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他人だけど身内、身内だけが家族じゃない〜テレビドラマ感想文


当たり前だった日常が何かをきっかけに思いもよらない展開で崩れてしまう‥映画やドラマでもよくある設定。

例えば朝普通に出かけて行った旦那さんが仕事先で倒れ意識をなくした状態で再会する事態になってしまった妻。家にはボケかけている義母、自分勝手な義妹。これからどうなるのか不安にかられている時に現れる旦那さんの愛人、しかも複数。どうなるのかとハラハラしていたら、なんと、自宅で看護することにした旦那さんのお世話を、愛人にも手伝って欲しいと持ちかける妻。これにはビックリ。
でも、自分ひとりでは出来そうにないことも、誰かと分けっこしたら負担も分けっこで、喜びは倍増するって証明された。お互いへの感謝も生まれた。歪なカタチだけど、これも家族だ。だから、家族の要だった妻が病気と知ると、皆が「家のことは心配しないで」と言い「今までの恩返しをする機会をください」と言ってくれた。それってもしかしたら妻がいない間に愛人に家を乗っ取られるんじゃない?って、そういう展開も不倫ドラマならアリなんだけど、この場合そういう心配は無用。私たち視聴者もこの人たちが家族であると認めてしまっているから。だから泣けた。妻は常に男前で、それでも時々自信がなくて、好きになった人の前では乙女。好きになった人には子どもがいる。子どもとも仲良くなれてる。だけどやっぱり本当のママには負けてしまう。どんなにひどいママでも子どもにとっては大好きなママ。だから泣けた。やっぱり血のつながりも大事なんだと視聴者に思い出させる出来事。
擬似家族と、ホンモノの親子。両方の絆を1話の中に盛り込んできた。


“2人組が苦手”を共通点に仲良くなった男女4人。毎回4人の“これまで”の中の、どこがどううまくいかずに拗らせてきたのかをグルグルと吐露するような展開に少し飽き始めていた私。年長男性のあざと可愛さもちょっと気になり始めた。面白くなくはないけど、誰にも感情移入出来ずにいた。そこに登場してきた、4人の共通の知人。4人の生きづらさを淡々と描いてきたが実は彼女のほうが過酷な人生を歩んできたと分かった。それぞれが出会った時期に、その時その時で苦しみの中にいた彼女のことを、4人は一対一の、自分の知っている彼女のことだけしかわからないが、視聴者は全員と関わった彼女の苦しみを見せられた。だから泣けた。彼女の登場で4人の絆はさらに深まり、逆に彼女自身は“大勢でいるより2人が好き”だと言う。ドラマの半分以上を費やして“2人組は苦手”を軸に展開してきたのに、ここにきて“2人が良い”と。2人の時は、相手は自分のためだけにそこにいる、それが良いんだと。そうくるか、そうきたか。やっぱりこの脚本家はすごいってあらためて思う。


同性カップルの日常に多幸感を感じてしまう金曜日の夜。毎回登場するお料理も楽しみ。でもアラフィフ同士の悩みや不安もある。家族の理解もその一つ。今や家族は2人を、というより息子の個性を認めているが、シーズン2になってからはパートナーに対しての期待値や信頼度も上がってきた。一方の両親は息子とパートナーが同じお墓に入るのはどうかと提案してくれ、一方はもしも息子に何かあった時にパートナーがただの友人としてではなく大切なパートナーとしてその場に立ち会えるようにと案じてくれていた。最初は受け入れがたかった事実も、結局子どもの幸せを願う親の気持ちには何も変わりはないというところを見せてくれた。だから泣けた。


他人だけど身内みたいに付き合える相手もいれば、身内でも他人みたいに遠く感じることもある。


先週は私の固定観念と涙腺がかき乱された週だった。


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