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オリジナルボードゲームをノベルティに①企画・設計編(参考書籍あり)

2021年年明けから今までコツコツとボードゲームを制作してきました。
そこで、デザインやボードゲーム制作に興味ある方に向けて背景から制作過程の詳細を共有します。

長くなるので、①企画・設計編、②制作編、③作品紹介編に分けて記載します。

この企画・設計編では、制作の背景、コンセプト設計、テーマと体験決め、ゲームメカニズムの考案などを説明しています。

少しでも面白いと思っていただければ嬉しいです。

(背景)なぜボードゲームをノベルティにしたのか

一番の理由は、「ポートフォリオに掲載できるデザイン制作物」を求めていたためです。毎年自分の制作物をまとめたポートフォリオを作成していますが、当然ながら案件によっては公開できないもの、公開しない方がいいものなどが多く、作った物すべてを掲載できるわけではありません。

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そこで事業の販売促進物として、何らかのデザイン制作を行うことを決めました。自分の事業のために作ったものであれば掲載も共有も可能です。デザインスキルを証明するのにも都合がよいと判断しました。

ボードゲームを選んだ理由は、ポートフォリオに載せるうえでデザイン性の高いものを実現できるためです。また特別な製造方法を踏まなくても実現できる、制作スキルを発揮できる「印刷物の延長」にあるものとして理想でした。

元々ボードゲームをアートワークの集合体として捉えていて、見るのも遊ぶのも好きです。特に海外版を収集するのが趣味で、デザインが一つの世界観を作るという点に非常に面白みを感じていました。これも補助的な理由です。
普段からこのサイトで、購入したボードゲームのレビューや海外版の翻訳など自発的に残しています。

(コンセプト)誰の何のためにどのような物を届けるか

制作の発端は上記の通りですが、ものとして生み出す以上コンセプトが必要です。そこで、これまでボードゲームを遊んできた中で思ったことから広げていきました。

(誰に)ボードゲームに興味の無い成人
ボードゲームを日常的に遊ぶ人の大半は、ボードゲームを趣味とするボードゲーマーです。誰かに誘われない限り接点が少ないジャンルの遊びなので、そういった方でも楽しめるを目指しました。年齢も性別も問わないことも見据えています。

(どこで)国内外問わず英語圏を含む
大きな会社やメジャーな作品でない限り、他言語版が作られることは稀です。海外版で面白くても日本語版が出てないから周囲の人にお勧めしにくい、その逆もしかりという課題を感じることがありました。

(何のために)アートワークを訴求し、ボードゲームへの興味を生む
アートワークをきっかけにボードゲームそのものに興味を持ってもらうことを目的にしました。こうすることで、ポートフォリオ掲載という制作目的にも合致します。

以上の検討から、必ず守るべきコンセプトを設定。

- 大人も所有欲を満たす
- 没入感のある絵作り
- 言語依存、色覚依存しない
- 外国人含めて興味を持てる内容

(テーマと体験)どんな題材で何を体験させるか

コンセプトをもとに、以下のように考えました。

テーマ:日本の戦国時代のいわゆる侍モノ
このテーマであれば非日常体験の提供が可能です。また外国人が興味を持ちやすい内容であり、魅力的なビジュアルも作り上げやすいメリットがあります。

後に素材として扱うことになる、パブリックドメイン(著作権切れ)の古書

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非常に抽象的ですが、どのような体験を提供したいかを考えた時にこれら3つは必ず満たしたいと感じました。

体験①:机上で少しずつ絵が広がり、世界が作られていく
体験②:頭の中の計画が、見える形で実現していく
体験③:過去の行動による結果が、わかりやすく継承されていく

①については、少しずつ全体の絵(ビジュアル)が広がって、ゲームの世界が拡張されていくことで、コンセプトにある没入感を実現できます。

このことは、「カルカソンヌ」というピースをつなぎ合わせて一つの地方を作り上げていくゲームが参考になりました。

②については、簡単なすごろくのようなものではなく、大人も楽しめるチェスやパズルのような思考活動であれば頭を使った娯楽になるためです。考えていたことが少しずつ実現することで、クリエイティブ活動にも似た進捗を楽しむ体験も生み出せます。

手札を整えるハンドマネジメントと呼ばれるジャンルや、場のカード種類を揃えていくセットコレクションというゲーム性との相性がよい体験です。

このことは、複数の場所でポーカーのような役作りを行う「バトルライン」というゲームも参考になりました。

③については、コンセプトゆえに小難しい文章を読解しなくても直感的に理解できる必要がありつつ、短絡的な内容にしないためです。

これを実現するためによく使われる手法は、色や形、数字といった万人が理解できる要素を使った管理です。それらの組み合わせによって理解しやすくも発展的な展開を生み出すことができます。

このことは、異なる色の宝石をあつめてより効率的な獲得を目指す「宝石の煌めき」から特にヒントを得ています。

また、色彩検定ユニバーサル級を取得した際、世の男性の5~10%は何らかの色覚特性を持ち、色の区別が行いにくい場合があることを学んでいます。
色だけに依存したゲーム設計はこのような方が楽しめる可能性を排除することになるため、模様や図形と併用するといったルールも徹底しました。

(メカニズム)どんなゲーム設計やルールにするのか

具体的な「遊び方」の部分です。上記の体験をどのような遊びに落とし込むか検討し、おおまかな設計として以下の遊びを実現することに決めました。

(概要)
カードを特定の並び方になるように配置する。
特定の並び方には、カードの配置の他、色や数字の一致を求める。

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一番の鍵である「どう机上で絵を広げていくか」というコンセプトを、物理的にカードが配置される面積が広がっていくことで実現するためです。

この基盤部分に肉付けしていく形で、ゲームに必要なコストと得点の関係、勝利条件を固めていきます。

(コストと勝利点)
カードの取得にはコストを必要とする。
特定の並び方でコストの回復と勝利点を付与する。
一定の勝利点の達成で勝利する。

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これを基本にしながら、得点の獲得方法を複数用意することで戦略性に深みが出ます。それらの得点源もアプローチに差をつけることで単調さを回避することを目指しました。

(勝利点を得る方法)
短期:特定の並び方を実現して規定の勝利点を得る
長期:特定の領域に置かれたカード枚数に応じた勝利点を得る

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これらを実現するルールとして、基礎的な設計を定めます。カードを5×5の格子内に配置させることで広がる絵作りを実現させます。カードが整列した状態で配置されるため、この特定の領域を行もしくは列にしました。

(基本的な流れ)
- 各カードには、特定の並び方、色、数字が記載されている
- それらカードをコストを使って手札に加える
- 手札から場にカードを配置し、同じ色か数字で目的の配置を実現する
- ゲーム終了時に得られる勝利点を増やすよう、事前にカードが多く置かれる箇所を予想し、領域の獲得も行う

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この状態でテストプレイを行ったところ、必要ないカードが獲得されず、他のプレーヤ―の動きを見るため場が膠着する課題が浮かび上がりました。そこで、カードの配置だけでもコストの回復を許し、流れを変化させる特殊効果を持つカードを実装しました。

(ゲームを促進させる流れ)
- カードを配置させることでコストは回復する
- 通常ではできない行動を可能にする、特殊効果が発生する

こうして草案となるルールを固めて行きました。これが詳細なルールを構築していく上での基礎となりました。

参考書籍

何よりも実際に多くのゲームをプレイすることが、ゲーム制作のヒントになります。その他にも、こうしたアナログゲーム制作のノウハウが体系的にまとまった書籍もとても参考になりました。

特にこの書籍は、世の中のボードゲームの仕組みをジャンル分けに掲載し、特徴などが具体的に明記されているので、求めている物をどう実現したらいいかという課題に非常に有効な情報元となりました。

次の制作編では内容物の仕様や数量の決定からデザイン作業を、作品紹介ではこだわったビジュアルや設計を紹介する予定です。

少しでも面白いと思っていただければ嬉しいです。


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