山田タヌキ(仮)

さすらいの物書きだよ。大して売れてないけど。 思い入れはあるのにボツった原稿や、未発…

山田タヌキ(仮)

さすらいの物書きだよ。大して売れてないけど。 思い入れはあるのにボツった原稿や、未発表とか未完成の断片をここに残しておこうかと思って。 何ていうか、そう、ちょっとした備忘録みたいな……。 よろしくね。

記事一覧

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #04

肆   嵐の磯塚      今からおよそ千年前――  三浦半島にある小さな漁村は、一人の魔物に悩まされていた。 その魔物の名は濡れ女といった。濡れ女は人魚の系統に属…

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #03

参   最後の夜叉     神山―― 頂上を挟んで鬼太郎と楓とは、ちょうど反対側の山道を下っている者がいた。 さとりである。 髪の毛針の直撃を受けて傷を負った尻が痛む…

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #02

弐   古(いにしえ)の護人囃子      カアカアと賑やかな声で鳴きながら、カラスの群れが空を舞っていた。彼らの足には丈夫そうな紐がくくりつけてあり、その下に木…

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #01

序   墓場の鬼太郎    黒くぶあつい雨雲が、細い弧を描く下弦の月を覆い隠そうとしていた。ゴロゴロゴロ……誰もきく者のない遠雷が、真夜中の墓地に響きわたる。そう…

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #00

無駄に長~いおれの物書き人生の中で最も印象深く、充実感とともに仕事ができたと感じるのが、この『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』なんだよね。 映画の脚本も小説版も、書い…

銭湯映画の検討稿(その2)

主人「ま、いいわ。840億円のお釣りと、はい、鍵」      釣り銭とゴム輪の着いた棒状の金具(サウナの鍵)を、耕平の掌      に置く主人。 耕平「かぎ?」 主…

銭湯映画の検討稿(その1)

「仮題:未来サウナ」   登場人物一覧   ●湯川耕平(ゆかわ・こうへい) 33歳 某衆議院議員の公設第二秘書 仕える議員の不祥事隠匿工作を命じられ、思い悩む青年。 ゲ…

銭湯映画の検討稿(前説)

「未来サウナ(仮題)」について  数年前に、旧知のプロデューサーから「サウナをモチーフに短編のシナリオを一本書いてみて」と頼まれ、大急ぎでまとめた脚本です。 何か…

人造人間の映画脚本(準備稿)その2

※メインタイトル ~ OPロール明けから   ○関東近郊山間部・○○原発・外観(深夜)      F.I.      月明りを浴びてそびえたつ、巨大な原発施設群。    …

人造人間の映画脚本(準備稿)その1

 ○某所地下・ロボット研究開発施設      何か床に落ちれば残響音が永遠に響きわたりそうな、コンクリー       ト造りの、いかにも「地下深くの秘密工場」的な…

人造人間の映画・準備稿(前説)

過去の特撮ヒーローを扱ったリブート企画で、A社とB社の合作としてスタートしたものです。旧知のプロデューサー(A社)のお誘いを受けて、プロジェクト開始当初から脚本…

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #04

肆   嵐の磯塚      今からおよそ千年前――  三浦半島にある小さな漁村は、一人の魔物に悩まされていた。 その魔物の名は濡れ女といった。濡れ女は人魚の系統に属する海の魔物で、透き通るような白い肌と、それを耳にした物なら誰でも必ずきき惚(ほ)れてしまう、美しい歌声をもっていた。 人間を殺したり、傷つけたりといった、ひどい悪さをするわけではないが、漁師の仕掛けた網を破ったり、その妖しい歌声で若者を引き寄せて、そのまま海へ落っことしてやったり……と、他愛のない、それでも、やら

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #03

参   最後の夜叉     神山―― 頂上を挟んで鬼太郎と楓とは、ちょうど反対側の山道を下っている者がいた。 さとりである。 髪の毛針の直撃を受けて傷を負った尻が痛むのか、ひょこひょこと足を引きずるようにしながら、ゆっくりとした歩調でおそるおそる歩いていくその姿は、敏捷性が自慢のさとりとはとても思えない。これではただの〝ノロマな大鹿〟である。 「ああ、ひでえ目に遭った。くそっ、あの偽善妖怪め! 色気を出し過ぎちまったぜ! こんなことになるんだったら、無理して攻撃なんぞ仕掛ける

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #02

弐   古(いにしえ)の護人囃子      カアカアと賑やかな声で鳴きながら、カラスの群れが空を舞っていた。彼らの足には丈夫そうな紐がくくりつけてあり、その下に木製のゴンドラが吊り下げられている。ゴンドラに乗っていたのは、鬼太郎と、そして楓の二人だった。  ここは「天下の嶮(けん)」と謳われた、箱根連山の上空である。 眼下にひろがる景色をこわごわ見下ろしながら、楓は足元がすーすーするような頼りない感覚に襲われていた。  なぜ? なぜたったこれだけのカラスで、私たちを乗せて飛ぶ

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #01

序   墓場の鬼太郎    黒くぶあつい雨雲が、細い弧を描く下弦の月を覆い隠そうとしていた。ゴロゴロゴロ……誰もきく者のない遠雷が、真夜中の墓地に響きわたる。そう、墓地……なのだろう、ここは。  立ち並ぶ墓石や卒塔婆(そとば)はどれもみな摩耗し、苔むし、ひび割れ、欠けており……長い年月にわたって人の手が入っていないことは歴然だ。菩提(ぼだい)を弔うべき寺も、もうとっくの昔に打ち捨てられ、もはや一人の僧もいないのだろう、無縁仏(むえんぼとけ)の群れを見守っているのは、墓標と同じ

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #00

無駄に長~いおれの物書き人生の中で最も印象深く、充実感とともに仕事ができたと感じるのが、この『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』なんだよね。 映画の脚本も小説版も、書いていて本当に楽しかった。……いや、もちろん書いてる最中はいっぱい苦しんだり悩んだりしたのよw クランクアップのとき、ぬら様を演じられた故・緒形拳さんにかけていただいた言葉は、今でもおれにとって最大の誇り。 「キレのある良い科白を有難う。また一緒に仕事しようや」 本当にこう言われたんだぜ? けっこう凄いだろ? その場

銭湯映画の検討稿(その2)

主人「ま、いいわ。840億円のお釣りと、はい、鍵」      釣り銭とゴム輪の着いた棒状の金具(サウナの鍵)を、耕平の掌      に置く主人。 耕平「かぎ?」 主人「どうぞごゆっくり~」 耕平「……」      主人の言葉に背中を押され、腑に落ちないままカウンターをあと      にする耕平。 ※「その1」はココ⤴まで!   ○同・浴場内      明るい照明に照らされた真っ白な空間。      磨きあげられた広い床。      きらきら輝くタイルに覆われた四方の壁。   

銭湯映画の検討稿(その1)

「仮題:未来サウナ」   登場人物一覧   ●湯川耕平(ゆかわ・こうへい) 33歳 某衆議院議員の公設第二秘書 仕える議員の不祥事隠匿工作を命じられ、思い悩む青年。 ゲリラ豪雨に遭い、たまたま入った銭湯「時ノ輪浴泉」で不可思議な体験  をする。   ●主人(しゅじん) 48歳 銭湯「時ノ輪浴泉」店主 極端になよなよとしたオネエっぽい中年男性。 入店してきた耕平を温かく、そして、妖しく迎え入れる。 自慢のサウナの中で、耕平にある体験をさせる。   ●湯川耕太郎(ゆかわ・こうたろ

銭湯映画の検討稿(前説)

「未来サウナ(仮題)」について  数年前に、旧知のプロデューサーから「サウナをモチーフに短編のシナリオを一本書いてみて」と頼まれ、大急ぎでまとめた脚本です。 何かの形になって世に出ることは、残念ながらありませんでした。   内容は「政治家の汚職のもみ消し工作を命じられた若手秘書が、たまたま立ち寄った銭湯のサウナで体験する不思議な出来事」――というもの。 登場人物も少なく、限られた舞台で物語が展開する、一種のシチュエーションコメディになるかと思います。江戸川乱歩の名付けた『奇妙

人造人間の映画脚本(準備稿)その2

※メインタイトル ~ OPロール明けから   ○関東近郊山間部・○○原発・外観(深夜)      F.I.      月明りを浴びてそびえたつ、巨大な原発施設群。      入口の頑丈な門に『○○原子力発電所』のプレートが見える。      夜の闇の中にテロップがイン。 テロップ「――2年後――」   ○同・敷地内(深夜)      暗い敷地内を、制服姿の警備員がライトを照らしながら巡回中。      と、そのとき―― 謎の羽音「バタバタ……」      頭上から微かに羽音が

人造人間の映画脚本(準備稿)その1

 ○某所地下・ロボット研究開発施設      何か床に落ちれば残響音が永遠に響きわたりそうな、コンクリー       ト造りの、いかにも「地下深くの秘密工場」的な広いフロア。      薄暗い空間の中にところどころ設置された照明が、夥しい数の計       器類や工作機械を浮かびあがらせている。      フロア中央の台の上に鎮座するのは、数メートルほどある巨大       な“ロボット”。      その外観は巨大なサイの骨格標本のよう。※玩具の『ゾイド』の      よう

人造人間の映画・準備稿(前説)

過去の特撮ヒーローを扱ったリブート企画で、A社とB社の合作としてスタートしたものです。旧知のプロデューサー(A社)のお誘いを受けて、プロジェクト開始当初から脚本家として参加しました。 その主人公は子ども時代に観ていた大好きなヒーローだったので、参加できたことがとても嬉しく、やりがいを感じながら仕事に励んでいたものです。 B社とA社双方のプロデューサーと話し合いを続けながら、(紆余曲折はありつつ)脚本は順調に稿を重ねていきました。 やがて準備稿がほぼ固まり、テレビ局や代理店の座