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Reading・Paranoia

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読んだ本の簡単な感想と紹介。一記事あたり約2,000字程度を目標に。小説よりも学術書が多めになるだろう。人文科学系を中心に書いていくつもり。一番好きな出版社は、ちくま学芸文庫。
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記事一覧

「ケア」の持つ言語不明瞭さ、曖昧さ

「群像 8月号」より、「ケアの語られる土壌を耕す 編集者・白石正明に聞く」をhttps://gendai

三津凛
1年前
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芥川賞雑感「ブラックボックス」を読んで

現代人とは一体どんな人物を指すのだろうか?一歩踏み込んで、現代的若者とは一方どんな人物像…

三津凛
2年前
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木村敏、「あいだ」の概念

木村敏の著作をいくつか読んでいる。彼は精神科医でもあるが、思想家でもある。特に分裂病(統…

三津凛
2年前
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「労働と生の固有性」

「労働の中にある徹底した非人間性」。 シモーヌ・ヴェーユは女工として働く傍らに記した「工…

三津凛
2年前
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「近代/現代における宗教の私的領域について」

人間にとって、極めてプライベートな領域はいくつかある。性に関すること、信仰に関することは…

三津凛
2年前
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新・フェミニズム

柚木麻子の小説が結構好きで、最近新刊が出たそうで早速注文をして手元にあるわけだが、既刊も…

三津凛
2年前
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「美術」への眼差し

佐藤道宣「<日本美術>誕生」を読む。 美術という言葉は、日本において特に明治近代期に造られた「官制用語」であった。工芸と美術の境目というものは当初曖昧であり、無論今日的な意味で芸術家を指す、アーティストと職人の境界も曖昧であった。佐藤は日本美術史そのものが近代の所産であり、それは美術の言説であるともいう。 美術という言葉と概念は日本の近代化と歩みを同じくして生まれたものである。そして、そこには日本という国へのナショナリスティックな眼差しも多分に含む。美術というものは、国威発揚

meritocracyと個人、その評価〜教育を軸に

岩波新書の本田由紀著「教育は何を評価してきたのか」を読む。著者の本田は冒頭様々な統計から…

三津凛
2年前
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チャイルディッシュ、幼稚性について

チャイルディッシュとは、幼稚と訳される。チャイルディッシュという言葉を見たときに、幼稚性…

三津凛
2年前

「時代区分の単位と文学」

先日、芥川賞受賞の2作を読んだ。「貝に続く場所にて」と「彼岸花の咲く島」である。 「貝に……

三津凛
2年前
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「この社会の片隅に」

「ILLUMINATIONS」という雑誌を読んだ。その中に階戸瑠李という人の「無題」のエッセイがあっ…

三津凛
2年前
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「文明と人間性」

神谷美恵子は、私の尊敬する日本人の1人だ。彼女はハンセン病の患者への治療(特に精神医療)に…

三津凛
2年前
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リカレント

社会人4年目というのは、私からするとまだまだひよっこだろうと思う。けれど意図せずに、「も…

三津凛
2年前
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語るを「語る」

私は学生の頃から、アンダーグラウンドなもの、障害や精神疾患、同性愛といったものに興味があった。そのうちやがて、私の興味とは障害や精神疾患そのものというよりも、そういったものを通して見える社会の実相というものに一番興味を惹かれているということに気がついた。 社会の規定する人間の在り方は、異常である/普通ではない、とされる現象を通して見ると、むしろグロテスクなものに思えてくることが不思議だった。そうした視点で眺めてみると、疾患や障害、特異な性愛というものは人間の抑圧された生身の声