山田タヌキ(仮)

さすらいの物書きだよ。大して売れてないけど。 思い入れはあるのにボツった原稿や、未発…

山田タヌキ(仮)

さすらいの物書きだよ。大して売れてないけど。 思い入れはあるのにボツった原稿や、未発表とか未完成の断片をここに残しておこうかと思って。 何ていうか、そう、ちょっとした備忘録みたいな……。 よろしくね。

最近の記事

ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #02

弐   古(いにしえ)の護人囃子  カアカアと賑やかな声で鳴きながら、カラスの群れが空を舞っていた。彼らの足には丈夫そうな紐がくくりつけてあり、その下に木製のゴンドラが吊り下げられている。ゴンドラに乗っていたのは、鬼太郎と、そして楓の二人だった。  ここは「天下の嶮(けん)」と謳われた、箱根連山の上空である。 眼下にひろがる景色をこわごわ見下ろしながら、楓は足元がすーすーするような頼りない感覚に襲われていた。  なぜ? なぜたったこれだけのカラスで、私たちを乗せて飛ぶ

    • ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #01

      序   墓場の鬼太郎  黒くぶあつい雨雲が、細い弧を描く下弦の月を覆い隠そうとしていた。ゴロゴロゴロ……誰もきく者のない遠雷が、真夜中の墓地に響きわたる。そう、墓地……なのだろう、ここは。  立ち並ぶ墓石や卒塔婆(そとば)はどれもみな摩耗し、苔むし、ひび割れ、欠けており……長い年月にわたって人の手が入っていないことは歴然だ。菩提(ぼだい)を弔うべき寺も、もうとっくの昔に打ち捨てられ、もはや一人の僧もいないのだろう、無縁仏(むえんぼとけ)の群れを見守っているのは、墓標と同じ

      • 銭湯映画の検討稿(その2)

        主人「ま、いいわ。840億円のお釣りと、はい、鍵」      釣り銭とゴム輪の着いた棒状の金具(サウナの鍵)を、耕平の掌      に置く主人。 耕平「かぎ?」 主人「どうぞごゆっくり~」 耕平「……」      主人の言葉に背中を押され、腑に落ちないままカウンターをあと      にする耕平。 ※「その1」はココ⤴まで! ○同・浴場内      明るい照明に照らされた真っ白な空間。      磨きあげられた広い床。      きらきら輝くタイルに覆われた四方の壁。   

        • 銭湯映画の検討稿(その1)

          「仮題:未来サウナ」 登場人物一覧 ●湯川耕平(ゆかわ・こうへい) 33歳 某衆議院議員の公設第二秘書 仕える議員の不祥事隠匿工作を命じられ、思い悩む青年。 ゲリラ豪雨に遭い、たまたま入った銭湯「時ノ輪浴泉」で不可思議な体験  をする。 ●主人(しゅじん) 48歳 銭湯「時ノ輪浴泉」店主 極端になよなよとしたオネエっぽい中年男性。 入店してきた耕平を温かく、そして、妖しく迎え入れる。 自慢のサウナの中で、耕平にある体験をさせる。 ●湯川耕太郎(ゆかわ・こうたろ

        ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 #02

          銭湯映画の検討稿(前説)

          「未来サウナ(仮題)」について 数年前に、旧知のプロデューサーから「サウナをモチーフに短編のシナリオを一本書いてみて」と頼まれ、大急ぎでまとめた脚本です。 何かの形になって世に出ることは、残念ながらありませんでした。 内容は「政治家の汚職のもみ消し工作を命じられた若手秘書が、たまたま立ち寄った銭湯のサウナで体験する不思議な出来事」――というもの。 登場人物も少なく、限られた舞台で物語が展開する、一種のシチュエーションコメディになるかと思います。江戸川乱歩の名付けた『奇妙

          銭湯映画の検討稿(前説)