった。からの、『インビジブル』では、高橋一生さんの同僚役。この頃には酒向さんの役の振り幅を体験してしまっていたので、「この人、絶対裏切る」って勝手に裏切り者フラグを立てていたが、結局最後まで裏切らず良い人のままで拍子抜けしてしまった。最早、出演しているだけで、何かあるんじゃないかと思わせてしまう存在感のある俳優さんなのだ。その酒向さんが、本作でもやってくれた。どちらかというと『最愛』の時のような、ぱっと見が冴えないおじさん役。作業着姿を見ただけで、ギリギリの生活をしていることや、社会や家庭などとは縁遠い人生であることも伺える。警察で事情聴取を受けるシーンも圧巻、ホントのホンモノかと思えるくらいの、ホンモノ感。何を言ってるかわかりにくいと思うけど、見てもらえればわかる。そしてそういう言わば社会とかけ離れたところで生活をしているような人が、誰かのことを思って理性を働かせている、なんて私たち視聴者は思いもよらない。「この人が出てきたら何かあるんじゃないか」と思っていた俳優さんが出てきたのに、そのビジュアルや仕草に騙されて「何かあるんじゃないか」ということを考えもしない、それどころか「この人に、何もあるわけない」と思わせる、そんなミスリード。脱帽です。


一緒に観に行った長女いわく、小説で「このセリフ(シーン)良いなあ」と思っていても映画を観たら使われてなかったりするから、だから原作を読んで映画も観て、というのは正しい楽しみ方なのだ、と。私はそれプラス(KOH+みたいに言ってますけど)キャストのいろいろを楽しみたい。



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