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人生初が『トッツィー』で良かった


3月は忙しかった。
やたらと出かける用事が多くて家族が予定を書き込むカレンダーには私の予定ばかりが追加された。土日のほとんどが埋まっていた。平日の夕方にも予定が入る。土日が埋まっているから仕方ない。そしてそういう日の夕食はたいてい出来合いのお惣菜やお弁当になってしまう。これがキツい。別に毎日手の込んだ料理を作っているわけではないし、栄養のバランスを考えてとか、野菜を沢山食べなきゃとか、多少は考えるけどそこまで意識が高いわけでもない。それでも出来合いのものが続くと飽きるし胃が疲れる。どんなに簡単な献立でも家で作った夕食を食べると美味しいって思うし、ホッとする。

それはさておき、このひと月はカレンダーに書かれた予定を、まさに“こなす”日々だった。忙しい、忙しいと言いながら一つ一つ終えていく達成感があった。自分で入れた予定もあるが、入ってしまったという感覚の予定もある。町内会の行事とか会合とか。毎月あるものではないのが何故か3月にかたまってしまった。そこに同窓会やらランチやら。ランチは、もうすぐ出産を控えた同僚と、そのお母様と。出産というタイムリミットがあるため3月に入れるしかなかった予定だ。


それもさておき。

私が住む県に新しい劇場が出来た。魅せる・集う・つくるをコンセプトにした大中小の3つの劇場を備えている施設だ。この施設が出来てからは今までなかなか観られなかった本格的な演劇やミュージカルがくるようになった。つまり、テレビで見る俳優さんやミュージカルスターを生で見られる機会が増えた。これまでは興味はあるけど交通費を使ってまで観に行かなかった。それが県内で観られるなら話は別だ。


昨年末に、あるミュージカルの興行が発表された。「ちょっと観たい」と思った。でもチケットが高い。県内で観られるなら観たいと言っていたくせに、チケット代を知って尻込みした。しばらく経ってママ友との忘年会でその話をした。するとママ友が興味を示した。
「一緒に行く?」
「え、でもチケット高いよ」
「安い席なら良いんじゃない?」
「安いといっても高いよ」
「うん、でもなかなか観られるもんじゃないよね」
「うん、東京とか大阪とかでしかやらないやつ」
「行こうよ、行きたい」
「そう?じゃ、チケット取ろう」

次の日チケットを取ろうとサイトにアクセスした。
発売されて既に数日が経っていたので休日のチケットは売り切れ、平日の昼の部も売り切れ、平日の夕方も安い席は売り切れ、1階席は売り切れ、2階席がやっと少し空いていた。


「金曜日の2階しか空いてない。しかも高い席なんだけど‥どうする?やめる?」私は、ママ友はやめるって言うんじゃないかと思っていた。ところが「もう行く気持ちになってるから。高い席でも2階でも良いよ」



そんなわけで、行ってきました。ミュージカル『トッツィー


主演は山崎育三郎さん。いつもテレビで拝見してます。顔も歌声も好きです。女性の下着姿のシーンがあるんですが、とてもキレイでした。今回のミュージカルでは“カッコよさ”より“可愛さ”を感じました。周囲の人がドロシー(山崎さんが女装した時の名前)を好きになっちゃうの、すごくわかります。普段のマイケル(山崎さん)は才能はあるのに頑固で誰にでも上から目線の嫌われ者。ドロシーは可愛いくて優しくて意志が強くて、自分のことを理解してくれて自分では気づけなかった良いところを引き出してくれ、おまけに頼りになる。こんな素敵な女性に私もなりたいって思いました。

マイケルの相棒役は金井勇太さん。金井さんてよくドラマでお見かけしますが犯人役とかめちゃくちゃ気弱な青年とかのイメージしかなかったのが、生で見るとすごくカッコ良い。歌もお上手です。ちょっとファンになっちゃいました。山崎さんとの掛け合い(多分アドリブ)が楽しすぎました。山崎さんのドロシー姿を“(ミュージカルの)アニーがおばさんになってPTA会長になったみたいだ”と言いそれを受けた山崎さんが『アニー』の歌(トゥモロー)を歌ってそれを金井さんが「それ歌っちゃダメだって。いろいろダメだから、いろいろ難しいんだから。歌うのやめろ、やめろ」ってそれでもやめない山崎さん、ご本人たちも最後には笑っちゃってました。

マイケルの元カノ、昆夏美さん。山崎さんとはよくテレビの歌番組でデュエットされてるミュージカル界のスター女優さん。小柄で可愛くて、歌がビックリするくらい上手い。いや、皆さん歌がお上手なんですが、昆さんは抜きん出てました。早口言葉みたいな歌を、クリアーな歌詞でしかも激しく動きながらも全くブレない。三浦大知か!と思っちゃいました。

ドロシーの舞台の相手役、愛希れいかさん。元宝塚の娘役トップの方、私はNHKの『大奥』で知ってましたが、着物姿の『大奥』と違ってスタイルの良さが際立つ衣装の数々。ドレスもスリムな革ジャンも似合います。顔が小ちゃくて手足が長い、“ザ・女優”って感じ。歌が上手いのはいうまでもない。

キムラ緑子さん、エハラマサヒロさん、羽場裕一さん。テレビで見ていた人たちがすぐそこにいる楽しさ。
緑子さんなんてすごく華奢で、「私ボトックス注射打ってるから表情が乏しくてわかりにくいと思うけど」なんて自虐的なセリフがあったり、歌もお上手です。

エハラさんの歌の上手さは知っての通り。それに加えてよく動く。カーテンコールで出演者全員で踊るダンスがあるんですが、それを劇中で踊っていたのがエハラさん。ちょっとコミカルでハードな、簡単そうに見えて実は複雑で難しいダンスでちゃんと笑いをとってました。
ドラマではクールな役が多い羽場さん。今回は声を荒げるシーンや、コミカルなセリフや演技、テレビでは見られない一面を見ることが出来ました。

生のオーケストラ演奏は迫力がありました。マエストロがノリノリでお客さんを煽ったり、演奏の始まるタイミングと俳優さんの歌い出すタイミングがピッタリで、そんなの当たり前だろうけどそれを当たり前にやれるようになるのにどれだけ沢山稽古を重ねてきたのかと思うと、感動しかない。

ミュージカルって“チーム”だなって思いました。
私たちに見せるまでの努力と、経験を重ねていく中での遊び心と、演じている人たちの余裕と楽しさが観客に直に伝わってくる。


多幸感。
ほはぁーっ。ため息って嬉しい時や楽しい時にも出ちゃうんだよね。
高いチケット代を払ってでも行って良かった、観られて良かった。チケット代の価値がありました。心からそう思いました。はるばる地方まで来てくださってありがとう。そんな気持ちになりました。終演後の拍手はなかなか鳴り止まず、会場のライトが点いてからも再度幕が上がるほどのスタンディングオベーション。その中に自分もいられたことが嬉しくて楽しくて。


あぁ、こりゃハマったわ。
ママ友も楽しかったって喜んでて、またこういうのに行きたいねって。
今よりもっとおばさんになって日帰り銭湯に行ったり演歌歌手の追っかけするのも楽しそうだけど、私はこっちの方が性に合ってるってわかって、それを一緒に楽しめる仲間も同時に見つけて、行った甲斐ってやつです。初めて自分でチケットを買ったミュージカルが『トッツィー』で良かったぁー。
そして忙しい3月を乗り切った自分の健康と体力にも感謝です。

では最後に、カーテンコールの動画を。
これ見るだけでも楽しさは十分伝わると思います。


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