中学受験での「節約」はほぼ「安物買いの銭失い」になるワケ
みなさんは都心部を中心に、中学受験が過熱していることをご存じでしょうか。
以前は一部の成績がいい子だけが行いましたが、今では中位~下位の成績帯の子も、こぞって参加しています。
こうした偏差値30~40台程度の子どもたちは、塾に入っても進学クラスには入れません。確かに勉強して成績が上がれば、上位のクラスに編入することも可能ではあります。
しかし、「入塾時のクラス編成から下剋上が起きることはほぼない」ともいわれます。そのため、一部の保護者は最初から芽が出ない進学塾を嫌って、地域の小さな塾や、個別指導塾に入れて受験に立ち向かおうとします。
こうした戦略のメリットは2つあると考えられます。ひとつは、成績上位層の子どもたちが少ないので、中位~下位の成績の子でもトップ層の体験ができる可能性があること。教室内の上位層の立場を味わえば、勉強のモチベーションに影響します。もうひとつは、往々にして学費が安いことです。一見すると「こんな戦い方もある」と賢く見えるかもしれません。
ですが、それは全くの間違いだと私は考えます。ほとんどの場合、これは「安物買いの銭失い」に終わるでしょう。小さな塾や個人指導塾は、進学塾にある「実績」で劣る場合が多いためです。
・「実績」がない塾が信用できない理由
どうして実績の有無だけでここまで断言できるのか。それは、「実績がない」ことと「学習環境が整備されていない」ことが、ほぼイコールであると考えられるためです。
分かりやすくするために、大学受験の例から考えましょう。
高校選びの際、私たちは通常「いい高校」を選びがちです。選定基準にもよりますが、一流大学への進学を視野に入れるならば、「いい高校」とは偏差値が高くて進学実績がそろっている学校を指します。過去の実績があると、「来年以降も同じような実績が出るだろう」と安心できる。
では、どうして「来年以降も同じような実績が出る」と予測できるのでしょうか。それは、「安定した学力養成環境」が守られていると考えられるためです。
例えば、毎年東大に10人程度を安定して輩出している学校であれば、「東大に合格できる程度の学力」を安定して養成できる環境にあると予想できます。
そうした学校には、「毎年教え子を東大へ行かせる先生(たち)」がいるとも考えられます。彼らのサポートによって、毎年受験生は高いモチベーションを余さず学力に変換することができ、その結果として高い進学実績を生み出せる。
だからこそ、進学を重要視した場合には、「志望大学への進学実績の有無」が大きなファクターになりえます。「実績」とは、「その結果を生み出せる程度の設備環境、人材育成が成功している」ことの証左なのです。
では、志望校への進学実績がない環境に進学してしまった子どもは、もはや志望校合格が不可能なのでしょうか。
この場合、学校以外の環境を頼ることを提案します。「環境」はお金で代替できるのです。
具体的には、志望校のレベルにあったクラスの塾へ入ればよい。進学塾であれば、環境は間違いありません。過去半世紀分にわたって難関大学の傾向を分析し、来年の入試問題すら的中させられる教師陣がいます。毎年生徒の成長を見守ってきたチューターは、「合格する受験生がどのように勉強したか」を詳しく知っています。
この環境は、合格を勝ち取るために十分すぎるほど。毎年進学塾から多数の難関大学合格者が出るのは、そこに理由があります。
ただし、多額の費用が掛かる。そのため私は、低額での大学受験を目指す家庭には、必ず「高校受験の際に、県内トップの公立高校に入れ」と伝えます。それは、県内トップの公立高校であれば、難関大学に合格できるだけの学習設備と人材が存在している可能性が高いからです。
このように、大学受験の場合は「①塾に入って、お金で学習環境を買う」「②公立トップ校に入って塾と同じ効果を期待する」と2つの戦い方があると私は考えています。
それでは、中学受験の場合はどうでしょうか。
・中学受験には選択肢がない
中学受験においても、勝ち方は基本的に同じ。志望校を選定して、その学校に入れる環境を用意することになります。
多くの方はSAPIXや浜学園に殺到しますよね。これは単純に「大手だから」でしょうが、「志望校に受験生を毎年安定供給できる」環境が整っていると考えると合理的な選択です。
塾のネックは「金額」でした。年間あたり100万~150万円程度は出さないと、大手進学塾では満足な指導が受けられません。夏期講習や冬期講習まで含めると、どうしてもそれくらいの金額になってしまう。
大学受験の時には、塾がダメなら学校に頼れました。ですが、小学校については応用できません。多くの方が通っている学区の公立小学校には、「難関中学に受からせる指導法」を会得した教員がいないからです。
例えば、灘や開成、桜蔭などに通わせたいと思っても、担任は受かる学力を養成する技術を伴っていない。当然ながら、受験組をバックアップする体制も学校に組み込まれていない。公立小学校に通っている以上、学校を利用した戦い方は不可能でしょう。
すなわち、中学受験で勝ちたいならば、「遅くとも小学校4年生時点で入塾し、希望する偏差値帯の学校への合格実績があるクラスに編入する」必要が生じる。
小学校4年生から6年生までの総合した塾関連費用は、おおよそ300万~400万円程度ですから、月当たりに換算すると、10万程度を安定して教育投資につぎ込まなければならない。
では、「進学塾では勝てないから」もしくは「節約」の一環として、実績のない地元の小さな塾に入ったらどうでしょうか。
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