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夫に自分の気持ちを伝えられず危うく家を購入しそうだったが寸止めで終わった話

私たちは今まさにオランダで家を買おうとしているところだ。

私たちはオランダ人の夫と日本人の私のカップルで、かれこれ四年くらい一緒に暮らしている。

三年前にオランダで一軒家を買ったが、事情があり家を売った。

その後、海外に住み、去年の9月オランダにまた戻ってきた。

そして現在家探し中という流れになっている。


私たちの生活は本当に忙しなく、あちこち拠点を変えているので、同じ家に二年と住んだことがない。

今現在は賃貸のアパートに住んでいるのだが、やはり色々考えて家を購入するほうがメリットがあるということでそういうことになったのだが。


私は実は思うところがあり、でもそれをうまく夫に伝えられずにいた。

それが今回の(自分の中での)大騒動に繋がった。


なぜ家を購入したいのか?夫編

夫は家を購入したくてたまらない人間だ。

そして何に対しても、欲しいと思ったものは必ず手にいれる性格でもある。

気長にはいられず、思い立ったらすぐ行動しすぐに手に入れたい性格でもある。


4月に転職し、フリーから雇用される立場になったので金銭的に安定したこともあり、早速家探しを開始。

1ヶ月後には永年雇用になるので、ローンも組めるということでいち早くいい家を見つけ、永年雇用になったら即ローンの契約をする、という目論見であった。

とにかく家を探しまくり、内見に数軒行き、つい先日とてもいい値段かついい立地の家を見つけたので見に行き、気に入り、購入する気になった。

古い家なのでリノベーションが必要だが、なんとかなるだろうと思っていた。

銀行にはすでにローンの計算をしてもらい、この家のローンなら、今の家賃よりもだいぶ安くなるということで、早く家を購入したいと思っていた。

浮いたお金でローンの繰上げ返済をしたり、リノベーション代に当てようとしていた。

とにかく思い立ったが吉日。担当の不動産会社の人にも買いたい旨を伝えて手続きを進めてもらい、さらに銀行のローン担当者にもリノベ代をどのくらいローンに組み入れられるかなどを問い合わせした。

この家をリノベーションすれば、ものすごく価値が上がるので、将来的にたくさんの儲けとなる見込み。

だからものすごく古い家だし、リノベーションが大変だけど、とにかくこの家を買おうと決めた。


なぜ家を購入したくないのか?私編


単純にキャッシュがないから。

私たちは今年の秋に日本に帰国し、結婚式をする。

結婚式の費用も、日本での滞在費にもたくさんのお金がかかるというのに、家を買う余裕がない。

家はローンで買えるが、色々と手続きにキャッシュがかかるし、例えば家の価値よりも高い値段で家を購入した場合は、その差額をキャッシュで払う必要がある。

私たちにはキャッシュがある程度あるものの、それを全部かき集めてやっとその家の費用と結婚式と日本の滞在費がまかなえるくらいだ。

そんなギリギリのところで生活していていいのか疑問だった。


また、夫は転職後すぐに家を探してすぐに家を購入しようとしているが、時期尚早だと思う。

なぜそんなに急ぐのか。大きい買い物なのに。

結婚式が終わってから家を探せばいいじゃないか。まずは結婚式が先なのに、なぜ家購入が先に来てしまうのか。

物事には順序があって、一つのプロジェクトが終わったら次のプロジェクトに移る。

なのになぜ私たちはいつもたくさんのプロジェクトを同じに行うのか。

そのせいでいつも疲れていて、たくさんのお金を一気に失ってきた。

いつもこんなふうでいいのか。ダメな気がする。


だがこの前見に行った家は気に入った。立地もいいし、リノベをすれば素敵な家になりそうだった。

夫が買いたいというのなら買わせてあげたい。というか私が言っても聞かないだろうからこのまま夫が突っ走るのについていこう。

でもきっとすごく疲れるんだろうな。いや、もう、すでに疲れている。

リノベのお金はいくらかかるんだろう。リノベの業者はどのくらい待てばいいんだろう。リノベの間は家賃との二重払いになるけどそんなに払えるのか。2ヶ月くらいならいいけど一年とかになったら破産しそうだ。

そもそも私が専業主婦をしているからお金がないんだろうか。私が働くべきだろう。ちょうどよく応募した会社から返答が来たけど、フルタイムの仕事。子育てしながらフルタイムは消耗するので、避けたいけど、この会社なら安定しているし給料もまあまあいい、家を購入したらお金が必要だから、このフルタイムの仕事をするしかないのかな。

結婚式のお金はどうしよう。とりあえず日本の銀行口座を見てみたら思ってた以上にお金があった。これだけお金があれば結婚式代を払えるので、癪だけど全部自分で払って、夫の稼ぎは家に充てるしかない。夫が結婚式をしたいというからすることになったのに、結局私の貯金を使うのかぁ。夫は後々お金を返してくれると思うけど、一体いつになるのやら。日本の貯金がすっからかんになるのも何だかな。


などなど、私は複雑な思いであった。


家を購入しないと決めた話し合いの内容

話し合いは突然始まった。

夫:「リノベはぜんぶ一気にやる必要はない。キッチンとバスルームは古いままにしていつかリノベする。俺は25年古いキッチンとバスルームでも構わないし。」

(は?25年って長すぎだろ)

私「え、やだやだやだ、それはやだ。私は綺麗なキッチンとバスルームじゃ無いと嫌だ。」

夫:「あのさ、子供みたいにやだやだ言わないで。だってお金ないんだから仕方ないでしょ?バスルームもキッチンもリノベしたいなら、日本旅行はしばらく無理ね。1年とかじゃなくて五年くらい無理だよ。近辺の旅行も無理。ぜんぶ我慢したらリノベできるかもね。」

(子供みたいって何!?むかむか!日本に一年に1回旅行しようって言ったのは自分だし全部私のわがままみたいに言いやがって!)

私「じゃあ私は家なんて買いたくない。この賃貸だっていい物件だよ。立地がいいし、新築だからぜんぶ綺麗じゃん。そこからわざわざ古い家に引っ越して、古いキッチンとバスルームでずーっっと過ごすなんて私には考えられない。じゃあここにずっと住んでいたい。わざわざ苦労しなくてもいいし。」

夫:「あっそ。じゃあもうやめよ。全部キャンセルする。(怒)」



この後沈黙を経て、また話し合いを始めたのだが、ここで私が勘違いしていたことが発覚。

夫は「25年」といったわけではなく「2から5年古いキッチンとバスルームでいい」と言ったのだった。

2から5年なら私も我慢できるかもしれない。

そして25年は長すぎない?と私がツッコミを入れなかったせいで喧嘩になったので、思ったことは口に出すべきであった。

私は夫がリノベを将来家を売るためにしたいような気がしてならなくて、私はキッチンもバスルームも自分が快適に過ごすためにリノベしたくて、そこが合っていないと思った。

夫はそんな気はなく、私と同じ思いだと言った。


ここから建設的な話し合いが始まった。

私は自分の気持ちを話すことにした。自分の気持ちを正直に話すとき、私はいつも泣いてしまう。泣きたくないのに、泣いてしまう。

「結婚式と家購入のダブルパンチは正直不安。リノベもあるし不安しかない。結婚式は今更キャンセルできないしまずは結婚式が優先。結婚式が終わってから家探しを始めたい。私たちはまだ家を買う段階にいない。そんなに急いで家を買う必要はない。ダブルパンチにして自分たちを疲弊させる必要もない。私たちはいつもダブルパンチにして自分たちを疲弊させてきたけど、今回はそれを避けるべきだ。」

そして私は続けた。

「本当は、オランダなんて帰ってきたくなかった。ずっとずっと海外に住んでいたかった。だけど、あなたと社長の話を隣で聞いていて、あなたの仕事のためにオランダに帰ったほうがいいんじゃないかと思って、オランダに帰ろうと提案したのは私だった。軽く提案したつもりだったのに、あっというまに話が進んで、その提案からわずか2ヶ月でオランダに帰ることになってしまった。でも本当はオランダなんて帰ってきたくなかった。私はあの国が好きだった。だけどずっとここに住みたいって言えなかった。だってオランダに帰ろうって言い出したのは私なんだから。私が発端だったから、急に引っ越すことになって嫌だと思ってたけど言えなかった。あの時自分の本心を伝えられなかったことをずっと後悔している。」


私はいつもこうだ。夫のためにと夫のやりたいことを先回りして、空気を読んで、夫に合わせてきた。

夫は頑固だからやりたいことを止められない。私は止められる人間だから自分が我慢しようって。

オランダより海外のほうが自分に合っていたのに、わざわざそれを潰すことを自分でしてしまい、取り返しのつかないことになってしまった。


今現在はもう諦めの境地に達しているし、オランダから海外にまた引っ越したいとは思っていないし、オランダ生活を楽しくしようとしているし、友達もできたし、オランダに住んでいること自体には不満はない。

だが、たらればが止まらない。

あの国に住んでいれば、貯金だってたくさんできた。家だって普通に買えた。私だっていい仕事ができていた。デイケアだって安かった。

オランダに引っ越してきて、わざわざ自分たちを苦しめ、金銭的に余裕のない生活にしてしまった。



夫は言った。「一旦家探しプロジェクトは中止しよう。不動産屋にも銀行にも事情を説明する。君のいうとおり、結婚式が終わってからまた考えよう。家を買う前に君が本心を伝えてくれてよかった。」


かくして、私たちは家を購入することを諦めた。

そして私の気持ちは楽になった。ストレスから解放された。



なぜ夫に本心が言えないのか深く掘り下げた

私がなぜ自分の本心を夫に伝えられないのか、深く考えてみたら私は夫が怒るのが嫌だった。

夫は滅多に怒る人ではない。とても優しくて面白い人で大好きなのに、私の一言で不機嫌にさせるのが嫌だった。

不機嫌にさせると彼のやりたいことができなくてがっかりさせてしまうし、何より夫が私から離れてしまうのではないかと怖かった。


夫は私にはもったいないくらいのいい人で、出会ってすぐにこの人と結婚したいと思ったし、生涯共にしたいと思っている。

だけど夫はオランダ人で、愛が冷めれば離婚も簡単にするような人種で、飽き性な性格なので夫が私をすごく愛している、一生一緒にいてくれると信じていながらも、いつかどこかで離れていってしまうのではないかと不安に思っていた。


その話も夫にした。夫は典型的なオランダ人ではないし、子供がいるのに離婚は考えられないし、こんな話し合いくらいで嫌いになったり、離婚したいとはならないと言った。
そして、夫はこういう本音の話し合いができて嬉しいとも言った。

それが聞けて私はほっとした。

夫に遠慮して自分の本当の気持ちを伝えられない、ということはもうやめようと誓った。

いや、まぁ、出会ってからずっと本心を話してほしい、と夫に言われているにも関わらずまだできていないわけだが。



とにかく家を買わずに済んでよかった。

そして夫に本当の気持ちを話せてよかった。

離婚うんぬんの話もできてよかった。


「君はそのままの君でいていい」

夫は出会ったときからずっとそう言っているけれど、私は本心をすぐに夫に伝えられるようにならないといけないと思う。

これがなかなかできないけど、早くできるようにしたい。

話し合い、疲れた。

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