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【詩】カーテンを変えた日

バスで移動していたら少しだけ寝るつもりが
降車予定のバス停を乗り過ごしてしまっていた
 
窓から見える川岸を近所の学校の生徒たちが歩いている
進級して新しい生活を楽しんでいるようだ
男の子も女の子も真新しい制服と白いソックスがまぶしい
 
そうか高校までは土曜日でも学校に行くんだっけ
大学を卒業し新卒で入社して2週間しか経っていないのに
学生生活ははるか昔のことのようだ
 
そうだバスを降りなきゃ、ようやく頭がさえてきた
買ったばかりのカーテンをかかえてバスを降り
横断歩道へ向かう
 
反対方向へ向かうバスに乗り込み空いている席に座ると
また眠くなってきた
重たくなったまぶたを必死に持ち上げると今度は新しいスーツを
着た女性が笑っているのが見えた
私もあんな風に見えているのかな
 
「新しい生活がここから始まる」
女性の横にマンションの写真が並ぶ
 
窓の中央に貼られた不動産会社の広告の内容がまるで自分のことを
言っているようだった
 
バスを降りると少し風が冷たかった
玄関のドアを開けると新しい部屋の匂いがした
 
古いカーテンにお礼を言って
買ったばかりのカーテンをつるす
まだ新しい生活は始まったばかり
窓から見える公園を見ながら少しだけ胸が高鳴るのを感じた

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