見出し画像

“家族で美術館”のススメ①〜大好きなジャーニーのジャーニーを辿るジャーニー


月曜日の夜、好きなテレビ番組がある。毎回次女と一緒に観ている。

こんな人いるんだ
こんな場所あるんだ

私の人生の世界線では出会えないであろう、“みとんの知らない世界”が繰り広げられる。知らないから楽しいし、知れて嬉しい。その番組こそ

「クレイジージャーニー」

である。クレイジーなジャーニーを紹介する番組である。人気番組なので番組に登場したジャーニー(旅行者)さんたちのトークイベントが行われたり、グッズが発売されたりしている。

ではジャーニーさんたちの何がクレイジーなのかというと、たとえば、

・未開の洞窟を求めて世界中を旅するジャーニー→人ひとりがやっと通れる岩間を登ったり水中を進んだり、見てると怖い

・曰く付きの物(呪物)を集めてる人→部屋中に心霊グッズが溢れている、そういう人のもとにはそういう物が集まっててくるらしい

・世界中のマフィアについて取材してる人→外国人が行かないようなスラムやマフィアが牛耳っている街を取材

・珍しい蟻を求めて世界中を旅してる人→ただただ蟻が好き。何十時間も蟻の引っ越しをずーっと見てられる人

・少数民族の実態を取材してるカメラマン→“郷にいれば郷に従え”方式で警戒心をといて笑顔を引き出す

・世界の“食”を体験→日本では動物園にいるような動物の肉や干物が普通に市場で売られてたり、“口噛み酒”風な物が出てきた時は見てて思わず「ウッ」と‥

などなど。ここに出てくるジャーニーさんは皆目をキラキラ輝かせている。以前読んだ本の一節、私が今も時々思い返す大切な一節を思い出す。

だって好きって大切やんな。(中略)自分の好きになるものをはやってるとかいないとか、お金になるかならないかみたいなことで選びたくないなと、ずっと思ってきた。

『水を縫う』(寺地はるな)より


そう、皆好きなのだ。好きで好きでたまらなくてその道を極めちゃった人ばかりなのだ。

その中で私が一番好きなジャーニーが、

佐藤健寿さん。

世界中の奇妙なものを対象に撮影しているカメラマンさんだ。見たこともない奇妙な銅像や廃墟、時には奇祭。佐藤さんはそれらを『奇界遺産』と名づけた。

その佐藤さんの作品展が米子市美術館であるって知って、次女とすぐに話がまとまった。ちゃまは?ちゃまも行くかな?絶対興味無いと思うけど、たまには家族でお出かけも良いんじゃない?
最初は「行かない」と言っていたちゃまだったが、そのうち「みとんは地図が読めんから着いてってやろうか?」と言い始め、「仕方ない、行くわ」となった。(実はこれ、想定内)

こういうのは長女も好きなやつ。誘ってみたら「行きたい」と言う。家族4人、これが最後かも知れないなと密かに思っていた。誰かがいなくなるってことではなく、長女は長女の家族がいるし、次女だっていつまでも私たちに付き合ってばかりいられなくなるだろう。4人で車でお出かけは最後かもって。
そう思ってたら、前日になって長女の旦那さんとお孫ちゃんも行くことになった。結局車は2台に分乗。お孫ちゃんとのお出かけは大変だけど楽しみ。私のおセンチな感情は誰にも知られることなく消えた。


朝6時半に出発。渋滞を回避するためと、美術館の開館時間10時に間に合わせるため。長女宅は毎朝お孫ちゃんが5時半から起きているので余裕。我が家も意外と朝は強い人ばかり。天気予報は午後から雨マーク。美術館以外の予定は無いので特に問題ない。
行程途中、高速道路が対面通行の箇所が何ヶ所もある。それで渋滞が起きやすいのだけど、GWにしては道路が空いていた。空いてるね、良かったねと言うと

「早く出て良かっただろ。な」

と、ちゃまがドヤ顔をするので「はい、はい」と応じる。
途中にトイレ休憩を挟みながら、お孫ちゃんもいるので無理のないタイムスケジュールでゆったりと進めていくも、到着したのは開館30分前。美術館の前に広いスペースがあって、お孫ちゃんは走り回れるし、私たちはベンチでお喋りしながら開館を待つ。そうこうするうちに徐々に人が増えて開館の5分ほど前には入場が始まった。入り口で係員さんからお孫ちゃんへの注意事項が読みあげられるが、お孫ちゃんは知らん顔。そりゃそうよ。2歳児にあれダメ、これダメは通用しない。なのでこれは、子どもから目を離すなよ、という親に対しての注意だろう。

展示室は1階、2階合わせて4部屋。
“居住”、“廃墟”、“構造物”などテーマごとに写真が並んでいる。


居住”はそのタイトル通り、世界の珍しい居住スペースを紹介するゾーン。世界で唯一の洞窟の中にある村とか。上から見るとドーナツ形になっているマンションは香港映画とかに出てきそうだし、砂漠の真ん中にポツンとある街のライフラインはどうなってるんだろう?なんて余計な心配をしてしまう。エスキモーの家族は氷の上でアザラシの生肉を笑顔で食べていた。居住スペースは生活が見えるだけじゃなく、自然環境や歴史や文化まで伝えてくれる。

廃墟”ゾーンには日本の軍艦島摩耶観光ホテルが並ぶ。まるで映画のセットやアニメの世界かのようなレッド・サンズ要塞プレシデオ・モデーロ刑務所、デザインがカッコいい。これらが実際に使われていた施設だと思うとあまりに現実味が無くて不思議な気持ちになる。

奇景”は燃え続ける溶岩湖や、氷河の下にある洞窟。科学的根拠はあるにしても、何故それがそこで発生したのか。鍾乳洞や滝を見るのが好きな私は自然のなす現象の不思議に感動する。

構造物”はちょっと楽しい。変なテーマのホテルとか公園とか。なんでこんな物を作ったの?と思わず問いたくなる。マトリョーシカホテルのような可愛いものや、奇天烈で不気味な石像が並ぶ公園などなど、わけのわからないものたちが世界中に溢れている。

習俗”は宗教色が強い。私が住んでいる県の裸祭や、恐山のイタコ、北朝鮮のマスゲームもこのゾーン。マレーシアで行われるヒンドゥー教の奇祭は、まんま『インディージョーンズ〜魔宮の伝説』の世界。洞窟で繰り広げられるあのシーン、あの世界観がそのまんまで、私は写真に超接近してマジマジと細かいところまで見て「すげーっ」何がすげーかというと佐藤さんのカメラアングルは、洞窟の上部に隠れて奇祭を見下ろすインディーたちの目線だったから。すげーっ。
つい先日テレビを見ていたらリトアニアの人が「リストニアで私のオススメの場所よ」と言っていた場所の写真もあった。それが十字架の丘。10万本を超える十字架が地面に突き立てられている、ちょっとゾワッとする奇景。


佐藤さんの奇界遺産、まだまだこんなもんじゃないぞっ、と。


この記事が参加している募集

#週末プロジェクト

4,748件

#一度は行きたいあの場所

52,269件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?