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父と母の心配(51)

 父が帰ってくる前に部屋着に着替えた。血が付いたスカートを洗ってみたら、そんなに時間がたっていないため、水で血は落ちた。コートには幸い血痕はないようだった。しかし、洗っても洗っても、手についた血がとれていない気がした。食卓を囲んでサラダとカレーを食べたが、いつものようにうきうきとした気分にはならなく、気持ちが沈んだ。秀からはまだ連絡がない。母が父にきょうの事件を話したらしく、食事が終わると父から話があった。「マヤ、前のバイト先で知り合った秀くんという青年とお付き合いしているのは本当か?」マヤは「まだ、正式にはお付き合いしてなくて、友達の関係。でも気持ちは伝えてくれてる。前の彼女とはっきり別れられたら、付き合いたいって言われている」とマヤは小さな声で応えた。父は「じゃ、彼女と別れてないんだね。その状態はいつから続いているんだい?」「2カ月ぐらい前から。秀とは2年前にバイト先で知り合って、でも趣味のマウンテンバイクで事故があってずっと記憶がなくて、わたしのことをはっきり思い出してくれたのがことしの秋ぐらいで、佐竹さんのお別れ会の日に連絡があったの」小さな声で急いで早口でしゃべった。「わたしはっきりと彼女とちゃんと別れてからじゃないと付き合えないって言ってる」少し大きな声で言った。父が「でも、2カ月間別れないままマヤを待たせているんだね。父さん、そんないいかげんなやつのことは、男親として、交際は認められないな」お父さんは秀にあまりいいイメージを抱いていないし、きっとお母さんもそうなんだとマヤは思った。お父さんが「刃物まで持ち出してくるような女の子にマヤを狙われたくないし、そこまで追い詰めた秀くんの責任は重いよ」お父さんと、お母さんは同じことを言った。

父と母の心配(51)

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