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シラノ 生涯の恋

心ときめく恋に恋焦がれて、やっと本物の恋に出会えたはずなのに、その相手が本物なのか、偽りの相手なのかの見分けさえつかないなんて、悲しい。

恋をするとチンパンジー並みの知能に低下してしまい、冷静な判断力が鈍ると言う。彼を信じる心と、疑う心。信じたいものしか見えない恋心。

恋は盲目…期待や希望、夢や想像を膨らませ、リアル相手の姿さえ見えなくなる。やっと現実に気付いた時、相手の深い愛の存在に心打たれるだろう。真実に気付かなかった愚かな心に内しがれるだろう。

2週間も前に見た映画の noteが書けなかった。時同じくして私も、恋の病をわずらい始めた時期だから…

『シラノ』2021年公開。イギリス、アメリカ映画。原作はエドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』は1897年初演舞台作品。フランスの剣術家、哲学者、理学者、詩人で作家でもあった、実在の人物、サヴィニアン・ド・シラノ・ド・ベルジュラックをモデルに、醜い容姿で異性に敬遠された男性が、筆不精な友人の代筆者として、一途に愛する人に手紙を送り続けるお話。ジョー・ライト監督。エリカ・シュミット脚本の2018年舞台ミュージカルの映画化。主演ピーター・ディンクレイジ。ヘイリー・ベネット。ケルヴィン・ハリソン。

1897年から、再演を繰り返されている舞台の映画化なので、内容的に一途な愛に心打たれるのは周知。

以前、1991年公開の映画『シラノ・ド・ベルジュラック』を拝見したことがあった。フランス・ハンガリー制作。ジャン=ポール・ラプノー監督、付け鼻で高い鼻を更に大きく肥大させたジェラール・ドバルデュ主演していた。この作品でジェラール・ドバルデュが好きになった。主人公の愛に殉教する姿に心打たれてしまうのだ。

今回はミュージカル仕立てで、しかも主演は小人症のピーター・ディンクレイジ。映画の予告を見た時から、必ず見ようと思っていた作品。

まずは、落ちぶれた家族の為に、愛のない計略結婚を望まれている若く美しいヒロインが、真実の愛を求める歌から始まる。涙脆い私はこの時点で号泣。恋の予感がヒロインと被り切なかった。

主人公が初登場する場面では、小人症の主人公が歌う、醜さをなじられ、胸に突き刺さる痛みを歌う曲にまた泣く。

初めの2曲で涙腺崩壊。

ただ、それいる⁉️とちょっと引く箇所がある。

主人公がヒロインから、好きな人が出来たと告白されるシーンのバックダンスや、ヒロインが好きになった男性の代わりに、主人公がラブレターを代筆すると話すシーンのバックダンスの陳腐さ…

それ以外、ヒロインが次々届くラブレターに心踊らせるシーンは、恋のときめきを感じたし、名シーンであるバルコニーでの友人に代わっての愛の告白の場面はやはり切なくてバカ馬鹿しい。リアルな戦争の風景シーンは意外にも新鮮だった。

白い石膏や石造りの建物が際立つロケーションとオーガンジーのような軽やかな素材を採用する衣装のセンスの良さが純愛の清らかさに重なり高評価。

幼馴染なのだから、才気や声や筆跡などで、もっと早く誰が書いたラブレターなのか分かりそうなものだと、やはりイライラしてしまうんだけど…

それでも見てしまう。そんな魅力がある作品。


恋をすれば、目に見えないことを信じないといけないことが増える気がする。相手の言葉のリズムや文字の行間。相手姿や態度から察したり感じたり。ウソ偽りのない愛だと、自分の心も差し出さなければならない。

自分の柔軟性や寛容性、自己肯定感まで、色々と試されている気になる。

ヒロインのように、時には相手への不信や不安を全て手放して、純真に信じ込むのも恋だ。ただ、見極めを誤ると、真実の愛は側にずっとあったのに、気付けずに消え去って行くものなのかも…

恋がいつか、愛や信頼に育って行くように願わずにはいられない今日この頃。








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みと吉 禮子 (みとよし れいこ) 絵本作家
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